報道発表:環境省ナッジ事業の結果について ~当社独自のHourly Matching特許技術を用いたEV昼充電の促進と再エネの有効活用
報道発表:環境省ナッジ事業の結果について ~当社独自のHourly Matching特許技術を用いたEV昼充電の促進と再エネの有効活用
~改訂版GHGプロトコルに採用が見込まれる再エネ(RE)アワリーマッチング手法を踏まえた当社の独自特許技術を用いて、環境省実証期間終了後に、即時商用化サービスを開始します。併せて、再エネHourly Matching研究所を設立し、今月からGHGプロトコル改訂のカーボンクレジット・再エネ電力取引へのインパクトに関する民間企業・公的機関へのアドバイザリーサービス事業を開始しました。
ナッジ実証事業について
環境省では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するとともに、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)の事務局を務めています。
昼充電ナッジ実証実験の成果について
株式会社電力シェアリング(本社:東京都品川区 代表:酒井直樹)は、環境省が令和4年度から実施している「ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」に採択され、ナッジ介入施策の有効性を実証する各種実験を行ってきており、令和8年度の実証事業終了後、速やかに同モデルを自社で商用化し社会実装を果たす予定です。
この一環として、当社は、令和5年度に、電気自動車(EV)の充電を再エネ比率の高い時間帯へシフト(「昼充電」)することを促すための予備的な実証実験を行いました。
同実験では、GHGプロトコル(Scope2)の改訂に伴い適用が予想される再エネHourly Matching手法を先取りした当社独自の特許技術を用いて、時間帯別に電力のCO2排出係数を算定し、「昼充電」による省CO2効果を定量的に分析・評価した上で、CO2排出削減量に基づいてスマートフォンのアプリのユーザー間でのランキングを表示したり、CO2排出削減量に応じた少額の金銭的インセンティブを付与したりすることで、昼充電の実施割合等が統計的有意に高まることが実証されました。
また、同じく再エネ比率の多い時間に、特定の再エネ発電所(プロシューマ)から実際に再エネ価値を購買し、走行時にCO2を排出しないゼロカーボンドライブを実現するための、再エネHourly Matching手法に基づいた当社特許技術による再エネ価値の先物取引(再エネ電力のP2P取引)の商用化実験への道筋をつけることができました。
この実証実験を通じて、GHGプロトコル(Scope2)の新基準に採用が見込まれるHourly Matchingの手法に準拠する形で、当社特許技術である、①電力消費者の昼タイムシフト価値の評価、➁再エネの時間帯毎の相対的な環境価値や、蓄電池のタイムシフト効果の評価、③Hourly Matching手法に基づく再エネ価値と電力の一体的取引など、を用いて令和6年度以降も本格的な実証実験を実施し、実証事業終了後に速やかに当社の商用事業として社会実装する予定です。
なお、GHGプロトコルでは、基準改訂に伴い必要とされる新技術のニーズについて調査したところ、上位7技術のうち5に当社の特許技術が関連する結果となっています。実際、当社の特許技術の有効性が認められたことで、国連24/7cとEnergy Tagへの参画を果たしています。
このため、当社の特許技術を用いた環境省実証実験の成果を各種国際協議の場で積極的に発信し、日本発の基準の国際標準化に貢献してまいります。
2023年4月に開催される国際会議における資料(一部)
令和5年度環境省ナッジ実証実験の概要
■予備実証実施期間
令和5年7月
■実証実験参加世帯及び介入内容
調査会社のモニタ220人を無作為に以下の2つのグループのいずれか(110人ずつ)に割当てました。
- 比較対象としてナッジを提供せず、スマートフォンのアプリで日々のEVの充電内容(充電時刻・充電量等)を記録し、履歴を表示するグループ(対照群)
- 対照群の内容に加え、累積充電電力量(kWh)やCO2排出量(g-CO2)、それらの値から算定されるモニタ毎の期間平均炭素強度(CO2排出係数:g-CO2/kWh)をアプリ上に表示するとともに、期間平均炭素強度に基づいてランキングを表示したり、CO2排出削減量に応じて金銭価値のあるポイントを付与したりするグループ(介入群)
■用いたスマートフォンのアプリの概要
日々のEVの充電行動を記録し、閲覧できる。記録に当たっては、充電行動に関わる申告内容の客観的根拠として、写真をアップロードさせる。(図1)
モニタ毎の充電電力の期間平均炭素強度を表示し、アプリのユーザー間でのランキングを表示する。また、各モニタの居住する送配電網エリアにおける前年同時期の24時間の発電所電源種別毎の発電量グラフを表示する。さらに、充電した時刻に赤い丸印を表示し、充電した電力の再エネの比率を推測することができる。【CO2排出削減努力の成果の見える化としてのランキング、社会的訴求】(図3)
図.スマートフォンのアプリの画面のイメージ
図1:記録画面
図2:履歴画面(CO2排出削減量や獲得ポイント)
図3:ランキング画面
■結果
対照群と介入群の間の比較において、昼充電率(総充電回数に占める昼充電回数の割合)、EV昼充電電力量率(総充電電力量に占める昼充電による充電電力量の割合)、モニタ毎の期間平均炭素強度の全ての効果指標で統計的有意差が検出されました。
本予備実証においては、複数のナッジの要素を組み合わせた介入を実施しており、結果からはどの要素に効果があったのか、要素間の相乗効果があったのか等については識別できず、今後の本格実証における課題として残っています。
■今後について
令和6年度以降においては、令和5年度の予備的な実証実験の結果を踏まえて、実証実験の参加世帯数や介入内容の見直し(とりわけ、どのナッジの要素に効果があったのか、要素間の相乗効果があったのか等について)を行い、EVのユーザー団体(一般社団法人テスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン等)や充電サービスに関わる事業者、複数の地方公共団体等との連携により、社会実装に向けた本格的な実証実験を実施する予定です。
