ユーラシアグループ「電気国家・中国」を世界10大リスク第2位に―AI覇権と電力供給力の関係性

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ユーラシアグループは『2026年 世界10大リスク』公式レポートの中で、2026年の世界10大リスク第2位として「電気国家・中国」を挙げました。これは、中国が21世紀の経済と安全保障を規定する中核要素である「電気技術スタック」を事実上支配しつつあることを最大の地政学的リスクとして位置づけたものです 。

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同レポートによれば、電気自動車、蓄電池、ドローン、ロボット、先端製造、スマートグリッド、AIはすべて「電気スタック(電池、モーター、パワーエレクトロニクス、組み込み計算機)」を基盤としています。中国はこの分野で圧倒的優位を築いており、リチウムイオン電池の世界生産の約75%、モーター用ネオジム磁石の約90%を支配しています。また、太陽光パネル、風力設備、送電網機器、EV、ドローンの多くで中国企業が世界市場を主導しています。

発電面でも、中国は2024年に429GWという前例のない新規発電容量を追加し、米国の約8倍の規模で電力供給力を拡大しました。これにより、中国はAIの学習・運用に必要な膨大な電力を安定的かつ低コストで供給できる体制を整えています。一方、米国は化石燃料を中心とするエネルギー戦略に回帰し、太陽光や蓄電池といった最も迅速かつ安価な電源拡張手段を制度的に制約していると指摘されています。

ユーラシアグループとは?

ユーラシアグループは、1998年にイアン・ブレマー氏によって設立された米国最大級の政治リスク分析会社です。国家間の紛争や選挙だけでなく、産業構造、技術、エネルギー、制度変化を統合的に分析し、政府・多国籍企業・金融機関に助言を行っています。

毎年発表される「世界10大リスク」は、単なる予測ではなく、世界秩序の構造変化を示す指標として国際的に参照されています

2026年版レポートで「電気国家・中国」が第2位に置かれたことは、中国の脅威を軍事衝突や外交対立ではなく、産業基盤そのものの覇権として捉えている点に特徴があります。

中国はAIそのものの性能競争よりも、「大量の電力を前提に、AIを現実世界で展開できる能力」に賭けています。電力供給、製造能力、コスト曲線を押さえた国家が、結果的に経済・軍事・地政学的優位を獲得するという構図です。

ユーラシアグループは、米国が依然として最先端AIモデルでは優位を保っている一方で、それを動かす電力と産業スタックを中国に依存するリスクを強調しています。これは、米国が「分子(化石燃料)」に賭け、中国が「電子(電気技術)」に賭けた結果として、2026年以降に明確な差となって現れるとされています。

この分析は、中国の台頭を単なる地政学的対立としてではなく、世界のエネルギー・産業・AIの基盤がどこに依存するかという問題として突きつけています。

日本にとっても、AI時代を迎えた中で、電気を安定的に供給するシステム構築が経済安全保障を確保する基盤になることを十分に認識する必要があります。