【分析】経産省ネットワーク小委での非化石証書見直し議論とScope2改定議論の接合性 (最終回)第78回会合 25年12月26日までの議論内容と分析

· 電力脱炭素,非化石証書,GHG Scope2,ネットワーク小委

経済産業省所管の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(ネットワーク小委)では、25年6月3日の第74回会合から、25年12月26日の第78回会合にかけて、非化石証書の現状・課題と見直しの方向性について闊達な議論がなされました。短期での課題解決に向けた手当と、2030年以降の長期に向けた抜本的な改定の可能性についても俎上に上がりました。

一方でGHGプロトコルScope2についても25年11月にパブリックコンサルテーション向けの文書が開示され、2027年の改定に向けた議論が活発化しています。さらに、25年12月3日には、GHGプロトコルの下で設置されている AMI(Actions and Market Instruments)タスクフォースの第11回ミーティング が開催されました。AMIについては2028年に最終化の見通しで、Scope2のいわゆるインベントリー方式の見直しとセットで2030年に施行される見通しです。(解説記事はこちら

国内電力システムの柱の一つである非化石証書制度の抜本的な改革と、GHGプロトコルの改定は相互に密接に関連するため、その整合性確保が極めて重要なテーマとなります。

これまで、当記事では、以下の4回の委員会での非化石証書制度改定に係わる議論を詳細に確認・分析してきました

今回は、これに、第78回会合(25年12月26日)での議論の内容を含めて、非化石証書改定の方向性と、そのScope2改定との整合性確保策について考えてみたいと思います。

1. 上限・下限価格変更の可能性

下限価格

FIT非化石証書の下限価格の引き上げについては、引き上げの方向性が固まったものと考えます。

ただし、高村委員等からの「需要家のアクセス可能性」「FIT非化石証書の約定価格が再エネ価値(環境価値)の価格指標となっている」ことに留意すべきという 点から、段階的に引き上げる可能性が高いとも予測します。

上限価格

FIT非化石証書・非FIT非化石証書とも上限価格について、「撤廃を含めた案」が示される可能性があると予測する。

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「ゼロベース」での制度改革・シンプル化

中長期的には、現在の制度 ありきではなく、あるべき姿をゼロベースで見直すこと、さらにその際、カーボンプライシングを本宗として、できるだけシンプルな制度設計とすること方向性について、2026年にも検討が進められることと予測します。

時間帯・場所価値の顕在化

再エネ価値の「時間帯や、場所的な価値 の顕在化」のあり方については、2030年以降の中長期的な課題として当小委員会で「早期に検討に着手」がなされるものと考えます

その際、複数委員が指摘したように、Scope2ガイダンスの改定や、当該基準を援用するRE100と平仄を合わせることが意識されると思います。

「2030 年度以降の制度の姿を念頭におき ながら、需要家、電源投資者、事業者の予見可能性の確保という点 からも、なるべく早期に検討に着手していく必要があると考えている。」という事務局発言もあります。

当社による分析

こうした検討においてはScope2改定におけるマーケット基準(MBM)でのアワリーマッチングと供給可能性を非化石証書とどう関係づけるかが焦点の一つとなります。

まず第一に、SSSではFITがMBM算定の対象外となる可能性が相当程度ある一方で、FIPの位置づけは未だ不透明である点についてどう整理するかが大きな課題となるでしょう。

むしろこの議論が進むことで、日本サイドとしては、まだ国際社会で確定していない「FIPをSSSの適用」に反対の立場を表明し、事業者のアワリーマッチングの対象となるよう、関係各方面に働きかけるよい機会となるかもしれません。

第二に、AMIにおける追加性や限界排出係数削減効果といった点も重要となります。これを主張するAmazonやmetaなどのプレーヤーの動きを注視する必要があるでしょう。

第三に、非化石証書とは直接は関係ありませんが、ロケーション基準(LBM)の行く末についても思いを致す必要があります。仮に、10エリアに区分されることが決まった場合、例えばエリアを跨いだ非化石証書のマッチングが容易ではなくなるからです。

第四に、調整力の対象となる再エネ電源がMBMのアワリーマッチングの対象となるか?、系統用蓄電池の充放電再エネがアワリーマッチングの対象となるか?も早期に整理すべき課題です。

第五に、オンサイト再エネ発電による自家消費価値はScope1に整理され、また高度化法の対象外ですが、この点については国際社会でも、明文化された公式資料もなく、日本では全く議論されていないといってもよいのです、アワリーマッチング対象電源の掘り起こしという点でも、重要な検討課題となります。

第六に、上記の検討の際、上記の「時間価値、ロケーション価値の顕在化」は24/7Cスキームを、カーボンプライシング(GXETS)や非化石証書を含めた日本の制度に統合することが一つの可能性となるものの、それは「複雑化」の要因となるため、その一見相矛盾する方向性をどう整理していくかが重要となります。

おわりに:今後の連載記事について

そこで、こうした点を含めて、どのような改定の方向性があり得るかについて、「非化石証書改定におけるScope2改定との平仄合わせの在り方」について、次回記事以降、より具体的に現状を分析し、課題を整理し、解決の方向性を分析をしていきたいと思います。