電力小売の新事業戦略【第2回】炭素会計と電気料金メニューの融合

· 需要家排出係数,LBM,電気小売ビジネス,電力脱炭素,昼シフト

電力消費によるCO2排出量の算定ルール(GHG Scope2ガイダンス)が大きく変わろうとしています。㈱電力シェアリングは、8年間の環境省事業で蓄積した知見と、独自の特許技術、海外組織とのネットワークからの最新情報分析を駆使してアドバイザリーサービスを提供しています。

連載第1回の記事では、新Scope2下での炭素会計サービスの基本コンセプトについて解説しました。

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今回は、こうしたサービス提供で需要家の行動変容を促すことが、小売電気事業者の収益の中核となる、電力調達と料金設計にも良い影響を与えるという点をご説明します。

太陽光発電などの再エネ電源の出力が大きい時間帯は、卸電力市場におけるスポット価格が低下する傾向があります。

より細かく見れば、実は排出係数が低い時間帯と、市場価格が低い時間帯は完全に相関しないのが悩みの種なのですが、それでも高い相関関係があることを、当社が環境省から受託した実証事業では立証しています。

もしその公式が成り立つならば、需要家が低排出係数の時間帯へ消費をシフトすることは、電力小売会社の調達原価を引き下げる効果が期待できることになります。

ここで重要になるのが、需要家排出係数など指標を設定して、需要家側の行動変容を定量的に評価し、フィードバックするというPDCAサイクルを確立することです。

電気料金メニューとの統合

この構造を踏まえると、電力小売会社には新しい料金メニュー設計の余地が生まれます。例えば、ピーク時間帯の消費削減や、低排出係数時間帯へのシフト努力の結果、需要家排出係数は削減されますので、過去との比較や、他の需要家との比較(ランキングなど)に応じて、電気料金を割り引く、あるいはポイントを付与するといったインセンティブ設計が考えられます。

これは単純な市場連動型料金のように、価格変動リスクを需要家にそのまま転嫁する仕組みとは異なり、需要家の努力と成果に応じて報われる設計となります。

市場連動型電気料金については、価格変動リスクが需要家にとって過度に大きいという批判も根強くあります。しかし、時間別排出係数を軸とした仕組みでは、需要家は「排出効率を改善する」という分かりやすい目標に向かって行動し、その結果として得られた経済的メリットを、料金割引やポイントという形で受け取ることができます。ここでは、需要家と電力小売会社がプロフィットを分かち合う関係が成立します。

このように、時間別排出係数の活用は、単なる炭素会計サービスにとどまりません。電力調達、料金メニュー、需要家インセンティブ設計といった、電力小売事業の根幹に関わる領域と密接に結び付いています。

だからこそ、単なる炭素会計サービスを追加すると考えるのではなく、電力小売会社の事業構造の中核をなす、調達・電気料金メニュー設計とCO2削減を融合させ、これをマーケティングに生かしていくという発想の転換が求められるでしょう。

次回に続く。