東京23区中古マンション価格、2年2カ月ぶり下落 「インフレ対抗」の過度なローン組むパワーカップルに潜むリスク

東京23区中古マンション価格、2年2カ月ぶり下落 「インフレ対抗」の過度なローン組むパワーカップルに潜むリスク

東京カンテイは、2026年7月23日、2026年6月時点における首都圏の中古分譲マンション価格の推移に関する集計結果を発表しました。東京23区の平均希望売り出し価格は、専有面積70平方メートルあたり1億2741万円となり、前月比0.8%安と26カ月ぶりに下落へ転じました。

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特に相場を牽引してきた都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)の平均価格は前月比1.3%安の1億8512万円となり、2カ月連続で価格調整が進んでいます。背景には、夫婦ともに高年収である「パワーカップル」(世帯年収1400万円程度)の現実的な購入限界水準(1億1000万〜1億2000万円)を価格帯が完全に超過したことがあります。さらに、日本銀行の金融政策変更に伴う金利上昇を受け、利回りの圧迫や短期転売益の減少を懸念した投資家や富裕層が購入を手控える動きも重なりました。都心6区で直近3カ月に値下げを行った物件割合は50.9%に達し、リーマン・ショック後の2008年12月以来の過半数を記録しています。流通在庫も5093戸と初の5000戸超えを記録し、これまで相場を引き上げてきた「強気のチャレンジ価格」が崩壊しつつある実態が浮き彫りとなっています。

1億8000万円超の都心相場と「インフレ見越し」の過度なレバレッジリスク

一方で、今後の市場は単純な下落局面にとどまらず、上昇要因と下落要因が激しく交錯する「予断を許さないフェーズ」に突入しています。資材高や人件費高騰による新築マンションの供給価格高止まり、都市再開発に伴う地価上昇、さらには円安や中東情勢を受けたインフレ圧力は、依然として不動産価格の下値を強く支える要因です。こうした状況下で実需層の間に広がっているのが、「今買わなければさらに高騰して永久に手が届かなくなる」という焦りと、「将来的なインフレによって実質的なローン負担は目減りするはずだ」という強い期待感です。

この期待を背景に、あえて年収の8〜10倍に達する過大なペアローンを組み、1億円超の物件購入という「勝負」に出る30代・40代のパワーカップルが増加傾向にあります。しかし、この戦略には極めて深刻な構造的リスクが潜んでいます。まず最大の懸念は、生活コスト全般が上昇する一方で実質賃金の伸びが追いつかないスタグフレーションのリスクです。返済負担率を限界まで引き上げた状態では、家計の余白が完全に消失します。

さらに、変動金利の上昇による複利的なダメージも無視できません。仮に適用金利が1%上昇するだけで、毎月の返済額は数万円単位で増加し、未払利息の発生や元金返済の遅延リスクに直面します。ペアローンは夫婦双方の「向こう30年間の無休職・減給なし」を前提としたきわめて脆弱な資金計画であり、どちらか一方の収入減やライフイベントによって一気に返済破綻へ追い込まれる危険性を孕んでいます。

選別の時代を迎えた中古市場で実需層が採るべき現実的戦略

加えて注意すべきは、購入した物件が「売りたい時に売れない」含み損リスクです。東京カンテイの分析によると、都心部の8000万〜2億円程度の物件のうち、希少性の低い標準的な住戸から価格調整が先行しています。万が一の売却時に「市場価格<ローン残高」となるオーバーローン状態に陥った場合、自己資金を補填しなければ売却すらできない事態に陥ります。住宅購入を「インフレに乗じた資産運用」と同一視する姿勢は極めて危険です。

一方で、都心以外の城南・城西6区は前月比1.1%高の1億794万円、城北・城東11区は0.5%高の8338万円と堅調な推移を見せています。都心の高騰についていけなくなった実需層が実効性の高い周辺エリアへと流入しており、二極化が一段と鮮明化しています。今後の中古マンション市場では、「買えば上がる」という一括りの上昇神話は終わりを告げ、物件ごとの資産性と居住価値が見極められる選別の時代に入ったとしています。

30代・40代の実需層が取るべき現実的な選択肢は、過度なレバレッジによる都心高額物件への突撃を避け、実需で支えられた周辺エリアへ視野を広げることです。また、在庫が積み上がり買い手優位へとシフトしつつある市場環境を活用し、周辺相場に基づいた冷徹な価格交渉を行うことが求められます。金利上昇局面においては、将来的に金利が1〜2%上昇した場合でも家計が破綻しないストレステストを行い、長期的な住み心地とリスク管理を最優先した資金計画を徹底することが不可欠と言えます。

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