電力小売の新事業戦略【第4回】昼シフト誘導で脱炭素と原価低減を共に実現

· 需要家排出係数,LBM,電気小売ビジネス,電力脱炭素,昼シフト

電力消費によるCO2排出量の算定ルール(GHG Scope2ガイダンス)が大きく変わろうとしています。㈱電力シェアリングは、8年間の環境省事業で蓄積した知見と、独自の特許技術、海外組織とのネットワークからの最新情報分析を駆使してアドバイザリーサービスを提供しています。

はじめに

前回の記事では、時間帯別排出係数によるサービスの温対法との整合性について見てきました。

今回は、時間帯別排出係数を顧客に意識してもらい、需要の昼シフトを促すことで、CO2排出量と電力調達単価をともに低減する効果について検証してみたいと思います。

㈱電力シェアリングでは、環境省から受託した行動変容を促すナッジ実証事業に関連して、2021年にその効果を検証しました。

その結果を以下に示します。

①需要家毎の調達原価

2021年に東京電力管内の需要家3,800世帯の30分単位の電力消費量のビッグデータを収集しました。

その需要家毎の、ある時間帯の消費量とその時間に対応するJEPXのスポットプライス(調達原価)を掛け合わせ、これを期間で通算して、需要家毎の調達原価総額を算定しました。

ある需要家の調達原価総額を、その電力消費総量で割れば、その需要家の調達原価が求められます。

各需要家に固有な調達原価の分布を表したのが、右下のグラフです。

需要家によって、調達原価がばらついていることをお判りいただけると思います。

(左下は、プロシューマの発電量の分布ですが、これは別の機会に解説します。)

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さらに詳細に分析したところ、昼間に多く電気を使う需要家は、調達原価が低くなることがわかりました。

しかも、ばらつきは正規分布ではなく、左にロングテールがある、つまり少ないながらもとても調達原価が低い需要家が存在するということもわかりました。

「当り前じゃないか!」を思われるかもしれませんが、今まではこうしたビッグデータが揃わなかったので、なかなかこのような分析ができなかったのです。

②需要家毎の排出係数(需要家排出係数)

次に、各需要家に固有な需要家排出係数の分布を見てみましょう。

需要家排出係数の求め方は以下の通りです。

まず、各需要家のある時間帯の消費量と、その時間に対応する送配電網(グリッド)のCO2排出係数を掛け合わせ、これを期間で通算して、需要家毎のCO2排出総量を算定します。

そして、この需要家の期間通算CO2排出総量を、その需要家の期間通算電力消費総量で割れば、その需要家のその期間の平均CO2排出係数である需要家排出係数が求められます。

需要家CO2排出係数が低ければ、その需要家は、再エネ比率の高い昼間の時間帯に多く電力消費をしていて(マイカー運転でいうエコドライブ)、反対に需要家排出係数が高ければ再エネ比率の低い夜の時間帯に多く電力消費をしていることを意味します。

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式で表すとこのようになります。

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それでは、各需要家に固有な需要家排出係数を見てみましょう。右下のグラフです。

需要家によって、需要家排出係数がばらついていることをお判りいただけると思います。

(左下は、プロシューマの発電者排出回避係数の分布ですが、これは別の機会に解説します。)

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③調達原価と需要家排出係数の関係

最後に、①で求めた需要家毎の調達原価と、②で求めた需要家排出係数の関係を見てみましょう。

これはとても重要です。

何故なら、もし需要家の調達原価と排出係数が密接に関係しているとすれば、需要家に昼シフトを促せば、需要家の排出係数を下げ、電気料金メニュー全体の排出量を下げることができるし、さらに、調達コストも低減できるという一挙両得だからです。

お客様に「調達原価を安くしたいので、昼にシフトしてください」といったら怒られますが、「CO2排出量を削減するために、昼シフトにご協力ください。みんなで一緒にエコに!」と言えば、環境意識の高い電力会社だと社会的な評判も上がります。

それでは、実際どうだったでしょうか?

その結果は以下の右下のグラフの通りです。

(左下は、プロシューマの発電売却単価と発電者排出回避係数の分布ですが、これは別の機会に解説します。)

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R2=0.94と極めて強い相関があることがわかりました。

つまり、顧客に昼シフトを促すためのKPIとしての需要家排出係数は、実は、調達コスト削減のKPIでもあったということです。

まとめ

上記のように、

需要家排出係数が高いほど、スポット市場での調達原価も高くなるので、電力消費の昼タイムシフトを促すことで、電力小売会社は、調達コストの削減が可能となる。

ことを実証致しました。実は、このような実証研究の成果を発表していたのは少なくとも2021年の時点では確認できませんでした。

当社は、その後も2026年3月までの環境省受託実証で、さまざまな分析を行っています。

そこで、この関係はある特定の条件下で成り立ち、例外もあることがわかってきました。供給エリアの電源構成、季節・時間帯によっては、上記の関係が必ずしも成り立たないのです。

そこで、こういったサービスを実装するには、そのような点を考慮しながらチューンアップが必要となってきます。

次回はその点を詳しくご説明いたします。

(お知らせ)

電力消費によるCO2排出量の算定ルール(GHG Scope2ガイダンス)が大きく変わろうとしています。㈱電力シェアリングは、8年間の環境省事業で蓄積した知見と、独自の特許技術、海外組織とのネットワークからの最新情報分析を駆使してアドバイザリーサービスを提供しています。