金利上昇で困難化する電力会社の資金調達、政府が融資支援で対応
金利上昇で困難化する電力会社の資金調達、政府が融資支援で対応
>>ニュースサイトTopへ >>会社HPへ
電力セクターの設備投資を支える資金調達、特に電力会社が発行する一般担保付社債、いわゆる電力債を巡る状況は、世界的な金利高傾向の中で厳しさを増しています。
増大する資金ニーズ
電力債の発行高の推移を見ると、電力会社の旺盛な資金需要が見えます。
2022年度は燃料価格の高騰によりキャッシュフローが悪化し、それを補填するための運転資金確保として約1.5兆円規模の起債が見られました。
2023年度以降は、電気料金の改定により収支は改善傾向に転じたものの、カーボンニュートラル実現に向けた次世代送配電網の整備や、原子力発電所の安全対策工事といった巨額の設備投資が本格化しました。
その結果、2024年度の発行額は約2兆円の大台に迫り、2025年度に入ってもその勢いは衰えず、過去最高水準での推移を続けています。
世界的な金利高が直撃
この旺盛な資金需要に対し、金利高騰が深刻な課題となっています。
2022年、電力債の指標となる10年物債券の利率は、わずか0.4パーセントから0.7パーセント程度で推移していました。日本銀行がマイナス金利政策を維持していたため、電力会社にとって電力債は極めて安価な調達手段でした。
ところが、2024年度に金融政策が正常化へと舵を切ったことで情勢は一変しました。2024年度には10年国債金利は1.5パーセントまで上昇し、足下では、2.2パーセントを超える水準で推移しています。
この金利上昇は、さらにプレミアムが追加されて、電力会社の財務戦略に深刻な影響を与えることになります。事実、過去5年間で利払いコストは実質的に2倍以上に膨れ上がっており、これが経営利益を圧迫する新たな要因となっています。
例えば、東京電力パワーグリッドの2020年7月の発行条件は以下の通りです。
- 5年債:0.58%
- 10年債:1.08%
- 15年債:1.37%
これが、直近、2025年10月発行(第85回〜第87回)の条件の表面金利は2-3倍となっています。
- 4年債:1.803%
- 10年債:2.731%
- 15年債:3.381%
まだまだ続く世界的な金利高
金利高危機に直面しているのは、電力セクターあるいは日本だけでなく世界的な傾向です。
IMF(国際通貨基金)が2025年9月17日に発表したレポート「Global Debt Remains Above 235% of World GDP」は、公的・民間双方の債務状況が深刻な局面にあることを警鐘を鳴らしています。

報告書によると、世界の総債務残高は対GDP比で235パーセントを超える高水準で推移しています。金額ベースでは251兆ドル(約3京7,000兆円)に達し、その内訳は公的債務が99.2兆ドル、民間債務が151.8兆ドルとなっています。特筆すべきは債務構造の変化です。
民間部門の債務比率が対GDP比143パーセントと2015年以来の低水準に低下した一方で、政府による公的債務は93パーセント近くまで上昇しました。この対照的な動きは、民間が金利上昇を受けて借り入れを抑制する一方で、政府がパンデミック時代の支援コストや急増する利払い費を賄うために、依然として巨額の赤字を垂れ流している実態を浮き彫りにしています。
震源地は米国。日本はどうすることもできない現実
国別の動向を見ても、事態の深刻さは鮮明です。米国では公的債務が対GDP比121パーセントへ拡大し、中国も88パーセントへと上昇を続けています。こうした大国の財政赤字が主導する公的債務の増大は、市場全体の金利を押し上げる「クラウディング・アウト」を引き起こしています。
レポートでは、重い公的債務が民間セクターの信用を制限し、資金調達コストを上昇させていると指摘しています。
IMFは、平均5パーセントに達する高い財政赤字が、上昇する純利子コストと相まって公的債務を押し上げる主因であると分析しています。
この世界的な債務の膨張と金利負担の増大は、特に長期間・多額の設備投資が必要な日本のインフラセクターが、デフレの30年間で、今まで当たり前に享受してきた「安価な資金調達」の時代が終わったことを告げています。
このIMFレポートは、「政府は、中期的な計画に基づき財政を段階的に調整し、公的債務を削減することで、民間投資を圧迫しない環境を整えるべき」と結論づけています。
我々が直面する課題
金利見通しが不透明な中、「国が民間のリスクを肩代わりせざるを得ない」という局面を迎えています。しかし、このレポートが示すように、国とても盤石な信用を確保できるとは限らないのが世界的な状況です。
電力インフラという、国家の存立に関わる巨大投資をいかに持続可能なものにするか。IMFのデータが示す債務の現実は、市場原理だけでは解決できない新たな局面への移行を、私たちに突きつけています。
>>ニュースサイトTopへ >>会社HPへ