ベネズエラ危機:現実味を帯びる金(ゴールド)の中国への「キャピタルフライト」

· DS構造研,電力速報

自国に資産を置くことの危うさ

ベネズエラ危機は、非西側諸国にとって、あるいは我々日本を含めた旧西側諸国にとってすらも、「自分の資産を自国で保管しておくことはリスクがある」という現実をまざまざと見せつけた。

ベネズエラがこれまで国内や西側諸国に保管していた金融資産・実物資産は、米国の影響下で管理され、主権国家自身が自由に動かせなくなる可能性がある。

もしも、ベネズエラが、この状況を事前に知ることができたていたなら、米国の影響が及ばない地域、例えば中国に一部でも資産を移動させていたはずだ。(あるいは既にそうしているかもしれない)。

かつてなら、資産の安全な逃避先といえばスイスだった。しかし、トランプ政権の荒っぽい振る舞いを見せつけられると、スイスに圧力をかけて資産を放出させるリスクもゼロではない。スイスは今後も引き続きその役割を果たすものと思われるが、スイスすら絶対に安全ではない。

金などの資産を保有する各国政府・民間セクターあるいは個人にとっても、リスク分散の立場からは、自国でも、米国でも、スイスでもなく、中国に預けておこういう動機が生まれるのは自然だ。

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もちろん「中国なんか信用ならない」とご立腹される向きもあろうが、自問すべき、「中国がふさわしいか?」ではなく、「中国にも少し分散しておいた方が、まだましではないか」だ。

こんな状況を想定したかのように中国が実際に動いているのは日本ではあまり知られていない。

世界の金保管庫化を狙う中国の動き

中国は、金・銀の現物取引を中核とする上海黄金交易所(SGE)を通じて、取引・決済・保管を一体化した市場インフラを整備してきた。

加えて近年、SGEは香港に認定倉庫を設置し、上海と香港をまたいで金の現物引き渡しが可能な体制を構築している。これは非西側諸国にとって実物資産の「安全な置き場所」を巡る選択肢を広げる動きといえる。
(Shanghai Gold Exchange公式:https://en.sge.com.cn/)

香港は英米法系の法制度と国際金融センターとしての透明性を維持しつつ、中国本土と制度的に連接されている。この特性により、上海―香港の貴金属市場は、中国の管理下にありながらも、従来の西側保管先とは異なる中間的な選択肢として機能し始めている。既存の香港金銀市場との補完関係もあり、物理的な金の流通拠点としての存在感は増している。
(市場分析例:https://www.bullionstar.com/blogs/ronan-manly/)

さらに、中国が他国の金準備をSGEネットワーク内で預かる構想を持っているとの分析も出ている。ドル依存を低下させたい国々にとっては、理論上、資産凍結リスクを分散する一手となり得る。ただし、これは現時点では構想・方向性の段階であり、制度的な不確実性も大きいことを付言する。

我々は、冷静にこうした動向を注視し、どう対峙すべきかを真剣に考える時を迎えている。