ニューヨーク州、データセンターへの電力料金引き上げを表明

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ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、2026年1月7日に行われた「2026年施政方針演説」において、データセンター運営者に対して電力使用料の増額を求める新たな方針を明らかにしました。AI(人工知能)の急速な普及に伴う電力需要の爆発的な増加が、一般家庭や中小企業の公共料金を不当に押し上げるのを防ぐとしています。

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ホークル知事は「巨大なデータセンターが送電網の対応能力を超えるペースで電気需要を押し上げ、より高い料金を負担する余裕のない勤労家庭や中小企業にコストを押し付けている」と指摘しました。その上で、雇用創出やその他の州益への貢献が限られている大規模電力使用者に対し、公平な分担金の支払いを求める考えを強調しています。

ニューヨーク州がこのような強硬策を打ち出した背景には、以下の3つの事象があります。

第一に、州の気候変動対策法(CLCPA)との衝突です。ニューヨーク州は2030年までに電力を70%再生可能エネルギーに転換する高い目標を掲げていますが、24時間稼働する巨大データセンターの電力消費はクリーンエネルギーの供給能力を上回るスピードで増加しており、目標達成への大きな障壁となっています。

第二に、化石燃料発電所の稼働延長に伴うコスト負担です。需要の急増に対応するため、本来であれば廃止予定だった古い火力発電所を稼働し続けなければならず、それに伴う排出権取引コストの上昇分が、一般消費者の電気代に転嫁されるリスクが生じています。

第三に、州への経済的還元の低さ、いわゆる「雇用のミスマッチ」への不満です。広大な土地と膨大な電力を占有する割に、稼働後の雇用創出が限定的であるデータセンターに対し、政治的な批判が強まっていました。

こうした課題を解決するために、「手頃なエネルギーとクリーンな成長法(Affordable Energy and Clean Growth Act)」の制定を図るとしています。その内容は以下の通りです。

①新料金体系の導入

雇用創出などの経済効果が限定的な「大規模電力使用者」に対し、送電網の増強や予備電源の確保にかかる費用を直接負担させる仕組みを構築します。

②オンサイト自家発電の強力な推奨

州の送電網に依存するのではなく、敷地内に小型モジュール炉(SMR)や水素発電、大規模蓄電池などの低炭素型発電設備を自ら設置することを事業者に求めます。

③接続プロセスの合理化(ファストトラック)

州の経済発展に大きく寄与するプロジェクトに対しては、現在数年を要している送電網への接続審査を優先的に迅速化するという「アメ」も用意されています。

④インフラ投資義務

地域の変電所や送電線のアップグレード費用を、データセンター事業者に直接拠出させる可能性も検討されています。

この方針に対し、テック企業側からは「ニューヨーク州がハイテク産業の誘致に対して消極的であるとの誤ったメッセージになりかねない」との懸念や反発の声も上がっています。

データセンター急増による電力逼迫問題がバージニア州やテキサス州など全米各地で顕在化しているなかで、ニューヨーク州が打ち出す「受益者負担」の枠組みを、今後の全米における標準モデル(ニューヨーク・モデル)になるよう目指すとしています。

この提案は今後、州議会での審議や、ニューヨーク州公共サービス委員会(PSC)による具体的な料金設計のフェーズへと移る見通しです。

日本では、データセンター誘致を肯定的に受け止める声が多く、金銭的インセンティブなどの優遇策が提供される中で、データセンター立地で先行する米国での逆風の動きに注視する必要があるでしょう。