質の高い再エネ:GHGプロトコルーAMI【第6回】25年12月3日に開催された、AMI タスクフォースの第11回ミーティング での議論の中身とは?(続編)

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  • 2027年改訂予定のGHGプロトコルScope2ガイダンスにより再エネ発電の差別化が進むと見込まれます。
  • 「AMI」基準を満たし、追加性の高い再エネ供給・蓄電池放電ができれば、収入増の道が開けます。
  • 再エネ・蓄電ビジネスのバリューアップ戦略としてScope2ガイダンス改訂にご注目ください。当社は独自に最新情報を分析し、皆様にアドバイザリー・サービスを提供しています。

GHGプロトコルScope 2改定と「行動・市場手段」の評価枠組み

2025年12月3日に開催された、GHGプロトコル事務局(Greenhouse Gas Protocol/GHG Protocol)が設置したActions and Market Instruments Task Force(AMI Task Force/AMI)第11回ミーティングでは、Scope 2を含む温室効果ガスインベントリ会計を超えた「行動と市場手段」の影響評価に関する重要な議論が進みました。

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AMIは、企業の再エネ調達や市場メカニズムが電力システムや排出構造にどのような結果的影響を与えたかを評価するための枠組みで、従来のインベントリ会計(排出量配分)では扱い切れない領域を対象としています。

今回の第11回ミーティングではこれまで曖昧であった用語や範囲の定義を整理しました。

第11回ミーティングでは、まずEnergy Attribute Certificate (EAC) とEnvironmental Attribute Certificate(EAC)の関係性と用語の使い分けが主要なテーマとなりました。

両方とも略すとEACなのでわかりにくいのです。

従来、GHG Protocolやザ・エナジー・タグ(EnergyTag/国際再エネ属性標準団体)の文脈では、EACは「電力量1MWhに紐づく属性」、すなわち発電源、発電時刻、技術種別などを示す証書として比較的明確に理解されてきました(代表例としてはRECsやGuarantees of Originなど)。

一方で、環境属性を意味する“Environmental Attribute Certificate”という用語が政策文書や実務の中で散見されるため、両者の使い分けが曖昧な状況が存在していました。

AMIの討議では、評価対象が「インベントリ上の属性」ではなく「電力システムや市場構造に与えた影響」である以上、EACを「結果的影響の代理変数」として扱うべきではなく、本来の意味でのenergy attributeに限定して用語を位置づけるべきだという認識が共有されました。

その結果、Environmental Attributeという表現は、より広い意味で「行動や市場メカニズムが系統・排出構造に与えた結果的価値」を語る場合に限定して用いる方向性が示されています。

市場手段(market instruments)とカーボンクレジットの分離

もう一つ話題に上ったが、“market instruments(市場手段)”と“carbon credits(カーボンクレジット)”は概念として分けて扱うべきではないかという論点です。

これまでのサステナビリティや脱炭素行動の文脈では、再エネ証書、PPA(物理PPA/VPPA)、カーボンクレジット、オフセットといったさまざまな手段が「市場手段」という一つの枠で語られることが少なくありませんでした。この整理でも、インベントリ会計の範囲では実務が成立してきた側面はあります。

しかしAMIでは、評価対象が「電力システムや排出構造の変化」である以上、因果関係が異なる手段を同列に扱うと評価のロジックが破綻するという認識が広く共有されました。

EACやPPAは、電力市場・系統運用・発電投資の意思決定に直接的に作用する実体的な手段であり、これが結果的に限界電源の運用や将来の投資環境に影響を与える可能性があります。

これに対してカーボンクレジットは、一般的に排出量の外部補償手段として機能し、電力システムそのものの運用や投資に直接的な影響を与えるものではないという性質があり、評価対象としては別のカテゴリーに属すると整理されつつあります。

第11回では、これらの区別を単なるラベルではなく、評価枠組みの原理として位置づけるべきだという理解が、複数の専門家・技術作業グループ(TWG)メンバーから示されました。

これによって、AMIは「行動の効果」を測るための枠組みとしてより明確な方向性を持つことになります。

AMIがもたらす新たな評価基準

この用語整理が進むと、AMIが曖昧な万能ツールではなく、電力・エネルギー市場の中で作用した行動や手段の結果的影響を説明するための限定的な評価枠組みとして成立する基盤が整います。

最終的な評価対象とするインパクトは、単なる属性配分ではなく、

  1. 発電・市場設計・系統運用に実質的な影響を与えた行動
  2. 再エネ誘発や投資選好を方向づけた市場メカニズム
  3. エネルギーシステム全体の排出構造に結果として寄与した因果関係

というように整理されていくことが見通されます。

この整理は、Scope 2改定が意図する「マーケットベース手法(MBM)を能力主義的・精緻化する」方向性とも整合的です。

単なる属性配分ではなく、「何が結果的インパクトを出したのか」を見える化する設計思想に寄与すると期待されます。

日本の電力システムへの示唆

日本における非化石証書やトラッキング制度は、Scope 2インベントリ会計や再エネ調達の実務として広く利用されています。

しかし、AMIのような枠組みが国際標準として議論されるようになると、「インベントリ上の属性主張」と「結果的影響の説明」を意識的に切り分ける必要性が高まってきて、一層複雑化するかもしれません。

これは、単に報告書の書き方の問題ではなく、再エネ・蓄電ビジネスの設計戦略にも影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、蓄電池の放電が再エネ誘発や系統混雑緩和にどの程度寄与したかを、単なる属性だけでなく結果的インパクトとして評価することが要件となる可能性を否定できません。

一方で、「質の高い再エネ」としての差別化につぃながるという前向きな見方もできようかと思います。

AMI基準のインセンティブ設計如何では、再エネ・蓄電ビジネスのバリューアップ戦略に新たな方向性が生まれ得ると思われます。