【解説】「2030年アワリーマッチング50%:SBTi」の衝撃

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はじめに

企業の脱炭素目標設定において、SBTi(Science Based Targets initiative)は「任意のガイドライン」という位置づけを超えた重要な影響力をもっています。

前回の記事では、SBTiが11月に新ルールのドラフトを開示した概要をお伝えしました。

このドラフトが業界関係者に衝撃を与えたのは、アワリーマッチング率は2030年に50%以上、2050年には90%以上を達成することが書かれていたことです。

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該当項目は以下の通りです。

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C16.6. 時間単位のマッチングの段階的導入:

ベストプラクティスを促進するため、本基準は当初、影響力の大きい限定された企業群に適用される。対象基準年度において物理的供給可能地域内で年間総電力消費量が10GWh以上の企業は、当該地域において時間単位のマッチングを段階的に導入する。

段階的導入は下記のスケジュールに従う。

なお、技術・市場動向及びGHGプロトコル改訂を踏まえ随時見直しを行う:

a. 2030年以降:少なくとも[50%]

b. 2035年以降:少なくとも[75%]

c. 2040年以降:少なくとも[90%]

実は、これまでアワリーマッチング率については具体的な数値目標はあまり示されてきませんでした。あまり高い数字を示すと、実際に運用する側から反発を受けるからです。

こうした中で、「業界」をリードするGoogleが公開した2025年度版環境レポートの中にあるGoogle自身のアワリーマッチング率のレンジがひとつのベンチマークとなるのではとささやかれていました。

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Googleの2025年環境報告書

欧米地域では軒並み80%を超え、水力発電主体のカナダのハイドロケベック管内では100%となっている一方で、アジア地域は全体的に低く、東京電力管内は16%、関西電力管内は30%、シンガポールは4%となっています。

そんな中出てきた2030年50%は、「かなり高めの玉」だという声が多いです。

もちろん、まだ「ドラフト」ですので、これから各ステークホルダーの間で駆け引きが続くものと思われます。

年間1000万kWh以上を消費する企業は日本にも多くあります。今後の議論の行く末に注視する必要があります。

一方、小売電気事業者・発電(蓄電)事業者においても、アワリーマッチング率保証型PPAの組成準備を検討すべき時にあると言えます。