LBMとは何か
LBM(Location-based Method、ロケーション基準手法)は、企業が購入・使用した電気、蒸気、熱、冷熱に伴うスコープ2排出量を、消費地点につながる電力系統の平均排出係数で算定する方法です。基本式は「電力使用量(kWh)×系統平均排出係数(kg-CO2e/kWh)」で、再エネ証書、非化石証書、小売契約、PPAの有無とは切り離し、地域系統の平均的な排出状況を示します。契約した電力商品や証書を反映するMBM(マーケット基準手法)とは役割が異なり、需要増減に対応する発電所の排出を測る限界排出係数とも別の考え方です。
世界と日本で定着した二元報告
2015年のGHGプロトコル「Scope 2 Guidance」は、電力商品や供給者を選べる市場ではLBMとMBMの二元報告を求めています。GHGプロトコルは世界で最も広く使われる企業GHG算定基準で、2023年にはCDPへ回答したS&P500企業の97%が利用しました。日本でも経済産業省のガイダンスが二元報告を明示し、CDP、SBTi、RE100などへの対応の算定基盤となっています。海外では米国環境保護庁(EPA)のeGRIDやIEAの国別係数などが使われ、IEAは2026年4月28日、最大1時間単位の電力部門CO2強度を示す「Real-Time Emissions Factors」を公開しました。(GHGプロトコル)
年平均・全国平均では見えない課題
従来のLBMは国全体・年平均の係数でも算定できるため、昼間の太陽光余剰、夕方の火力発電増加、地域間連系線を通じた輸入電力、蓄電池の充放電といった差を平均化してしまいます。改定案は、消費時点と地点に物理的に供給される発電を反映し、空間はローカルな系統区域、運用系統、広域・国の順、時間は1時間、月、年の順に精緻な係数を優先する考えです。日本は複数の同期系統で構成される国の例に挙げられ、全国一律の係数を最上位に置かない方向が示されました。一方、時間別メーターデータ、無料で信頼できる排出係数、IT連携、内部統制、第三者保証の整備には費用と人材が必要です。
今後は「どこで、いつ使ったか」が重要に
2025年10月から2026年1月のパブリックコンサルテーションには、約1,400件の回答が寄せられました。改定案では、入手可能な範囲で最も精緻な係数と活動量を使い、実測の時間値がなければロードプロファイルによる推計も認める方向です。ただし、これはまだ確定基準ではありません。改定版は当初2027年後半の公表が想定されましたが、ISOとの連携に伴い工程延長が必要と事務局が説明しており、時期は流動的です。企業は現行算定を続けながら、拠点別の系統エリア、1時間単位に集約できる使用量、係数の出典と版管理を整える必要があります。製造業、データセンター、小売、物流では、立地と稼働時間の違いが取引先からの評価や再エネ調達の設計に影響しやすくなります。(GHGプロトコル)
【参考】GHG Protocol「Scope 2 Guidance」
【参考】GHG Protocol「Scope 2 Public Consultation」
【参考】GHG Protocol「Scope 2 TWG Meeting 22」
【参考】経済産業省「スコープ2ガイダンス・パブリックコンサルテーション資料の解説」
【参考】経済産業省「国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス」
【参考】IEA「Real-Time Emissions Factors」