【分析】日本・米国の電気料金は過去5年で2-3割上昇:中国経済が左右する将来の先行き

· 電力脱炭素

現在、日本では3E+S(エネルギー安全保障・経済効率性・環境適合・安全性)**の観点から、電力システム改革の議論が進められています。

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その中でも、とりわけ重要なテーマが、電気料金をアフォーダブル(支払可能)な水準に維持できるのかという点です。電力は生活や産業の基盤であり、料金水準の変動は家計や企業活動に直接的な影響を及ぼします。

しかし、この5年間を振り返ると、電気料金を取り巻く環境は決して楽観できるものではありません。

日本では2020年を100とした場合、2025年12月時点の電気・光熱指数は122.7となり、約22.7%上昇しました。

一方、同期間の総合CPIは8~10%程度の上昇にとどまっており、電気料金の上昇率が物価全体を明確に上回っています。

米国でも同様に、電気料金は2020年比で約25~30%上昇し、総合CPI(約20%前後)を上回る動きとなりました。

日米ともに電気料金はこの5年間で、物価以上に上昇してきたと言えます。

将来の見通し

将来を見通す上で、特に注目すべきなのが中国経済の動向です。

中国では不動産バブル崩壊以降、個人消費が伸び悩み、デフレーション圧力が続いています。この中国の需要低迷は、世界の商品市場にも影響を与えてきました。

原油価格は2020年に1バレル100ドル前後で推移していましたが、足元2025年では70ドル台前後で安定しており、約30%程度の下落となっています。

中国の景気減速が、原油価格の落ち着きに寄与してきた側面があると言えます。

同様に再生可能エネルギー分野でも、中国の影響は顕著です。

太陽光パネルや蓄電池の価格は大きく下落してきましたが、その背景には技術進歩や量産効果に加え、中国国内で消化しきれない供給能力を背景に、国営企業や民間企業が低価格で輸出を拡大してきた事情があります。

いわば「再エネのデフレ輸出」によって、日本も再生可能電力コスト低下の恩恵を受けてきました。

しかし、この状況が将来も続く保証はありません。中国は近年、レアアースや銀などの戦略物資に対する輸出管理を強化しています。

仮に中国が太陽光パネルや蓄電池についても輸出規制を強めれば、価格高騰や供給不足が発生し、日本の電力システムに大きな影響を与える可能性があります。

現在享受している再エネ価格の低下は、中国のデフレと供給過剰という不安定な前提の上に成り立っている側面があるのです。

今後、中国経済が回復し内需が拡大に転じれば、原油価格や再エネ関連資材の価格は上昇圧力を受ける可能性があります。サプライチェーン寸断や資源ナショナリズムの進行も視野に入れると、電気料金を取り巻く環境は中期的に厳しさを増しかねません。

アフォーダブルな電気料金をどう確保するのかという課題は、3E+Sの中核として、これまで以上に戦略的な議論が求められています。