電気料金メニューとCO2排出量算定の厳格化:Scope2改定で何が変わるのか?

実務担当者が押さえておくべきポイント

· 排出量算定の厳格化,GHG Scope2,LBM総括,LBM

  • 2027年改訂予定のGHGプロトコルScope2ガイダンスによりCO2排出量の算定が厳格化され、電力需要家・小売電気事業者・発電者に大きな影響が出る見込みです。いち早く対策を講じるため、当社は独自に最新情報を分析し、皆様にアドバイザリー・サービスを提供しています。

よろしいですか?

はじめに

GHGプロトコルScope2改定において、電力消費に伴うCO2排出量算定の厳格化に向けた議論が進んでいます。

これまでは

CO2排出量=電力使用量 × 年間平均の排出係数

というシンプルな計算で済んでいましたが、その方法が大きく見直される可能性が高まっています。

特に重要なのが、

① ロケーション基準における時間帯・地域別排出係数の考え方

② マーケット基準におけるSSSや残余ミックスの扱いという2点です。

これらは小売電気事業者が顧客にどこまで説明責任を果たせるかという実務上の課題に直結しています。

Section image

ロケーション基準とは、電力を使用した「場所」に紐づく排出係数を使ってScope2排出量を算定する方法です。従来は、地域ごと・国ごとの年間平均排出係数を使うのが一般的でした。それを消費地と同じエリアでの、時間帯排出係数を用いる手法に改められる可能性があります。

これは、需要側の行動(昼に使う、夜に使う)そのものが排出量に影響することを意味しており、企業にとっても、小売電気事業者にとっても無視できない変化です。

2.マーケット基準も複雑化

マーケット基準は、顧客がどのような電力契約を結んでいるか、どのような電源属性を購入しているかに基づいて排出量を算定する方法です。

ここで重要になるのが、SSS(標準供給サービス)と残余ミックス(Residual Mix)の扱いです。

特に、環境価値でカバーされていない電力量に適用される残余ミックスは、平均係数より高くなるケースもあり、ここをどう説明するかが実務上の難所になっています。

3.電力会社・需要家に求められる「説明できる排出係数」

もし、このままの形で排出量算定の厳格化ルールが定められた場合、小売電気事業者は、これまで顧客への説明責任が求められるようになります。

電力需要家にとっても、自らの行動(タイムシフト)がCO2排出量の変動につながるため、やはり社会一般に対して説明責任を求められるようになります。

小売電気事業者は単に電力を安価で安定的に供給するだけでは許されず、顧客にCO2削減への行動変容を促すノウハウを提供し、その実現を支援する立場になります。

一方で、これは新しい事業機会にもつながるというポジティブな面もあります。

それが電気料金メニューの環境省により算定・開示される、年間平均排出係数を引き下げることで競争力を高めることにもつながります。

4.今後に向けて注視すべきポイント

Scope2排出量算定の高度化は、電力会社にとって負担が増える話でもありますが、見方を変えれば、価値を正しく伝えるチャンスでもあります。

時間帯別・地域別の排出係数や、透明性の高いマーケット基準での排出係数を提示できれば、顧客は自社の電力選択がどのような意味を持つのかを理解しやすくなります。

しかし、GHGプロトコル改定をめぐる国際社会での議論の行く末はまだまだ不透明で、制度の大枠や詳細の仕組みがどうなるかの見通しがつきません。

また、現在進んでいる電力システムの大変革との整合性や接合性の確保についても、まだまだ議論の途中です。

だからこそ、実務担当者の皆様におかれましては、その動向を注視し、早めに整理・対応していくことが重要になっています。