また、社会実装に当たっては、株式会社電力シェアリングが国際連合の主導により創設された国際イニシアチブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」に参画するとともに、同社が開発した独自特許技術(消費の昼タイムシフト等による環境価値を定量的に算定・相対評価した上で消費者に見える化し、同環境価値の取引を可能とする技術)により、国際的に導入が検討されているHourly Matchingの手法に基づいてEVユーザーや一般消費者、プロシューマ等を含む地域全体の脱炭素努力の効果を見える化することで、地域と市民の主導により地域脱炭素を実現するBI-Techモデルを構築し、日本発の先駆的なグリーンイノベーションの好事例とすることを目指しています。
(参考)当実験の意義:GHGプロトコル改訂で適用が見込まれるHourly Matching手法のカーボンクレジット・電力取引へのインパクト・アセスメント
GHGプロトコルは、scope2のガイダンス(国際基準)の改訂を数年以内に実施する予定で、そこでの重点事項として、Hourly Matching手法の導入を検討しています。
また、GHGプロトコルの動きと併せて、当社が加盟する国連主導の国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」や、やはり当社が参画するベルギーの本拠に置くEnergyTagでも同様の動きがあり、三位一体でのHourly Matchingへのムーブメントが加速化しています。
Hourly Matching手法が国際標準基準となれば、日本国内の脱炭素や電力システムに関わる政策や制度設計に甚大な影響を与えると当社は予測しています。
例えば、活性化が喫緊の課題となっているカーボンクレジット取引(非化石証書やJクレジット・グリーン電力証書・JCMクレジットといった環境価値証書(オフセット証書)の取引)や、電力の先物・現物取引の在り方、高度化法と温対法に基づくオンサイトとオフサイトの区分管理、ひいては現行法における発電・送電・小売りの役割分担などの改編が必要となることが予想されます。
このため当社では、長年にわたり国連24/7c・Energy Tagや国際機関との情報交流や、Hourly Matchingに関連した4つの特許を取得するなどの技術知見を踏まえて、今後のカーボンクレジット取引や電力取引システムへのインパクトアセスメントを独自に行い、その課題と事業機会について、行政機関や民間企業にアドバイザリーサービスを提供する再エネHourly Matching研究所を設立しました。
なお、当社ウエブサイトで各種情報を発信しており、是非ご参照ください。
再エネHourly Matching研究所のロゴ
今般の環境省ナッジ実証実験では、Hourly Matching手法が実装された場合の各種のインパクトアセスメントを実際の需要家を対象とした実験を通じて実地で行うことができました。
環境省ナッジ実証実験で得た知見を、当社が参画する国連24/7c・Energy Tagに発信し、日本発の技術の国際標準化を目指すとともに、日本国内の関係諸機関に実践的なアドバイスを提供してまいります。
本プレス発表に関する関連情報
■関連する報道発表等
EVの「昼充電」やV2Gのタイムシフトによる環境価値を創出し取引する技術の特許を取得(特許第7246659号)
https://www.d-sharing.jp/blog/5f64ac49ea4
(令和5年4月7日付け株式会社電力シェアリング発表)
EVの昼間充電を促進、環境省 太陽光の活用図る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA030NJ0T00C23A7000000/
(令和5年7月6日付け日本経済新聞電子版)
■ (参考1)環境省ウエブサイト「環境省ナッジ事業の結果について」(令和5年7月7日付け報道発表)
環境省のウエブサイトで、「クライメートテック(気候テック)のスタートアップでもある株式会社電力シェアリングが開発した時間帯別CO2排出係数に関する我が国発の特許技術を用いた実証実験」として、掲載いただきました。
■ (参考2)日本版ナッジ・ユニットBESTについて
日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。
ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。
その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。
どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。
○日本版ナッジ・ユニットBEST のウェブサイト(会議資料、報道発表等) https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html
○平成29・30年度年次報告書(日本版ナッジ・ユニットBEST活動報告書) https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/report1.pdf
○報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~ https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf
○ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ①調査・研究編 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_study.pdf
○ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ②社会実装編 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_deploy.pdf
○我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/hirogari.pdf
以 上