質の高い再エネ:Scope2 例外規定【第3回】コーポレートPPA(フィジカル・バーチャル)は今後どうなるのか?

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  • 2027年改訂予定のGHGプロトコルScope2ガイダンスの厳格化で再エネ供給に大きな影響が見込まれます。
  • 激変緩和措置として多くの例外規定が検討されています。
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Scope 2改定における実務議論の焦点

GHGプロトコルScope 2改定を巡る議論の中で、コーポレートPPAおよびバーチャルPPAの扱いは、例外規定、いわゆるレガシー条項の設計と最も深く結びついた論点として位置づけられています。とりわけ、同時同量(Temporal correlation)と供給可能性(Deliverability)という新たな品質要件が導入されることで、過去に締結された長期契約をどのように評価し続けるのかが、企業調達の現場に直接影響するためです。

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まず、コーポレートPPA全体についての共通認識として、物理PPAは制度的に相対的な安定性を持つと理解されています。これは、需要家の属するグリッド内で実際に電力が供給されるという構造が、供給可能性の要件と整合しやすいためです。

この点については、エナジータグ(EnergyTag)や欧州の企業調達コミュニティであるRE-Sourceなどが、弊社のヒアリングや公式ガイドの中で繰り返し指摘しています。彼らの整理では、Scope 2改定は「PPAを否定する制度」ではなく、「PPAの品質差を可視化する制度」だと位置づけられています。

一方で、問題の中心にあるのがバーチャルPPAです。バーチャルPPAは金融契約であり、物理的な電力の引渡しを伴わないため、電力の属性証書、すなわちEACやRECの主張可能性が制度適合性の核心になります。この点について、GHGプロトコル事務局自身も、公式の説明の中で、金融的PPAやバーチャルPPAが移行措置の議論に最も関係し得る類型であると明示しています。

この問題に対して、企業調達側の立場を代表する団体であるクリーン・エナジー・バイヤーズ・アソシエーション(Clean Energy Buyers Association、CEBA)は、Scope 2改定が既存の企業PPAポートフォリオ、とりわけVPPAに与える影響を強く意識しています。CEBAの議論では、過去のScope 2ルールに基づいて締結されたVPPAを一律に不適格とすることは、企業の合理的な投資判断を否定することにつながり、将来の再エネ投資意欲を損なうという懸念が繰り返し示されています。

同時に、CEBAを含む企業側の議論でも、レガシー条項を恒久的な免罪符にすることは望ましくないという認識が共有されています

ここで焦点となっているのが、レガシー条項と単一の発効日という二つの移行アプローチです。すなわち、既存契約を一定条件で守るレガシー条項を設けるのか、それとも一定のリードタイムを置いた上で、全報告主体が同時に新要件へ移行する単一発効日方式を採るのかという選択です。この二択構造は、エナジータグの解説や、米国の実務系分析でも明確に整理されています。

VPPAに特有の論点としては、年単位で発行された属性証書を、時間別の消費とどのように整合させるかという問題があります。この点について、制度設計の議論では、完全な免除とするのではなく、推定された時間別ロードプロファイルなどを用いて、技術的に近似する方法が現実解として検討されています。これは、同時同量の思想を部分的に維持しつつ、既存データの制約を踏まえた折衷案であり、エナジータグや市場分析を行うPexaparkなどが、その妥当性と限界を指摘しています。

また、アンバンドルされたEAC、すなわち単体で売買される証書の扱いについても、VPPAと密接に関係します。ここで議論されているのは、レガシー適格な契約に基づいて発行されたEACを第三者が取得した場合、その第三者が例外規定を用いてScope 2主張を行えるのかという点です。

この問題について、米国の任意市場で強い影響力を持つセンター・フォー・リソース・ソリューションズ(Center for Resource Solutions、CRS)や、その運営するGreen-eプログラム周辺では、市場流動性と制度の信頼性のバランスが重要だという整理が示されています。

法律実務の観点からは、デントンズ(Dentons)やリンクレイターズ(Linklaters)といった国際法律事務所が、Scope 2改定を「報告基準の問題であると同時に、契約リスクの問題」であると捉えています。彼らの解説では、VPPAを含む既存契約が将来の基準変更にどのように晒され得るか、また契約条項の中でどの程度の柔軟性を確保すべきかが論じられています。これらは公式ルールを決めるものではありませんが、企業実務の見通しを示す材料として参照されています。

コーポレートPPAやバーチャルPPAが、どの条件で、どの期間、どの程度まで既存契約を守るのか、そしてその過程をどのように開示し、透明性を確保するのかについて引き続き様々な立場から意見表明がなされ、議論が戦わされるものと思います。