【コラム】迫る「10円玉危機」銅価格上昇がもたらす銅貨流出リスク
【コラム】迫る「10円玉危機」銅価格上昇がもたらす銅貨流出リスク
ゴー研坂井の金融日記
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こんにちは、DSゴールド研究所(ゴー研)坂井です。
経済・金融について日頃研究をさせていただいていますが、個人の視点で、普段感じていることを当コラムに書かかせてもらっています。(文責は、あくまでも個人にある前提で、好きに書かせてもらっていますので、当研究所の公式見解では全くないことを、どうぞご了承ください。)
さて、金や銀価格が高騰しているのは皆様ご承知の通りですが、今回は銅の話をさせていただきます。
皆さんご存じの10円玉についてです。とはいっても、キャッシュレスの時代、あまり10円玉を使わない人も増えていると思いますが。

これですね。
世界的なインフレの中、10円玉に含まれている銅の価格が上昇しています。
10年間で約3倍になりました。
もうすぐ1ポンド6ドルを超えそうな勢いです。

そして円安です。
円ベースでみると、銅価格はさらに高騰しています。
米国ドルの市場での信認低下の中で、ディベースメント取引が活発化して、特に金や銀の価格が急騰してすごいことになっています。
ディベースメント取引(Debasement Trade)とは、法定通貨の価値がインフレや金融政策などで目減り(ディベースメント)するリスクに備え、金やビットコインなどの代替資産に資金を移す投資戦略のことです。
これは、通貨の信用が低下する局面で、実物資産や希少資産が価値を保ちやすいことを利用し、ポートフォリオの価値を守る(ヘッジする)目的で行われます。
そんななか、「10円玉ってどうなの問題」が勃発しています。
現在流通している10円玉は青銅製で、その約95%が銅です。
1枚の重さは4.5グラムで、含まれる銅はおよそ4.3グラム程度と言われています。
すると、足元の国際銅価格と円安水準を踏まえると、10円玉に含まれる銅の素材価値は、すでに5円から6円前後に達していると推計されます。
額面価値の10円にはまだ届いていませんが、過去と比べれば明らかに接近している水準です。
ご存じの方も多いとは思いますが、銅は、今後データセンターの急増やEVの普及による送電網整備、脱炭素投資を背景に一段の上昇を予測する人がかなりいます。
もしもの話ですが、今後円安がさらに進み、銅の価値がさらに上昇して、10円玉の素材価値が額面価値を上回ってしまうとかなりまずいことになります。
実は過去にも似たようなことが起きています。
アメリカで起きた銀貨騒動
代表的な例が、アメリカの25セント(クオーター)硬貨です。
アメリカに旅行したことがある人なら使ったことがありますよね?

実は、あれもともと銀貨、銀でできていました。
ところが、1950年代末から銀需要が急増し、1959年頃には供給の逼迫が意識され始めました。
1961年には銀貨不足が社会問題となり、1963年頃には銀貨の退蔵(素材価値に着目して銀貨をため込む行為)が流行し、素材価値と額面価値の逆転が現実のものとして語られるようになります。
実際に銀貨が海外に流出したとの話もあります。
そこで、逆転が現実になる直前の1965年、アメリカ政府は、25セントを含む小額硬貨から銀を外し、素材を切り替えるという制度変更を断行しました。
日本の江戸時代の例
さらに古くは、日本でも江戸時代に似た問題が起きています。当時、日本国内の金と銀の交換比率は海外と大きく異なっており、その歪みを突いて金が大量に国外へ流出しました。
通貨制度と金属価値の不整合が、実物資産の流出を招いた典型例です。
では、どうすべきか?
こうした歴史を踏まえれば、「10円玉ってどうなの問題」も簡単に考えてはいけません。
もちろん、皆様ご存じのように、硬貨を溶かしたり、素材価値を目的に扱ったりすることは法律で禁じられています。
ですので、日本国内でリスクを冒してまで、違法行為に走る不届きものはいないと思います。
でも、本当に素材価値が額面価値を上回りそうになったら、かつての江戸時代のように、あるいは1950年代のアメリカで起きたように、1万円を10円玉に両替して、袋に詰めて国外に持ち出す、といった歪んだ行動が誘発されるリスクはあると思います。
これに対しては、なんらかの対抗策を今から検討しておくことが必要です(おそらく、中の人は既にシミュレーションはなされていると思いますが)。
どんな策があるかと言えば、例えば、素材を変更することや、キャッシュレス化の進行もあり、発行・流通量を抑えるなどの手立てが考えられるでしょう。
金や銀だけでなく、銅も大事な資源だというお話でした。
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