メガソーラー価格上乗せ2027年度廃止へ:事業者と金融機関が備えるべき「補助金なし」の真剣勝負
メガソーラー価格上乗せ2027年度廃止へ:事業者と金融機関が備えるべき「補助金なし」の真剣勝負
政府・自民党は、地上設置型の事業用太陽光発電(メガソーラー)について、新規案件に対する売電価格への上乗せ補助を2027年度から廃止する方向で調整を固めたと複数のメディアが伝えています。
報道によれば、今回の動きは自民党の経済産業部会と環境部会が合同で開いた会議で議論され、政府に対する提言として整理されたものです。会議の冒頭では、「メガソーラー支援はすでに制度としての役割を終えているのではないか」との問題提起がなされ、今後は新規認定や支援の在り方を見直すべきだとの認識が共有されたとされています。この点については、日本経済新聞 や TBS NEWS DIG などが具体的に報じています。
今回、見直しの対象とされているのは、地上設置型の大規模太陽光発電に対する「売電価格への上乗せ補助」です。近年、パネル価格や工事費の低下により、事業採算性が大きく改善していることから、「補助がなくても成立する事業が増えている」との判断があったようです。
一方で、環境影響への懸念も大きな背景となっています。北海道・釧路湿原国立公園周辺でのメガソーラー建設を巡り、法令違反や自然環境への影響が問題化した事例や、千葉県鴨川市で建設中の大規模太陽光発電所に関し、開発許可を得ていない山林の伐採が新たに判明したことなどが背景にあります。この点は、nippon.com(共同通信ベース) でも解説されています。

本件は、日本の再生可能エネルギー市場が「公的支援による保護フェーズ」から「市場競争原理に基づく自立フェーズ」への移行の象徴となるでしょう。この転換点は、発電事業者にとってはビジネスモデルの根本的な再構築を、金融機関にとってはプロジェクト評価手法のパラダイムシフトを迫るものです。
発電事業者:補助金依存から「LCOE(均等化発電原価)」の追求へ
これまで、多くの国内事業者はFIT(固定価格買い取り制度)やFIP制度による上乗せ補助(プレミアム)を前提に収益シミュレーションを組んできました。しかし、2027年度以降の新規案件は、完全に市場価格、あるいは需要家との直接契約に委ねられることになります。
事業者が今後注視すべきは、LCOE(Levelized Cost of Electricity)のさらなる低減です。 パネル価格の低下だけでなく、O&M(運用保守)の効率化や、最新のパワコン導入による発電効率の最大化が、そのまま純利益に直結する時代に突入します。
また、売電先を一般送配電事業者から「特定の企業(需要家)」へと切り替えるコーポレートPPA(電力購入契約)へのシフトが加速すると思われます。これについては、経済産業省の「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」などの動向が、今後の新スキームとして注目されるでしょう。
また、ESG・レピュテーションリスクなど「再エネの質」も問われてくるでしょう。 報道でも指摘されている通り、釧路湿原周辺の事例など、自然環境破壊を伴う開発は大きな批判を浴びています。金融機関は、赤道原則(Equator Principles)に準じた環境アセスメントの有無や、地域住民との合意形成プロセスを、これまで以上に重視するようになります。この点については、日本経済新聞等が報じている「再エネ融資における環境配慮基準の厳格化」の流れと合致しています。
2027年度というタイムラインは、準備期間として決して長くはありません。 支援打ち切りは一見逆風ですが、裏を返せば、太陽光発電が「自立した基幹電源」として認められるための通過儀礼でもあります。
補助金に頼らずとも、優れた立地選定、高度な運用技術、そして需要家との強固な信頼関係を持つプレイヤーだけが生き残る「質の時代」が到来すると言えるでしょう。