米軍ベネズエラ攻撃:三つの「現物」を囲い込む「新しい帝国主義」
米軍ベネズエラ攻撃:三つの「現物」を囲い込む「新しい帝国主義」
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資源をめぐる覇権争いは、新しい段階へと移行している。
かつての帝国主義が領土や市場を囲い込む戦略であったとすれば、現代の帝国主義は「希少資源権益を確保する」戦略である。この転換は、①原油に加えて、②レアアース、③貴金属といった資源類型を通じて行われている。
歴史的に見れば、東西冷戦期までの帝国主義は「市場としての国家」を囲い込む戦略であった。どこで生産し、どこに販売するかが国力を左右し、植民地や勢力圏は巨大な消費市場として機能していた。
しかし冷戦終結とグローバル経済の進展により、自由競争と分業が前提となり、国家単位で市場を囲い込む意味は急速に薄れた。この過程で、中国は「世界の工場」として製造業を引き受け、アメリカは製造業から距離を取り、デジタルテクノロジーと金融へとピボットすることで覇権を維持した。
この構造はWTO型自由貿易体制の下で、安定したグローバル・サプライチェーンを前提としていた。
しかし、2020年代に入り、地政学リスクの顕在化、パンデミック、資源ナショナリズムの復活によって、この前提は崩れつつある。
結果として、現在の覇権争いは「❶ものづくり」「❷サプライチェーン」「❸その最上流にある現物資源を確保する」という三段階を同時に押さえる競争へと変容してきたのである。
第一の資源類型は、レアアースに代表される「産業基盤型資源」である。ネオジムはEVや風力発電向け永久磁石に不可欠な戦略物資であり、中国は世界生産量の約60%、精錬・加工工程では約90%を掌握している。価格は2015年の40〜50ドル/kgから、EV需要の急拡大を背景に2022年には一時100ドル/kg超まで上昇し、2025年時点でも70〜80ドル/kgと高水準を維持している。ここで重要なのは、中国が製造工程だけでなく、サプライチェーン最上流の「山」と現物を押さえることで、産業全体に対する構造的支配力を確立している点である。
第二の資源類型は、金と銀に代表される「金融・戦略資産型資源」である。金は2015年の約1,100ドル/オンスから、地政学リスクやインフレ懸念、中央銀行による買い増しを背景に上昇を続け、足元では4,300ドル前後と史上最高水準圏に達した。

銀価格も最近異常ともいえる高騰を見せている。

第三の資源類型は、原油に代表される「エネルギー・地政学型資源」である。原油価格は2015年の50ドル前後から、2022年には一時120ドル近くまで上昇した後、2024〜2025年には70ドル前後で推移している。その背景には、再生可能エネルギー拡大による長期需要見通しの悪化、中国経済減速による需要低下、そして米国シェール革命による供給余力という三つの構造要因がある。ただし原油は依然として、軍事・輸送・化学産業の基盤であり、供給支配が地政学的影響力に直結する資源である点は変わらない。
この三類型を俯瞰すると、現代の覇権争いは、製造能力や市場支配ではなく、サプライチェーン最上流にある「現物」をどれだけ確保できるかへと重心を移していることが分かる。中国はレアアースで、アメリカは原油で、それぞれ異なる資源類型において優位を築いている。
そして今回のベネズエラをめぐる問題は、この「現物を囲い込む新帝国主義」の一断面として捉えることができるだろう。国家体制や外交姿勢の問題に見えて、その本質は地下に眠る資源の帰属と支配にある。覇権の単位は、もはや国家そのものではなく、資源という現物へと移行したのである。
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