Scope 3とは何か
Scope 3は、企業自身の燃料使用などによるScope 1、購入電力などによるScope 2を除く、事業活動に関連した間接排出です。GHGプロトコルは、上流の「購入した製品・サービス」「資本財」「輸送・配送」など8カテゴリーと、下流の「販売製品の加工・使用・廃棄」「フランチャイズ」「投資」など7カテゴリーの計15カテゴリーに区分しています。算定は活動量に排出係数を乗じることを基本とし、サプライヤー固有法、ハイブリッド法、平均データ法、支出額法などを使い分けます。自社工場だけでなく、原材料、物流、顧客による製品使用、金融ポートフォリオまで含め、バリューチェーン全体の排出構造を捉える仕組みです。(Ministry of the Environment Japan)
世界と日本で開示基盤に
2011年に公表されたScope 3基準は、企業の国際的な排出量開示の基盤となっています。IFRS S2は全15カテゴリーを検討し、関連性と重要性を踏まえて、企業のバリューチェーンに含めるカテゴリーを測定・開示する考え方を採用しています。日本では金融庁が2026年2月、SSBJ基準を法定開示に適用する制度を整備しました。東証プライム市場の平均時価総額3兆円以上の企業は2027年3月期から、1兆円以上の企業は原則2028年3月期から段階的な対象となります。Scope 3の推計過程と社内手続きを合理的な範囲で具体的に記載した場合、虚偽記載等の責任に関するセーフハーバーも設けられました。(IFRS財団)
改定の焦点はデータ品質と算定境界
GHGプロトコルが2026年3月に公表した改定作業の進捗資料では、データ品質、算定境界、カテゴリー15「投資」、新たなカテゴリー16「その他のバリューチェーン活動」が主要論点です。草案では、データの種類や具体性に応じて排出量を区分し、検証状況を分けて開示することや、算定が求められるScope 3排出量の少なくとも95%を計上し、除外を累計5%以内に抑える案が示されています。さらに、カテゴリー10「販売した製品の加工」、カテゴリー11「販売した製品の使用」に加え、再生材、中古品、廃棄物利用など循環経済の扱いも検討中です。工場別・製品別データの収集負担、機密情報、配賦方法、原単位の比較可能性が課題になります。
Scope 2改定も取引先のScope 3に波及
今後は、購入量や支出額だけでなく、サプライヤー、工場、製品、製造時期にひも付いた一次データの比率と品質が重視されます。カテゴリー1のハイブリッド法は、供給企業から製品に配賦したScope 1・2データを収集する手法です。このため、Scope 2のMBM改定で時間一致、供給可能性、電源属性の扱いが変われば、買い手の「購入した製品・サービス」の排出原単位にも波及する可能性があります。ただし、Scope 3への具体的な反映方法はまだ確定していません。企業には、原単位の年度・地域、LBMとMBMの別、配賦根拠、第三者検証まで追跡できるデータ設計が求められます。GHGプロトコルとISOによる製品レベル算定基準の共同開発も進んでおり、Scope 3は調達条件や製品設計、取引先選定を左右する実務データへ変わりつつあります。
【参考】GHG Protocol「Corporate Value Chain(Scope 3)Standard」
【参考】GHG Protocol「Scope 3 Standard Revisions:Phase 1 Progress Update」
【参考】GHG Protocol「Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions」
【参考】GHG Protocol「Scope 3 Phase 2 TWG Meeting #13」
【参考】GHG Protocol「Scope 2 Public Consultation」
【参考】GHG Protocol「ISOとの製品レベルGHG算定基準の共同開発」
【参考】環境省「Scope3排出量とは」
【参考】金融庁「サステナビリティ開示基準の適用に向けた内閣府令等の公布」
【参考】IFRS Foundation「IFRS S1・S2 Transition Implementation Group」