ドイツでバルコニー太陽光が急増~電気料金高騰が後押し。

· 電力脱炭素

ドイツで、バルコニーに設置する小型の太陽光発電システム、いわゆるバルコニー太陽光やマイクロ太陽光の普及が急速に進んでいます。

Section image

背景にあるのは、ウクライナ戦争以降に深刻化したエネルギー価格の高騰と、家庭の電気料金負担の増大です。

バルコニー太陽光とは、屋根工事や大掛かりな電気工事を必要としない簡易型の太陽光発電システムのことをいいます。主に1キロワット未満の太陽光パネルとマイクロインバータを組み合わせ、家庭用コンセントに接続して使用します。

価格は数百ユーロ程度で、一般的には400〜800ユーロ、円換算で10万円前後で導入できます。太陽光パネルの寿命は20年以上、マイクロインバータも10年から15年程度とされ、長期利用が前提となっています。

ドイツでは公式に登録されている設備数だけでも数十万規模に達していますが、登録漏れや未届け分を含めると、各種報道や推計では400万〜500万台規模に達している可能性があるとされています。

生活防衛としての太陽光発電

導入が進む最大の理由は経済性です。ドイツの家庭用電気料金は、すでに1キロワット時あたり50円を超える水準に達しており、年間700〜800キロワット時程度を発電するバルコニー太陽光であれば、電気代削減効果は年間数万円規模になります。初期投資が10万円前後であることを考えると、2〜3年で投資を回収できる計算になります。

インフレと物価高が家計を直撃する中、ドイツでは電気を購入するよりも、自分で発電した方が安いという状況が現実のものとなっています。

安全基準の緩和

こうした普及を支えているのが、安全基準と制度の見直しです。

ドイツを含むヨーロッパでは、出力上限を設けた上で、逆潮流や感電リスクを製品側の設計で抑えるマイクロインバータを前提とし、製品認証を満たせば簡易な手続きで使用できる仕組みが整えられてきました。ドイツではオンラインでの登録のみで利用できる点も、普及を後押ししています。

米国にも波及

こうした考え方は欧州にとどまりません。米国ではユタ州が、一定容量以下のプラグイン型太陽光を明示的に認め、電力会社の個別承認を不要とする制度を導入しました。さらにカリフォルニア州でも、バルコニー太陽光を想定した安全基準の整備や法制化に向けた動きが進んでいます。

日本の状況

一方で、日本では状況が大きく異なります。日本の制度では、逆潮流の可能性がある場合、その接続行為自体を規制する考え方が取られています。そのため、EU、ユタ州のように、逆潮流しない設計を前提に製品認証で完結させ、コンセント接続を認める仕組みは原則として存在していません。

しかし、今後も電気料金の上昇が続けば、かつてのドイツと同様に、規制が追いつかない中で個人が自衛的に自家発電を選択する動きが出てくる可能性は否定できません。

実際、太陽光パネルやマイクロインバータは、中国製品を中心にすでにインターネット通販で容易に購入できる状況にあり、2010年代初頭のドイツでそうだったように、隠れて利用する違法行為が拡大する懸念もあります。

日本でも電気料金はこの5年で20%以上高くなっていて、「系統の電気がぜいたく品」になりつつあるなかで、このような究極の分散型電源にどう対応するのかが、今後あらためて問われることになりそうです。