米政府、閉鎖直前の火力発電所に稼働継続を命令。データセンター急増で
米政府、閉鎖直前の火力発電所に稼働継続を命令。データセンター急増で
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米国エネルギー省(DOE)は複数の州において、閉鎖が決定していた石炭火力発電所に対し、その計画を撤回して稼働を維持するよう命じています。

ミシガン州のJHキャンベル石炭発電所
1962年に操業を開始したミシガン州のJHキャンベル発電所は、2025年5月末にすべてのユニットを閉鎖する予定でした。
しかし、閉鎖までわずか8日というタイミングでDOEは運営会社のコンシューマーズ・エナジーに対し、稼働継続を命じました。同州内でのデータセンター建設や製造業の電化により、夏季の予備率が危機的な水準にまで低下したことが背景にあります。
コロラド州などで続々と
同様の措置は西部や中西部でも広がっています。コロラド州のクレイグ発電所では、州のクリーンエネルギー計画に基づき段階的な廃止が進められていましたが、近隣のITインフラ維持を優先し、閉鎖スケジュールが事実上凍結されました。
また、ワシントン州のセントラル・マウンテン施設やインディアナ州のメリルヴィル周辺の石炭ユニットにおいても、冬季のピーク需要やデータセンター群への供給安定化を理由に、稼働維持の指示が出されています。
さらに、世界最大のデータセンター集積地であるバージニア州北部を支えるチェスターフィールド発電所など、系統運用機関からの要請により、石炭火力の廃止を数年単位で先送りする動きが常態化しています。
「伝家の宝刀」連邦電力法202条(c)項
これら一連の強制的な措置を可能にしているのが、連邦電力法(Federal Power Act)第202条(c)項という強力な法的権限です。
この法律は、戦争や燃料不足、あるいは電力需要の予期せぬ急増などの「緊急事態」において、エネルギー長官が電力供給の信頼性を確保するために、特定の発電設備に対して稼働を命じることができるというものです。
この権限の最大の特徴は、命令が発動された場合、発電所は一時的に大気汚染防止法(Clean Air Act)などの環境規制を回避してでも稼働することが許されるという点にあります。
かつてこの「202条(c)項」は、歴史的な寒波や大規模なハリケーンなど、一時的な災害対応のために使われる「伝家の宝刀」でした。しかし現在、AIデータセンターによる電力消費の急増は一時的な現象ではなく構造的な問題となっており、政府はこの緊急用の権限を「日常的な需給調整」のために使わざるを得ない状況に追い込まれています。
現場の混乱と法廷闘争への発展
政府によるこの強引な「石炭延命」は、エネルギー業界や自治体に深刻な混乱をもたらしています。
第一に、発電事業者の経営リスクです。コンシューマーズ・エナジー社などは、閉鎖を前提に従業員の再配置や設備の解体契約、跡地の再開発計画をすでに確定させていました。命令によってそれらすべてが白紙となり、老朽設備のメンテナンス維持に数千万ドル(数十億円)規模の追加コストが発生しています。このコストを誰が負担するのか、電気料金への転嫁をめぐって激しい議論が起きています。
第二に、法的な対立の激化です。ミシガン州のダナ・ネッセル司法長官や現地の環境団体は、DOEの命令は「緊急権限の乱用」であるとして、法廷に異議を申し立てました。「AIデータセンターという特定企業の利益のために、州民に大気汚染と高額な維持費を押し付けるのは違法だ」という主張です。
第三に、エネルギー政策の矛盾です。米政府は2035年までの電力部門の脱炭素化を掲げていますが、現実にはAIの進化を優先するために石炭に依存し続けるという「ダブルスタンダード」の状態に陥っています。
需給ひっ迫の中での綱渡りの運用
エネルギー省は2025年末、公式SNSにおいて石炭を運ぶサンタクロースの画像とともに「石炭は悪い子だけのものではない」というメッセージを発信し、安定供給における石炭の重要性を改めて強調しました。
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