地域ごとの電力の「炭素強度」をリアルタイムで可視化
英国の送電系統運用機関であるNational Energy System Operator(NESO)は、全国の送配電網ごとの電力の炭素強度(Carbon Intensity)をリアルタイムで公表しています。炭素強度とは、消費された電力1kWh当たりに排出されるCO₂量(gCO₂/kWh)を示す指標で、発電構成や送電状況を反映したものです。
2026年7月20日の公表データでは、英国全体の平均炭素強度は124gCO₂/kWhとなり、低炭素電源比率は52%でした。一方、スコットランド北部では炭素強度が実質ゼロとなり、風力発電を中心とした電力供給により、ほぼゼロエミッションの電力が実現していることが示されました。
風力・太陽光・蓄電池が低炭素電力を支える
同日の電源構成では、輸入電力が24.3%と最大となり、天然ガス20.7%、太陽光15.2%、風力14.7%、原子力12.7%、バイオマス8.2%、水力1.3%となりました。
スコットランドでは風況に恵まれ、大規模陸上風力や洋上風力の発電量が大きく増加します。さらに英国では太陽光発電や系統用蓄電池も急速に導入されており、天候条件が良い時間帯には再生可能エネルギーが電力需要の大半を賄うことも珍しくありません。蓄電池は余剰電力を吸収し、需給調整を担うことで、こうした低炭素電源中心の運用を支える重要な役割を果たしています。
GHG Scope2改革の先行モデルとなる可能性
現在、GHGプロトコルではScope2排出量の算定方法、とりわけロケーションベース方式(Location-based Method)の見直しが議論されています。従来は国や地域単位の年間平均排出係数が用いられることが一般的でしたが、再生可能エネルギーの大量導入に伴い、時間帯や地域による炭素強度の違いを反映すべきとの議論が進んでいます。
NESOが公開する地域別・時間別の炭素強度データは、こうした制度改革を先取りする実例と言えます。今後、企業が電力調達やデータセンター運営を評価する際にも、単に再エネを購入するだけでなく、「いつ」「どこで」消費した電力なのかが重視される可能性があります。英国で進む情報公開は、時間・地域価値を考慮した新たな電力市場やアワリーマッチングの方向性を示す先行事例として注目されます。
出典:National Energy System Operator(NESO) Carbon Intensity