水の位置エネルギーを電気に変換
水力発電は、高所の水の位置エネルギーで水車と発電機を回す再生可能エネルギーです。一般水力は流れ込み式、調整池式、貯水池式に分かれ、後二者は需要に応じて出力を動かせます。貯水があれば、太陽光や風力より短時間の変動や予測誤差が小さく、運転計画に沿いやすいと考えられますが、渇水や長期的な降雨変動には影響されます。揚水発電は上下二つの貯水池を使い、余剰電力で水をくみ上げ、必要時に落水発電する「水の蓄電システム」です。(TEPCO)
世界で14%、日本は既存設備が主役
IEAによると、世界の水力発電量は2024年に約4,500TWhで、総発電量の14%を占めました。日本は2023年度末時点で揚水を含む設備容量が5,006万kW、2023年度の発電電力量に占める水力の比率は7.6%です。(IEA) EUには揚水発電容量が46GWあり、ポルトガルのタメガ水力複合施設は1,158MW、貯蔵容量40GWhを備え、2022~2024年に運転を開始しました。ギリシャでも発電680MW、揚水730MWのアンフィロヒア計画が政策支援を受けて進み、欧州では新規地点を含む大型案件が続いています。(Energy) 一方、日本では大型適地の大半を1960年代までに開発し、揚水容量も2015年以降ほぼ横ばいで、稼働増に伴う点検停止の増加も報告されています。(エネーチョウ)
蓄電池との役割分担、新設と人材が壁
リチウムイオン蓄電池は秒単位で応答し、モジュールを増設できるため、周波数調整や1~8時間程度の短時間シフトに適します。これに対し揚水は大規模土木が必要な一方、GW級の出力と大容量貯蔵を組み合わせやすく、長時間の需給調整に向きます。(IEA) 新しいダムには、水没地を含む大規模な土地利用、長期工事、環境影響評価、河川利用や地域合意が必要です。このため日本では、一般水力、揚水ともリプレース(更新)とリパワリング(増出力)の比重が高くなります。J-POWERの佐久間発電所では4台を2期に分け、2台の停止期間を約48か月ずつ設けて更新し、最大使用水量を306m³/sから350m³/sへ増やす計画です。(エネーチョウ) ダム水路主任技術者は第1種で5~12年、第2種で3~10年の実務経験が基本です。資源エネルギー庁資料では免状交付件数も1997年度をピークに減少傾向にあり、旧一般電気事業者やJ-POWER、メーカー、建設会社が蓄積した設計・施工・保守能力の継承も課題です。(安全情報ポータル)
更新と高度化が化石燃料依存を低減
今後の日本では、新規大型ダムより、既設設備の高効率水車への更新、出力増強、可変速揚水、流入量予測の高度化、発電設備のない既存ダムへの水車追加が成長分野になります。(IEA) 電力広域的運営推進機関(OCCTO)の2050年モデルケースの一例では、既設大水力を含む約20%のリパワリングを想定する一方、水力容量の増加は2019年度比200万kWにとどまります。(オクタ) 蓄電池が高速・短時間、揚水が大容量・長時間、貯水池式などの一般水力が安定供給と出力追従を担えば、太陽光・風力の出力制御抑制に寄与し、LNG・石炭火力による調整運転の一部を代替し得ます。人材育成と長期投資が、系統安定化と化石燃料依存の低減を両立する鍵になります。(IEA)
【参考】資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラル達成に向けた水力発電活用拡大の方向性」
【参考】資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」
【参考】電力広域的運営推進機関「将来の電力需給シナリオに関する検討会 報告書概要版」
【参考】電力広域的運営推進機関「技術検討会社の将来想定を踏まえた方向性」
【参考】IEA「Hydropower is still ‘the forgotten giant of electricity’」
【参考】IEA「Batteries and Secure Energy Transitions」
【参考】欧州委員会「Supercharging the transition with energy storage solutions」
【参考】Iberdrola「Tâmega giga battery」
【参考】TERNA ENERGY「Amfilochia Pumped Storage」
【参考】経済産業省「ダム水路主任技術者免状の交付申請について」
【参考】Wikipedia「水力発電」