銀(シルバー)はなぜ急騰しているのか(1)―先物市場の変調と戦略資源への回帰

· 電力速報,DS構造研

直近の銀価格は、1オンス72.8ドル。この3か月で急激に高騰し、80ドルをヒットした後乱高下を繰り返している。

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今後1か月でどのように推移するかは、ランダム性があるので評価しないが、長期的には100ドルを超えてくるだろうという見方が多いのも事実だ。

そこで、その背景にある「資源帝国主義」と「ドルや円などのフィアットカレンシーに対する信認の低下」について、以下のYoutube(英語)のサマリーを合わせて解説する。

Youtube配信での主張

背景にあるのは、資源確保競争の激化と市場構造そのものの転換である。

銀は太陽光パネル、EV、半導体といった脱炭素・デジタル経済の中核素材であり、工業需要だけで年間鉱山供給量に迫る。しかも使用後の回収が難しく、構造的な供給不足が慢性化している。

これまで価格形成の中心にあったのは、CMEやロンドン市場(LBMA)に代表される先物・ペーパー市場だった。その中核を担ってきたのが、JPモルガンをはじめとする米国金融機関である。銀は「現物が動かずとも価格が決まる」市場として、長年にわたり先物取引が主導してきた。

しかし近年、その前提が崩れ始めている。米国金融機関自身が先物中心のポジションから、現物確保を重視する動きへと転換しているためだ。

その大きな転機となったのがウクライナ戦争だ。ロシアへの制裁と資産凍結を通じて、ドルをはじめとするフィアットカレンシー(法定通貨)への信認が各国で揺らぎ、通貨や金融資産ではなく、実物資産を確保する動機が一気に強まった。

この動きは中国で特に顕著だ。国内需要の拡大と供給制約を背景に、中国市場では現物銀の実需価格が海外市場を上回るスパイクが発生している。

中国は輸出規制というより、防衛的に銀を国内へ囲い込もうとしており、結果としてロンドンや先物市場に回る現物が細っている。

さらに緊張を高めかねないのが、ベネズエラ情勢である。同国は中国にとって重要な資源供給国であり、仮に有事や制裁強化が起きれば、中南米からの資源フローが遮断され、中国の銀調達は一段と困難になる。

そのリスクを見越した動きが、現物争奪戦を加速させている。

銀はいまや単なる貴金属ではない。先物市場で価格が管理される時代から、現物を押さえた者が主導権を握る戦略資源へと、その性格を変えつつある。

今回の価格高騰は、その転換点を示すシグナルにほかならない。