排出量算定の厳格化:Scope2 標準供給サービス (SSS) 【第4回】欧米での適用の見通し
排出量算定の厳格化:Scope2 標準供給サービス (SSS) 【第4回】欧米での適用の見通し
Scope 2 SDPが描く「自発性のない電力」の再整理
- 2027年改訂予定のGHGプロトコルScope2ガイダンスによりCO2排出量の算定が厳格化され、電力需要家・小売電気事業者・発電者に大きな影響が出る見込みです。
- いち早く対策を講じるため、当社は独自に最新情報を分析し、皆様にアドバイザリー・サービスを提供しています。
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排出量算定の厳格化をめぐり、Scope2改定案で新たに注目されている概念がStandard Supply Service(SSS)です。SSSとは、需要家が自発的に選択した電力調達ではなく、規制や制度に基づいて標準的に供給される電力サービスを指します。欧州や米国では、Default ServiceやRegulated Tariffと呼ばれる形で長年存在してきた概念です。
欧州の文脈で重要なのは、SSSが「電気そのもの」だけでなく、環境価値(energy attributes)を誰が主張できるかという問題と深く結びついている点です。
EUのケース
EUでは、再生可能エネルギーの属性はGuarantee of Origin(GO)として分離され、GOを保有・償却した主体のみが再エネ利用を主張できます。
しかし、それを逆に言えば、GOを伴わない標準供給電力は、たとえ系統上で再エネ比率が高くても、個別企業が「自社の再エネ」と主張することはできません。それでは公正を欠くだろうという考えも成り立ちます。
賦課金や公的支援によって拡大した再エネ電源の価値は、社会全体で負担して生み出されたものであり、特定の需要家が自発的努力の成果として独占的に主張すべきではない、という思想が強くあり、そこからSSSが主張されているわけです。
英国のケース
英国の事例は、SSS(Standard Supply Service)と環境価値証書の関係を理解するうえで象徴的です。
英国のREGOs(Renewable Energy Guarantees of Origin)は、再生可能エネルギーで発電された電力1MWhごとに発行される「起源証明書」です。REGOsは、発電された電力そのものとは切り離され、サプライヤーが取得・償却することで、燃料ミックス表示や「再エネ由来」であることの主張に用いられます。重要なのは、REGOs自体が電力の物理的供給を変えるものではなく、あくまで属性情報である点です。
このため、SSSで供給される標準電力にREGOsを組み合わせると、「標準料金で供給される電力であっても、帳簿上は再エネ100%と表示できる」構造が生まれます。これが、英国で問題視されてきた点です。規制下の標準供給は需要家の自発的な選択や追加負担を伴わないため、SSS由来の電力にREGOsを後付けして再エネ主張を行うことは、「自発的調達」との区別が曖昧になるとの批判があります。
この議論は、Scope2改定案でSSSが持ち込まれた背景とも重なります。すなわち、デフォルト供給や公的制度の枠内で生じた価値と、需要家が追加コストを負って得た価値を区別すべきという考え方です。英国のREGOsとSSSの関係は、再エネ利用の「量」だけでなく「調達の質」を問う象徴的な例といえます。

終わりに
英国・EU共通の発想は、制度で既に割り当てられた価値と、需要家が追加コストを負って得た価値を混同しないという点にあります。
このSSSの考え方を日本に当てはめると、FIT/FIP由来の非化石価値や、標準的な小売供給に含まれる電力が、どこまで「自社のScope2削減」として認められない可能性があります。
一方で、日本でFIPがSSSの適用とならない可能性もあります。その行く末を見極めるのは、欧米でどのような制度に適用されているかをウオッチする必要があります。
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