資源エネルギー庁は2026年7月14日、第4回電力安定供給ワーキンググループを開き、容量市場のメインオークション後に判明する供給力不足に備え、「追加供給力」を中長期的に確保する新たな枠組みを示しました。データセンターや半導体工場の新増設、脱炭素化に伴う電化で需要の上振れが見込まれる一方、老朽火力の休廃止が進みます。実需給4年前の容量市場だけでは捉え切れない不確実性を、より直前の需要・供給見通しで補うことが今回の制度検討の中心です。
出典:第4回電力安定供給ワーキンググループ 資料3「今後の供給力確保について」p.14
メインオークション後に必要量を毎年度判定
事務局案では、実需給4年前のメインオークション結果を出発点に、毎年の供給計画、春の需給検証を順次反映し、実需給3年前の夏ごろを念頭に追加調達の要否を判断します。従来の追加供給力対策は、猛暑や電源トラブルなど直近の需給逼迫に対応する色彩が強いものでした。新案は、一時的な緊急対策ではなく、需要増や電源退出の可能性を定期的に点検し、不足が見えれば早めに供給力を確保する常設的な仕組みへ転換する考え方です。
容量市場では2024~2029年度向けに累計約6億7,000万kWの火力が約定した一方、約679万kWが退出し、非落札・未応札の電源も相当量に上ると整理されました。新設電源の建設には長期間を要するため、2030年度ごろまでの不足には、休廃止予定電源の維持・再稼働、補修、デマンドレスポンスなど、比較的短いリードタイムで使える資源が中心になります。2031年度以降は、新設・リプレースの進展を見ながら、容量市場や予備電源制度との役割分担を組み直す方針です。
出典:同資料 p.16。まず予備率3%を確保し、5%に向け最大限調達する考え方
予備率3%を最低線、5%を目標に
調達量については、安定供給上最低限必要な予備率3%をまず確保し、需給注意報の基準に相当する5%に向けて最大限積み増す案が示されました。5%まで確保できない場合でも、不足分を機械的に全量調達するのではなく、追加調達の費用、需要見通しの確度、電源の実現可能性を踏まえて判断します。需要の上振れを早期に織り込める一方、予測誤差に対して過大な設備を抱えれば、その費用は容量拠出金や託送料金、最終的には電気料金へ波及し得ます。供給信頼度を高める便益と、需要家負担の均衡が制度設計の核心になります。
単年度から複数年度へ、老朽電源維持の予見性を高める
発電事業者からは、大規模修繕や部品調達、人員・サプライチェーンの維持には、単年度の収入見通しだけでは投資判断が難しいとの課題が示されています。事務局は、追加供給力を複数年度にわたって確保できる契約を検討する方向を提示しました。複数年契約は休廃止予定電源の維持に予見性を与えますが、需要が想定を下回った場合に不要な費用を固定化するリスクもあります。途中退出、性能確認、他市場収入との精算、二重回収の防止といった条件設計が欠かせません。
出典:同資料 p.18。複数年度にわたる供給力確保のイメージ
制度の重複を避けられるかが焦点
会合を報じた業界紙や専門解説では、追加供給力を早期・複数年で確保する方向を評価する一方、容量市場、予備電源、長期脱炭素電源オークション、短期の追加公募が併存し、制度が複雑化することへの問題意識も示されています。追加制度を新設するのではなく、容量市場のメインオークション自体に複数年契約を組み込むべきだとの論点もあります。各制度が同じ電源の固定費を重ねて支えることがないよう、対象電源、契約期間、費用回収、リクワイアメントを明確に切り分ける必要があります。
脱炭素政策との整合も重要です。供給力不足を理由に老朽火力を長期間固定すれば、排出削減や新規脱炭素電源への投資を遅らせる可能性があります。一方、代替電源が整う前に既存火力が退出すれば、供給信頼度が損なわれます。したがって、追加供給力は移行期の安全網として期限と退出条件を明確にし、新設・リプレース、DR、蓄電池などへの投資シグナルを阻害しない設計が求められます。
今後は、追加供給力を判断する時期、3~5%の調達基準、複数年契約の年数、既存制度との統合方法が具体化されます。需要予測の更新と電源開発の進捗を毎年度検証し、必要量だけを競争的に確保できるかが、安定供給と電力システムコストを両立させる鍵となります。