【非化石証書とScope2改定(1)】時間性のある非化石証書をどう設計するのか?
【非化石証書とScope2改定(1)】時間性のある非化石証書をどう設計するのか?
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はじめに
経済産業省所管の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(ネットワーク小委)では、25年6月3日の第74回会合から、25年12月26日の第78回会合にかけて、非化石証書の現状・課題と見直しの方向性について闊達な議論がなされました。主要会の分析は以下の通りです。
この小委員会では、「再エネ価値の時間帯や、場所的な価値 の顕在化のあり方については、2030年以降の中長期的な課題として当小委員会で早期に検討」する方向性が示されました。
これは、GHGプロトコルScope2改定やAMIをめぐる議論の方向性とも合致します。当然のことながら、GHGプロトコルの改定と、日本における「環境価値証書」の改定は整合性を確保しなければいけません。
そこで、株式会社電力シェアリング構造研究所(代表:酒井直樹)では、
- 日本で、再エネ価値の時間帯や、場所的な価値 の顕在化をさせるとしたら具体的にどのようになるのか?
- 現行の非化石証書やJクレジット・グリーン電力証書はどのような改定が必要となるのか?
- 今般の「環境価値改革」は、わが国の経済・社会にどのような影響を及ぼすのか?
について、独自の視点から、深堀り分析をしてみたいと思います。

GC-EACの取引フレームワーク
「再エネ価値の時間帯や、場所的な価値を顕在化させる」といった証書は、国際的には、GC-EACと呼びます。今回は、個別事項にはあまり深入りせずに、全体のフレームワークに焦点を当てて考えてみたいと思います。
GC-EACの取引に係わるプレーヤーは以下の通りです。
- 供給者:非化石発電を行う主体
- 需要者:非化石電気を購買する主体
- 発行者:GC-EACの発行主体
- 取引所:GC-EACを取引する場所
- 仲介者:GC-EAC取引の仲介者
- チェック機関:GC-EACの発行・取引・償却が適正に行われることをチェックする主体
ここで、思考実験として以下の論点を考えてみます。
GC-EACと非化石証書の関係は?
以下のケースが考えられます。
- 非化石証書をGC-EACに転換する:非化石証書自体にタイムスタンプと場所(ロケーション)スタンプを押すことを要件とします。
- 非化石証書とは別にGCーEACを発行する:非化石証書はそのままとし、タイムスタンプ・ロケーションスタンプのあるGC-EACは非化石証書とは別に発行されます。
そのメリットとデメリットを簡単に言うと、
非化石証書をGC-EACに転換するのは、もしも、Scope2改定で日本にタイムスタンプ証書での導入が決定した場合、ネットワーク小委の議論にもあったように「シンプル」になるのがメリットです。2つの制度が併存するよりは1つにまとめたほうがシンプルになります。
一方で、GC-EACはエリアごとに、時間ごとに発行・取引・管理されるわけですから、そのデータ量が膨大で、取引は複雑化します。ネットワーク小委でも「複雑化」を避けるべきという意見があります。
すなわち、非化石証書自体がGC-EACに転換されると、「制度としては一本化されシンプルだが、データ・取引量が膨大で、管理が複雑」というジレンマを抱えることになります。
そこで非化石証書とは別にGC-EACを発行する案も検討されると思います。
この場合、次に論点となるのが、「GC-EACと非化石証書はどのように関係するのか?」という問いです。これについては、以下が考えられます。
- 密接に関連付けられる
- ある程度関連付けられる
- 全く関連付けられない
その詳細については次回以降分析します。
GC-EACの発行主体は?
次に考えるべきは、もしも非化石証書とは別にGC-EACを発行するとしたら、誰がGC-EACを発行するのか?という点です。これについては、以下があり得ます。
- 非化石証書発行主体
- 上記以外の政府もしくは公的機関
- 非政府非営利団体
- 民間企業
もし、3または4の場合、さらに以下に細分化されます。
- 日本の企業・組織
- 海外の企業・組織(あるいは日本と海外のJV)
- 多国的機関・国際機関
そのメリットとデメリットについては、例えば、海外の組織や、国際機関が行った場合は、国際標準化がしやすいというメリットがあると思います。また、既にGC-EACは欧米が先行しているので、欧米の組織にはノウハウがあり、その円滑な導入が期待できるということです。
一方で、経済安全保障や、サービス収支赤字問題を考えたときに、海外の組織や日本とのJVではなく、純粋に日本の主体が行うべきという考え方もあると思います。
さらに、もう一つの論点があって、それは
- 日本においてGC-EACを発行する主体は1つのみ
- 複数の主体によるGC-EACの発行が認められる
ということです。ある主体に独占を許してしまうと、ガバナンスとアカウンタビリティの確保が難しくなる一方で、複数の発行主体がいるとダブルカウント問題などの弊害があり得ます。悩ましいところです。
GC-EACの取引方法は?
それでは、GC-EACはどのように取引されるのでしょうか。まず、市場取引と相対取引に類型化されます。そこで以下の論点が出てきます。
- 市場取引所を開設する
- 取引所は開設せずに相対取引のみで行う
ことが考えられます。なお、発行主体と取引所の関係について考えると、発行主体自身が取引所を運営するほうがシンプルですが、分けておいた方がよいという考えも成り立ちます。
では取引所を開設運営するのは誰かと言えば、「発行者」と同様に
- 非化石証書取引を行う主体
- 上記以外の政府もしくは公的機関
- 非政府非営利団体
- 民間企業
があり得て、さらに、3または4の場合、以下に細分化されます。
- 日本の企業・組織
- 海外の企業・組織(あるいは日本と海外のJV
- 多国的機関・国際機関
これも、メリットとデメリットについては、例えば、海外の組織や、国際機関が行った場合は、国際標準化がしやすいというメリットがあると思います。また、既にGC-EACは欧米が先行しているので、欧米の組織にはノウハウがあり、その円滑な導入が期待できるということです。
ここで留意すべき点は、データのクラウド化・オフショア化です。例えば日本全国の30分なり60分の再エネや原子力の発電実績量や予測量、法人・個人・政府機関の電力消費実績量や予測量に関するデータは日本の経済活動やそれ以外の活動量の大宗が垣間見れてしまうことになります。これを海外機関によりクラウド上で管理されるようになれば、経済安全保障上の懸念事項となり得ると思います。
一方で、セーフガード措置を講じて、信頼できる組織に、他の国のビッグデータと統合的に管理されれば、規模の効率性などの各面でのメリットもありえます。
従って、データのオフショア化については多面的な議論が必要になると思われます。
取引所についても、もう一つの論点があって、それは
- 日本においてGC-EACを取引する取引所は1つのみ
- 複数の取引所でGC-EACの取引が認められる
ということです。
発行主体の議論と交差させれば
- 日本唯一の発行主体と唯一の取引所
- 複数の発行主体と唯一の取引所
- 唯一の発行主体と複数の取引所
- 複数の発行主体と唯一の取引所
の4パターンがあり得ます。
費用対効果などの効率性、管理のしやすさ、ユーザーメリットなどからの検討が必要となるでしょう。
次回に続く
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