【解説】2025年を振り返る:世界で進む太陽光・風力発電の主流化:蓄電池と併せて、15円/kWhでアワリーマッチング率90%が可能な地域も

正解

· 蓄電池,電力脱炭素,電力速報,アワリーマッチング

太陽光・風力の主流化

国際エネルギーシンクタンク Ember が 2025 年 12 月に発表したレポート「Highlights of the Global Energy Transition in 2025」では、太陽光と風力を中心とする再生可能エネルギーが世界のエネルギー需給構造に歴史的な転換点をもたらしているとまとめられています。

2025 年の前半において、太陽光発電と風力発電の供給量が世界の電力需要の純増分を完全に上回る供給力を確保しました。

この結果、太陽光・風力による発電は、単に供給を拡大しているだけでなく、化石燃料に依存した電力供給構造を根本から変えつつあることが示されています(renewables met all new electricity demand globally in early 2025)。Ember Energy

レポートはまた、2025 年 6 月に欧州で初めて太陽光発電が原子力発電を上回り、主要電源として最大の供給源となったという歴史的な出来事を強調しています。

これは、欧州電力網における太陽光の導入量と系統への貢献度が一段と高まったことを示すものであり、再生可能エネルギーの主力電源化が既に達成されたことを意味します。

こうした供給構造の変化は、過去のモデルでは想定外の速度で進行しています。Instagram

蓄電値との組み合わせ効果

さらにレポートは、蓄電池コストの低落と太陽光・風力の主流化を指摘し、これがエネルギーシステムの柔軟性や需給調整のあり方を大きく変える可能性に言及しています。

具体的には、太陽光の電力が系統全体に高い割合で寄与するようになったことで、時間帯ごとの供給変動を吸収・最適化するシステムの重要性が増しているという分析です。

これを技術的に支えるのが蓄電技術であり、電力系統全体の安定性を確保するうえで蓄電池のタイムシフト能力が不可欠な要素として位置づけられています。

太陽光や風力の不安定性を補完することで、従来のピーク時供給に依存しない新たな電力システムモデルへの移行が進んでいるとしています。Ember Energy

アワリーマッチング率90%以上の地域も

レポートは、特に日射条件に恵まれた地域やエネルギー転換の進んだ市場での蓄電・タイムシフト技術の適用可能性が高まっている点も強調しています。この傾向は、エネルギー供給の「時間的価値」を最大化する仕組みの実装にとって重要な意味を持ちます。

太陽光のピーク供給を消費需要の高い時間帯へ時間的に移管する「タイムシフト」は、単なる系統調整を超えて、環境価値そのものを高める作用を持ちます。こうした“時間価値の最適化”は、従来の需給バランスモデルでは捉えにくかった新たな市場価値を生む可能性があります。

特に、ヨーロッパ、北アメリカの一部、中東や東南アジア、中国などで、太陽光・蓄電池の供給シェアが高まり、再生可能エネルギーのアワリーマッチングが1kWh10セント(約15円)の価格水準で 90 % 以上達成可能なシナリオが見えているとされています。

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このような地域では、太陽光と蓄電池が主力電源として機能し、系統全体の柔軟性を高めるだけでなく、ピーク需要帯の CO2 排出を抑制する環境価値の生成が進むとの分析が提示されています。こうしたトレンドは、単一の国や技術の話ではなく、世界規模でエネルギーシステムの構造を再編する大きな潮流であるとされています。

最後に、レポートは2025 年を迎えた再生可能エネルギーの躍進を評価しつつも、系統インフラ、融資・投資環境、政策的支援の整備が不可欠であるという視点も示しています。再生可能エネルギーと蓄電池の導入が進む一方で、電力網の柔軟性や需給調整能力を高めるための制度設計やインフラ投資が課題として残るという指摘です。この点は次の 2030 年代に向けた政策立案や市場設計において、より技術的・経済的視座からの検討が求められることを示唆しています。

参照

Ember, Highlights of the Global Energy Transition in 2025: Ember Energy

Renewables met all new electricity demand, solar leading growth: Ember Energy

Solar largest EU source in June 2025: Instagram