大規模太陽光発電:行政を「敵」に回した瞬間に始まる、数億円規模の泥沼訴訟【北海道三笠市の事例】
大規模太陽光発電:行政を「敵」に回した瞬間に始まる、数億円規模の泥沼訴訟【北海道三笠市の事例】
「ルールを守らなければ、事業そのものが消滅する」――。今、日本のメガソーラー事業者は、かつてないほど厳しい監視の目にさらされています。
北海道三笠市と千葉県富津市で起きた2つの事案は、単なる「地域トラブル」の一言では片付けられません。事業者がこれまで「何とかなるだろう」と楽観視していたポイントが、今や事業の継続を断つ致命傷(キラーリスク)に変わったことを象徴しています。
それぞれの事例から、事業者が直視すべき「現場のリアル」を読み解きます。
「ルールを守らなければ、事業そのものが消滅する」――。今、日本のメガソーラー事業者は、かつてないほど厳しい監視の目にさらされています。
北海道三笠市と千葉県富津市で起きた2つの事案は、単なる「地域トラブル」の一言では片付けられません。事業者がこれまで「何とかなるだろう」と楽観視していたポイントが、今や事業の継続を断つ致命傷に変わったことを象徴しています。
それぞれの事例から、事業者が直視すべき「現場のリアル」を読み解きます。
行政を「敵」に回した瞬間に始まる、数億円規模の泥沼訴訟
【北海道三笠市の事例】
メガソーラー建設において、自治体との協議は「避けては通れないステップ」です。しかし、産経新聞(2025年12月17日付)が報じた三笠市のケースは、事業者が行政との信頼関係を軽視した結果、どれほど恐ろしい事態を招くかを物語っています。
この事案の核心は、事業者が「事前の説明とは異なる形」で開発を強行したことにあります。市側は再三にわたり是正を求め、協議の場を設けようとしましたが、事業者の対応は不誠実なものだったとされています。その結果、ついに市は約3億7,000万円という巨額の損害賠償を求めて提訴する方針を固めました。
許可なき伐採が招く「FIT認定取り消し」という死刑宣告
【千葉県富津市の事例】
三笠市の事例が「金銭と信頼」のリスクなら、朝日新聞(2025年12月13日付)が報じた千葉県富津市の事例は、「事業の死」そのものを意味します。
ここでは、事業者が森林法に基づく許可を得ないまま山林を伐採し、開発を進めたことが問題視されました。これに対し、経済産業省は極めて重い決断を下しました。「FIT(固定価格買い取り制度)認定の取り消し」です。
FIT認定の取り消しは、銀行への返済計画が根底から崩壊することを意味します。売電収入という唯一のキャッシュフローが絶たれれば、プロジェクトファイナンスを組んでいる場合、即座に債務不履行(デフォルト)に直結します。
「施工業者が勝手にやったことだ」という言い訳は通用しません。森林法や盛り土規制法といった関連法規の遵守状況を、現場レベルで、かつ事業主の責任でのチェック体制の強化が求められて言います。
環境省が策定した「太陽光発電開発に係る環境配慮ガイドライン(令和2年3月)」は、再エネ導入と環境保全の両立を目的とした実務指針です。事業の検討段階から住民との合意形成を重視し、土砂災害リスクや生物多様性への影響を最小化する立地選定(ゾーニング)を強く推奨しています。

特に、施工中だけでなく維持管理や廃棄段階までを見据えた適切な管理を求めており、環境トラブルを未然に防ぐための具体的な「チェックリスト」が示されているのが特徴です。
三笠市や富津市の事例が示す通り、今や法令遵守は最低限のラインに過ぎません。2027年度の補助金廃止を見据えた「自立化フェーズ」において、こうした政府ガイドラインの厳格な順守こそが、金融機関の信頼を勝ち取り、事業を継続させるための絶対的な生命線となるといっても過言ではないでしょう。