【解説】RE100-2025:再エネ調達ルールと調達方法要件の厳格化とScope2改訂議論の関連性

正解

· 電力速報,電力脱炭素,GHG Scope2,サステナ

技術基準の強化

2025年3月に公表された RE100 の技術基準(Technical Criteria)改定は、「再エネ100%」という目標そのものよりも、再エネをどのような方法で調達しているのかを厳密に問う内容となっています。

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オンサイトPPAとフィジカルPPA

オンサイトPPAやフィジカルPPAについては、需要家の調達行動が新たな再エネ設備の導入に結びついていること、すなわち追加性が重視されています。

その判断材料として、発電設備の新しさが明確に意識されており、運転開始から概ね15年以内の設備であることが一つの目安とされています。既存設備の電力を単に契約で囲い込むだけの形態は、RE100の趣旨に照らして評価が厳しくなっています。

バーチャルPPA

バーチャルPPA(VPPA)については、「発電」と「消費」の関係性が弱い分、特に追加性の説明が重要となっています。

具体的には、VPPAがなければ当該発電所の建設が行われなかった、あるいは大きく遅れていたと合理的に説明できることが求められ、対象は原則として新設案件に限定される傾向が強まっています。

価格差決済という金融的な仕組みであっても、実体経済として再エネ導入を後押ししているかどうかが問われています。

証書:EAC

一方、証書(EAC)単独調達は引き続き認められているものの、PPAに比して一層厳格化されました。

具体的には、証書は確実に無効化されている必要があり、加えて、運転開始から15年以上経過した発電設備由来の証書のみでRE100を達成することは望ましくないと整理されています。

証書はあくまで移行期・補完的な手段であり、主たる調達方法として依存し続けることは難しくななりつつあります。

GHGプロトコルScope2ガイダンス改訂・AMIと、技術基準強化との関連性

この2025年3月に示されたRE100技術基準の改定と、GHGプロトコルが現在行っているScope2マーケット基準厳格化とAMIに関する議論は無関係ではないと言えるでしょう。

CDPは、GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改定議論において、間接的に影響力を持ち、EAC利用の厳格化と追加性の確保について問題意識を示してきました。

まず指摘しているのが、マーケット基準では、多くの証書が「排出削減の実態」を必ずしも反映していない点です。

既存電源由来の証書を後付けで購入するだけでは、発電構成や系統運用に変化をもたらさず、Scope 2排出量が実態以上に低く見えてしまうという懸念を投げかけています。

また、発電と消費の関係をより現実的に捉える必要性が強調されています。どこで、どの電源から発電された電力が、どの需要に結びついているのかという関係性を無視した算定は、電力システムの物理的制約や需給構造を反映していません。

実際、RE100では、調達方法や契約形態の説明を重視する方向へ基準を強化してきています。

また、時間的・地理的な整合性が弱い調達については、情報開示上、区別して扱うべきだという考え方です。

年間平均や広域属性に基づく調達と、特定の地域・時間帯で消費と結びついた調達とを同列に扱うことは、投資家や利害関係者に誤解を与えないからです。アワリーマッチングの導入もその延長線上にあるのだと考えられます。