【洋上風力コスト】経産省・国交省、30円/kWhまでを案件形成の目安に 条件優良海域を優先

2026年7月14日、経済産業省・資源エネルギー庁と国土交通省は、第44回「洋上風力促進ワーキンググループ」と第49回「洋上風力促進小委員会」の合同会議を開催しました。事務局は、資材高、円安、金利上昇によって国内外の洋上風力事業の採算性が悪化している現状を整理し、今後は発電コストが「30円/kWh程度以下」と見込める海域を優先して案件形成を進める考え方を提示しました。この30円は公募価格の上限や消費者向け電気料金ではなく、国が案件形成の優先順位を判断する際の目安です。

発電コスト30円/kWh程度以下を目安とする考え方
発電コスト30円/kWh程度以下を目安とする考え方

出典:第44回洋上風力促進WG合同会議 資料1「洋上風力を取り巻く環境と当面の案件形成の考え方」p.6

30円は落札上限ではなく、案件形成の選別基準

資料では、2023年時点の新設洋上風力の発電コストを30.9円/kWhと推計しています。日本風力発電協会(JWPA)が着床式・モノパイル方式の5案件を基に試算した事業費も30円台半ばでした。後者は割引率3%、事業内部収益率(P-IRR)6%を前提とし、陸上送電線や系統接続費用も含むため、個別海域の風況、水深、離岸距離、港湾条件、系統増強の程度によって実際のコストは大きく変わります。

一方、資料に示されたLNG火力、原子力、事業用太陽光などのコストや、JEPXスポット市場価格はおおむね10円台です。洋上風力を無条件に大量導入すれば国民負担が膨らみかねないため、まず競争力を持ち得る海域から事業化するというのが今回の提案です。「30円で全案件を落札させる」という制度変更ではなく、案件形成前の入口段階でコスト効率を重視する政策運用と理解する必要があります。

資本コスト指数は2年余りで19%上昇

事務局資料によると、2024年1月から2026年3月までに、洋上風力の資本費に関する価格指数は19%上昇しました。為替は2024年1月から2026年5月までに対ドルで9%、対ユーロで16%円安方向に動き、20年国債利回りは150%上昇。建設工事費は9%、送電ケーブル価格は67%上昇しています。設備構成では風車が資本費の55%、建設工事が32%を占め、基礎6%、アレイ・輸出ケーブル5%が続きます。輸入比率の高い風車やケーブルの価格上昇に円安と資金調達費の増加が重なり、採算を圧迫している構図です。

洋上風力の資本費を押し上げる物価・為替・金利
洋上風力の資本費を押し上げる物価・為替・金利

出典:同資料 p.3

海域選定と国内産業基盤を一体で進める

今後は、良好な風況に加え、浅い水深、港湾への近さ、施工難度、送電網への接続条件などを総合評価し、低コスト化が期待できる海域を優先する方向です。ただし、海域指定時点の推計には不確実性があります。資材価格や金利、サプライチェーンの状況を継続的に監視し、30円の目安自体も必要に応じて見直すことが重要になります。

コスト低減には国内サプライチェーンの形成も欠かせません。官民は2040年までに国内調達比率65%を目標としており、資料ではベスタスが2029年までのナセル組立、2039年までの本格製造を展望していることも紹介されました。ただし、製造拠点への投資は継続的な受注量が前提です。案件数を絞り過ぎれば量産効果や国内投資が進まず、逆に案件を急拡大すれば高コスト案件を抱え込むという難しさがあります。

浮体式は実証から商用化へ接続

深い海域が多い日本では、着床式だけでなく浮体式洋上風力の産業化も重要です。ロードマップ案は、2027~2032年に深海・厳しい海象条件での技術実証を進め、海外案件への参画も通じて知見を蓄積する方針を示しました。さらに、商用化への橋渡しとして300MW程度の中規模実証を検討し、その成果を将来の大規模案件へつなげる構想です。

浮体式洋上風力の技術開発・実証ロードマップ
浮体式洋上風力の技術開発・実証ロードマップ

出典:同資料 p.15

ネット上では「30円」の意味を巡り議論

会合後のネット上では、30円/kWhを高過ぎるとする意見と、現在の資材・金融環境では厳しい水準だとする意見が見られました。また、同時期に議論された長期脱炭素電源オークションの募集上限価格と混同し、「洋上風力の入札上限が30円になった」と受け止める例もあります。しかし両者は目的も単位も異なります。今回の30円は、促進区域候補の形成をどこから進めるかという行政判断の基準であり、落札価格を直接決めるものではありません。

今後の焦点は、政府が海域ごとのコストをどの方法で比較し、系統増強や港湾整備、漁業調整などの費用をどこまで評価へ織り込むかです。コスト抑制、エネルギー安全保障、地域共生、国内産業育成を同時に成立させられるかが、洋上風力政策の成否を左右します。

出典:経済産業省・第44回洋上風力促進ワーキンググループ合同会議(議事次第・配布資料・公式動画)

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