株式会社コーセーホールディングスは、2026年7月9日、山梨県南アルプス市で国内3カ所目の生産拠点となる南アルプス工場を本格稼働し、同日に稼働式を実施したと発表しました。県産グリーン水素、県営水力発電由来のCO₂フリー電力、構内の太陽光発電を組み合わせ、地域で生み出したエネルギーを地域の製造拠点で活用する「地産地消モデル」を構築します。化粧品製造に必要な熱と電力の脱炭素化を並行して進め、製造時のCO₂排出ゼロを目指します。
2040年までに工場の熱源を100%水素へ
南アルプス工場で化粧品の製造工程に使用する熱エネルギーには、山梨県が推進する「やまなしモデルP2Gシステム」で製造されたグリーン水素を利用します。同システムは、山梨県甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイトにおいて、太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素を製造し、工場などの熱需要へ供給する仕組みです。再生可能エネルギー由来の電力を水素へ変換することで、発電量と需要の時間差を吸収しながら、電化が難しい熱需要の脱炭素化に活用できます。
グリーン水素は、利用時にCO₂を排出せず、燃焼・反応後に生じるのは水です。さらに製造に使う電力も再生可能エネルギー由来であるため、水素製造段階を含めたCO₂排出の抑制につながります。コーセーは、南アルプス工場で現在使用する化石燃料を段階的に水素へ置き換え、2040年までに同工場の熱源を100%水素へ転換する計画です。
化粧品工場では、原料の加温や混合、洗浄などで安定した熱供給が必要になります。今回の取り組みは、電力を再エネへ切り替えるだけでなく、製造工程に残る熱需要を地域産グリーン水素で置き換える点が特徴です。水素の供給・運搬と工場側の熱利用設備を一体的に運用し、長期間をかけて化石燃料依存を減らしていく計画となります。
水力電力と太陽光を組み合わせた地産地消モデル
工場で使用する電力には、県営水力発電由来の「CO₂フリー電力」を採用します。山梨県の日照時間の長さを生かし、工場でも太陽光による自家発電を行います。地域の水資源を利用した水力発電、太陽光由来のグリーン水素、工場内の太陽光発電を組み合わせることで、単一のエネルギー源に依存せず、電力と熱の両面から脱炭素化を進めます。
コーセーによると、南アルプス工場の建設工事で使用したエネルギーのすべてを、水力発電由来のCO₂フリー電力で賄った取り組みは全国初です。工場稼働後も県産エネルギーの利用を継続し、製品の製造段階における環境負荷低減へつなげます。
南アルプス工場の敷地面積は110,763㎡、延床面積は39,280㎡で、建物は地上3階の鉄骨造です。2024年7月に着工し、2026年2月に竣工しました。投資額は380億円で、『コスメデコルテ』『雪肌精』『ONE BY KOSÉ』などのスキンケア製品を生産します。2026年6月末時点の従業員数は90人で、製造状況に応じて最大稼働時には300人を予定しています。
工場内では、物流の自動化によって省人化と作業負荷の軽減を図るほか、熟練者の製造技術をデジタル化し、他の従業員が再現できる生産体制を整えます。過酷な作業の機械化やアシスト設備も導入し、安全性、生産効率、品質の安定を同時に高める方針です。
水資源を軸にサステナブルな生産拠点へ
コーセーは「工場探しは水源探し」との考えに基づき、化粧品製造に欠かせない清澄な水に恵まれた山梨県を新たな生産拠点に選びました。工場では水資源を製造に活用するだけでなく、工場内での水循環にも取り組みます。山梨大学とは、工場敷地内で採取される水の由来について共同研究を実施しており、稼働式では研究成果と最新の生産ラインを公開しました。
稼働開始に合わせ、コーセーグループは水に関する環境戦略「Water, Life, Beauty」を策定・公開しました。南アルプス工場を、この戦略を具体化する生産拠点と位置付け、水資源の保全・循環とエネルギーの脱炭素化を一体的に進めます。
同工場で最初に生産された製品は、稼働式当日の15時ごろにトラックへ積み込まれ、全国へ向けて出荷されました。コーセーは、グリーン水素、水力由来電力、太陽光発電、水循環、製造工程のデジタル化を組み合わせ、環境性能と生産能力を両立する国内の中核工場として運営していく方針です。