【事例分析】アイルランド当局「実質再エネ電気料金メニュー」にグリーンウオッシュとして是正を要求

· GHG Scope2,非化石証書,電力脱炭素,非化石証書とScope2改定

アイルランド広告基準局が示した「100%再エネ表示」への警鐘

――証明書制度と電力の物理的現実の乖離が問われる時代へ

アイルランド政府機関である広告基準局(Advertising Standards Authority for Ireland)は2023年、電力会社が年間単位の環境証書(日本では非化石証書に相当)を用いて「100%再生可能エネルギー」とした広告表現について、消費者に誤解を与えるおそれがあるとして是正を求めました。欧州ではグリーンウオッシュのケーススタディとして認識されています。

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これは非化石証書の見直しに当たってひとつの参考となるトピックですので、取り上げさせていただきます。

問題の背景にあるのは、現在広く用いられている年間単位の環境属性証書(GOやRECなどのEAC)の運用ルールです。

多くの制度では、消費者が12か月間の任意の時点で取得した証明書を、年間を通じた電力消費量に充当できる仕組みが認められています。

例えば、「夏季の太陽光発電が豊富な時間帯に発行された証明書を、冬季の夜間を含む電力消費全体に適用できる」という考え方です。

しかし、この運用は電力系統の物理的現実と必ずしも整合していません。電力は基本的に「同時同量」で需給バランスが取られるものであり、発電した時間帯と消費した時間帯が大きく異なる場合、実際の系統上では再生可能エネルギーが使われていない可能性があります。この乖離こそが、証明書制度そのものへの不信感や、「グリーンウォッシュではないか」という批判を招いてきました。

アイルランド広告基準局は、こうした点を踏まえ、「現行の証明書基準に従っているだけでは「100%再生可能エネルギー」と断定的に表示することは不適切である」と判断しました。消費者は、その電力が実際にどの時間帯・どの発電源から供給されているのかを十分に理解できておらず、広告表現が実態以上に環境価値を強調していると評価されたのです。この判断は、Euronewsでも詳しく報じられ、欧州各国のエネルギー・広告業界に大きな反響を与えました。

今回の事例は、再生可能エネルギー市場が「量の拡大」から「質の説明責任」へと移行しつつあることを示しています。