【解説】第74回ネットワーク小委員会(25/6/3)で何が議論されたか?Scope2に対応可能な非化石証書のあり方

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25年6月3日に第74回総合資源エネルギー調査会 第74回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会が開催されました。

この会合で、Scope2に対応可能な非化石証書のあり方についての議論がありましたので、ここでご紹介いたします。

再エネ価値が適切に評価される環境の整備

事務局からは以下の論点が示されました。

また、既認定FIT電源についても、「将来的には全ての電源についてFIP移行が望ましい」という政策方針の下、FIP移行を促進するための事業環境整備を強力に推進しているところ。

こうした中で、再エネ発電事業者が長期安定的に事業を実施するためには、再エネ電源が有する再エネ価値が適切に評価されて取引されることが重要となる。

① 現在、成長志向型カーボンプライシングの制度整備を段階的に発展させているところであり、2026年度からは、より実効可能性を高めるため、排出量取引を法定化することとしている。カーボンプライシングは、相対的に再エネ電源のコスト競争力を高める効果があると評価できる。

② 非化石価値取引市場については、約定価格が上限値となっている回もあるが、これまでの多くの入札で、売入札量が買入札量を上回り、約定価格は下限値に張り付いている状況。相対契約の交渉に当たっては、こうした約定価格が実質的な「価格指標」として参照されているとの指摘もある。再エネ電源投資を促進していく観点から、適正な再エネ価値の価格形成のあり方について、どのように考えるか。

③ 省エネ法等に基づき、特定事業者等(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する事業者等)に非化石電気使用の目標と実績の定期報告(開示は任意)を求めている。こうした規律について、より実効的な仕組みとするには、どのような施策が必要か。

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これに対しての岩船由美子委員のご発言内容が以下の通りとなります。

(なお、議事録が公表されておらず、Yotube配信から書き下ろしているため、正確でないこともありますことを予めご了承ください。正確には、是非以下のリンクからYoutubeで配信をご覧ください。)

非化石証書については、GHGプロトコルスコープ2の基準に適合してCO2排出の削減に実際に使えるのかという点について一定の誤認も広がっているのではないかと思う。

非下石証書については、追加性の担保やトラッキング制度が必ずしも十分ではないが、小売電気事業者は、環境価値付きの実質カーボンフリーの電力として訴求されている状況も一定程度あるように思う。

この非化石証書が1kWhあたり 0.6円や1.3円で入手可能な状況にある一方で、国の議論としては、発電 コスト検証委員会のようなものでは、例えば 石炭に関しては1kWhあたり5円の単素価格を想定されていて、GX実現の柱として一定程度高い炭素価格とするような制度設計が進んでいると思う。

それに対して、1円前後で入手可能な非化石証書によってスコープ 2の削減を主張できるかのような状況というのはかなりこう不整合が残されていると思う。

もちろんJクレジットなどとの制度的バランスの確保という面もあるのだとは思うが、全体的な炭素の価格制度の整合性を確保するよう、ルールをしっかり作っていただきたい。

追加性を担保しうる手段としてどういうものがいいのか、あるいは、証書の階層化が必要なのか、ま、その辺りの整理をお願いしたい。

トラッキング や追加性の有無の開示などを義務化する など、需要家の誤認を防止しながら 本当にスコープ2削減に使用可能な証書の 条件というのを、GHGプロトコル などに準拠してしていく必要があるの ではないかと思います。

ここはやはり脱炭素投資にもつながる部分ですので、 非化石証書制度の早急な見直しというのが急務かと思います。

これに対して、事務局からは、「どのような見直しができるのかについて、有識者の意見をいただきながら関係部局と連携しながら具体的に進めていきたい」旨の回答がありました。

非化石証書とGHGプロトコルScope2新マーケット基準との接合性の確保は、大変重要なテーマですので、各方面で議論がなされることを期待致します。