資源エネルギー庁は、2026年7月7日、第1回総合資源エネルギー調査会・電力事業環境整備ワーキンググループを開催し、2026年度に本格稼働した排出量取引制度(GX-ETS)の費用・収益を卸電力取引へどう反映するかについて、「事業者単位」と「発電ユニット単位」の二つの考え方を提示しました。今回が新設ワーキンググループの初会合で、制度案の提示と論点整理が中心です。 (経済産業省)
電力小売全面自由化から約10年が経過し、新電力の販売電力量シェアは2026年3月時点で全体21.9%、低圧26.1%、高圧25.3%、特別高圧11.2%となりました。小売電気事業者は約800者に達する一方、供給実績が確認できない事業者は約250者あります。JEPXの取引量は総需要の約37%まで拡大しており、炭素コストの卸価格への反映方法は発電・小売双方の収益に直結します。(経済産業省)
GX-ETSの費用・収益、二つの算定単位を提示
GX-ETSは2027年度から排出枠の割当てと市場取引を開始する予定です。2032年度まではベンチマーク方式による無償割当てを行う第2フェーズ、2033年度以降は発電部門に有償オークションを段階的に導入する第3フェーズとなります。義務対象は、前年度までの3カ年度平均の直接CO2排出量が年間10万トン以上の事業者です。(経済産業省)
「考え方1」は、事業者全体の排出量と無償割当量の差を基に費用・収益を認識する方式です。制度上の義務主体や会計処理と整合しやすい一方、発電ユニットごとの限界費用を基準とする卸取引との対応が課題になります。「考え方2」は、各ユニットの排出原単位とベンチマーク水準との差から認識する方式で、卸取引実務との整合性は高いものの、事業者単位で排出枠を割り当てる制度とのずれが生じます。(経済産業省)
委員からは、排出係数の高い電源ほど環境コストを価格へ反映でき、第3フェーズへの移行にもつながるとして、発電ユニット単位を支持する意見が複数出ました。一方、第2フェーズの制度趣旨や会計上の整理からは事業者単位が適切との指摘もありました。無償枠がある場合のカーボンプライス相当額の入札価格への反映、排出年度と翌年度の義務履行との時間差、経過措置料金や各卸市場との整合は結論が出ず、継続審議となりました。(YouTube)
沖縄、経過措置料金の解除基準を初めて満たす蓋然性
低圧の経過措置料金については、沖縄エリアで2026年3月時点にシェア5%以上の競争者が2者存在し、指定解除基準を満たす蓋然性があるとの確認結果が報告されました。2019年に解除基準が定められて以降、こうした評価は初めてです。ただし解除は決定しておらず、電力・ガス取引監視等委員会が競争者の独立性、シェアの継続性、卸調達条件を精査し、最終的には経済産業大臣が判断します。(経済産業省)
委員からは「シェア5%以上の2者」は必要条件であって十分条件ではないとの意見や、本土系統と連系していない沖縄固有の調達環境を踏まえ、競争の持続性を慎重に確認すべきとの指摘が出ました。一方、解除を見据え、一般送配電事業者が担う低圧の最終保障供給など、需要家保護のセーフティネットを早期に整えるよう求める声もありました。(YouTube)
ベースロード市場は値差清算4%、長期脱炭素電源に新算定案
ベースロード市場では、2026年度オークションで約定する2027年度受渡しの1年商品と、2027・2028年度受渡しの2年商品について、エリア間値差の補填・徴収を行う値差清算を継続し、閾値を従来と同じ算定方法による4%とする案が示されました。間接送電権の購入価格を事前に適切に見積もり、入札価格へ織り込むことが難しいためです。(経済産業省)
長期脱炭素電源オークションの落札電源については、他市場収益の約9割を還付する仕組みを踏まえ、通常の発電コストをそのまま供出上限価格に積み上げず、「市場価格相当額」をコストとみなして他電源と平均する案が提示されました。JEPXは、会合で了解が得られれば4%継続に対応する考えを示した一方、値差を市場参加者のリスクとすべきか、中長期取引市場の創設後もベースロード市場を存続させるかは改めて議論すべきだと指摘しました。制度の将来像は継続審議です。(ENERGY ADVISOR)
発電・小売事業者は炭素コストの認識方法を再点検
GX-ETSの採用方式によって、発電事業者の入札価格、排出枠売買の収益認識、小売事業者の調達原価と料金転嫁の時期が変わる可能性があります。共同出資発電所、SPC、自家発余剰電力では、排出義務を負う主体と卸市場で販売する主体が一致しない場合があるため、PPAや卸売契約で炭素費用と排出枠収益の帰属を明確にする必要があります。金融機関も、二つの制度案によるキャッシュフロー差を事業性評価へ織り込むことになります。(ENERGY ADVISOR)
電力データ集約システムでは、災害時の30分値データを48行から1日1行へ変換し、需要家名や住所による条件検索と簡易グラフ化を可能にする「STEP5」の改修案も示されました。自治体利用に必要な改修費は、監視等委員会の審査後に一般送配電事業者の収入上限へ反映し、地図表示など個別の利便機能は原則として利用者負担としています。(経済産業省)
GX-ETSの具体的な取扱い、沖縄の経過措置料金解除、ベースロード市場の中長期的な位置付けはいずれも未決定です。具体案の確定時期やパブリックコメントの日程は今回示されておらず、次回以降、制度間の整合性や需要家への価格転嫁を詰めることになります。(経済産業省)
出典
第1回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力事業環境整備ワーキンググループ