【コーポレートスタンダード】GHGプロトコル改定議論、Scope 1の5区分開示案に支持 土地由来排出を追加、保証は賛否拮抗

GHGプロトコルは、2026年6月30日、コーポレートスタンダード改定を検討するテクニカルワーキンググループ(TWG)第6回会合を開催し、議論内容を発表しました。会合では、Scope 1の内訳開示、対象温室効果ガス、地球温暖化係数(GWP)、航空の非CO2効果、GHG削減目標、検証・保証を審議しました。今回示されたのは各サブグループの予備的な提案と参考投票であり、改定基準としての正式決定ではありません。(GHGプロトコル)

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Scope 1を5区分、土地由来排出を新設

事務局案は、Scope 1を固定燃焼、移動燃焼、プロセス排出、漏えい排出、土地由来排出の5区分で報告することを必須化する内容です。参考投票では42人中31人が支持し、10人が反対しました。新設する「土地由来排出」には、土地利用変化、土地管理、生物由来製品などからの排出を含める考えで、41人中27人が全面支持、8人が軽微な修正付きで支持しました。(GHGプロトコル)

一方、委員からは、ISO 14064-1が区分開示を推奨にとどめていることや、ISSB、ESRSが意思決定上の有用性に応じた開示を認めていることとの整合性が問題視されました。土地由来排出についても、Land Sector and Removals Standardで用いる純排出とScope 1の総排出との接続、バイオマス由来排出の二重計上、土地関連事業者の作業負担が論点となりました。重要な土地由来排出がある企業に同基準の適用を義務づけるかは未決定で、独立基準理事会が検討する可能性があります。(GHGプロトコル)

100年GWPを維持、メタン多排出企業に20年値

UNFCCCが対象とするCO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、NF3の7群を算定対象とする現行方針は、40人中39人が支持しました。Scope 1とScope 2をガス別の実トンとCO2換算量の双方で報告する案にも、39人中33人が賛成しました。ただし、米国やEU以外ではScope 2の排出係数がCO2換算量に集約され、ガス別データを入手できない場合があるとの指摘が出ています。事務局は、総量と個別報告の関係を示す報告テンプレートを作成する方針です。(GHGプロトコル)

GWPはIPCCの100年値を必須とする案を40人全員が支持しました。加えて、重要なメタン排出を持つ組織には20年GWPによる追加計算を推奨し、別掲する案を36人が全面または修正付きで支持しました。20年値はメタンだけでなく、報告対象となる全温室効果ガスに適用する想定です。最新のIPCC評価報告書の値を推奨し、同一インベントリ、基準年、当年で可能な限り同じ版を使う案も支持を集めましたが、既存の排出係数データベースや基準年再計算との整合が課題です。(GHGプロトコル)

航空の非CO2効果、使用義務は意見分かれる

航空機の水蒸気、窒素酸化物、飛行機雲などによる追加的な放射強制力を、乗数または指数で算定する案も議論されました。使用水準については「全社に推奨」と「重要な航空排出がある企業に推奨」が各14人、「任意」が12人となり、明確な結論は出ませんでした。一方、乗数を使用したか、使用した係数、追加排出量を通常のScope 1・3とは分けて報告する案は、41人中35人が全面または修正付きで支持しました。(GHGプロトコル)

この論点は航空会社だけでなく、航空貨物や出張をScope 3に計上する企業にも関係します。ブラックカーボンなど、その他の間接的気候強制因子は任意算定とし、算定した場合は別掲する案が支持されました。ただし、報告項目が増え、データのマッピングや利用者による総量との照合が難しくなるとの懸念も示されました。(GHGプロトコル)

削減目標は支持、検証・保証は17対16

企業にGHG削減目標の設定を推奨する案は、39人中24人が全面支持、5人が修正付きで支持しました。目標を設定している企業に、その内容の報告を求める案は33人が全面または修正付きで支持しました。一方、GHGプロトコルは算定・報告基準であり、目標設定はSBTiなど外部制度に委ねるべきだとの意見や、既存制度との重複、現在の地政学的環境で企業が目標を開示するリスクも指摘されました。(GHGプロトコル)

検証・保証をコーポレートスタンダードで扱わない案への投票は、支持17人、反対16人、棄権3人とほぼ二分しました。データの信頼性を高めるため推奨または任意の規定を置くべきだとの意見に対し、ISO 14064-3やISSA 5000など既存基準との競合を避けるべきだとの主張が対立しました。事務局は独自の検証・保証基準を新設する予定はなく、ISOとの整合を今後検討する考えです。(GHGプロトコル)

事業者は排出データ基盤の再設計が課題に

事業者にとっては、Scope 1を活動区分とガス別の二方向で管理し、20年・100年GWP、使用したIPCC評価報告書、航空の非CO2効果を追跡できるデータ基盤が必要になる可能性があります。特に土地関連、メタン多排出、航空利用の大きい企業では、排出係数の調達、基準年の再計算、内部統制、保証証拠の保存まで含めた見直しが必要です。これは会合で示された各報告案から想定される実務上の影響です。(GHGプロトコル)

もっとも、今回の投票は暫定的な支持状況を示すもので、最終的な義務化を意味しません。事務局は会合後アンケートを実施するとともに、「Setting Operational/Reporting/Inventory Boundaries」と題する草案への意見を求め、以後のFull TWGで文案を詰める方針を示しました。企業は最終基準の確定を待ちながらも、現在の算定システムで活動区分別、ガス別、GWP期間別のデータを抽出できるか、早期に確認する必要があります。(GHGプロトコル)

出典

GHG Protocol Standards Development and Governance Repository

Corporate Standard TWG Meeting #6 プレゼンテーション資料

Corporate Standard TWG Meeting #6 議事録

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