環境省は、2026年7月21日、投資家や金融機関が投融資判断に自然資本への依存と影響を組み込むための「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン(案)」を発表しました。意見募集は8月9日までです。対象は機関投資家、大手・地域金融機関、運用会社、サービス事業者などで、活用は任意です。 (環境省)
背景には、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復へ転じる「ネイチャーポジティブ」があります。国際目標では自然資本に年間少なくとも2,000億米ドルを動員する方針が掲げられました。日本のTNFD Adoptersは2026年7月14日時点で233社と世界最多ですが、自然関連リスクは場所や生態系、供給網ごとに異なり、温室効果ガスのような単一指標では捉えにくいため、金融実務はなお初期段階です。
依存・影響を地域と供給網で評価
ガイドライン案は、ネイチャーファイナンスを「ネイチャーポジティブ目標に貢献し、その実現を支援するファイナンス」と定義しました。測定可能な正の成果を狙う「ネイチャーポジティブファイナンス」と、通常の融資・投資判断に自然資本の視点を組み込む「ネイチャー主流化ファイナンス」の2類型を示しています。
評価では、企業の自然への「依存」と「インパクト」に加え、事業拠点の地域性、国内外のバリューチェーン、先住民や地域社会との合意形成を重視します。負の影響は「回避、最小化、復元」の順で抑え、オフセットは最後の手段と位置付けました。金融機関には、ENCOREなどによるリスクの可視化や、TNFDに沿った開示、投融資先との対話であるエンゲージメントを促します。
融資条件と企業戦略に波及
実務面では、脆弱な生態系への影響が大きい案件のデューデリジェンスを強化し、緩和策を融資条件に盛り込む例を示しました。自然資本KPIに連動するサステナビリティ・リンク・ローン、インパクトファイナンス、自然資本ファンド、Nature Techへの出資も想定します。
企業には、事業拠点や原材料調達先の位置情報、自然関連KPI、取締役会の監督体制、地域社会との対話を説明する力が求められます。任意指針ですが、銀行の審査や投資家のエンゲージメントに浸透すれば、資金調達条件や資本コストを左右する可能性があります。課題はデータ不足と評価コストです。環境省は段階的な対応を認め、国際動向や市場の成熟に応じて改訂するとしています。