アワリーマッチング――再エネ電力の「需要と供給」を本当の意味で一致させるというえ方
アワリーマッチング――再エネ電力の「需要と供給」を本当の意味で一致させるというえ方
アワリーマッチングとは
「アワリーマッチング(Hourly Matching)」という言葉が、電力・脱炭素分野で注目を集めています。
アワリーマッチングとは、電力の消費する時間と発電する時間をと1時間ごとに一致させるという考え方です。

現在、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量の算定・報告に関する世界共通の基準)の改訂に向けた議論が進んでいます。その中で、アワリーマッチングの導入が検討されています。
なぜ従来の再エネ調達手法では不十分とされ、1時間単位の厳格な一致が求められるようになっているのか。その背景と理由をご説明します。なぜ従来の再エネ調達手法では不十分とされ、1時間単位の厳格な一致が求められるようになっているのか。その背景と理由をご説明します。
現在、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量の算定・報告に関する世界共通の基準)の改訂に向けた議論が進んでいます。
その中で、アワリーマッチングの導入が検討されています。なぜ従来の再エネ調達手法では不十分とされ、1時間単位の厳格な一致が求められるようになっているのか。その背景と理由をご説明します。
現行制度「年間マッチング」の限界
現在、多くの企業が取り組んでいる再エネ調達の国際基準では、発電と消費をリアルタイムで一致させる必要はありません。1年間の総消費量に見合う分だけの再エネ証書(非化石証書など)を調達すれば、年度単位で「再エネ100%」を達成したと見なされます。
しかし、この「年間マッチング」には大きな落とし穴があります。例えば、太陽光発電が豊富な「昼間」に余った環境価値を、発電が行われていない「夜間」の消費に充てて帳簿上で相殺することが可能です。この仕組みでは、実際には夜間に火力発電由来の電力を消費していても、書類上は脱炭素化が完了したことになってしまいます。
「実質再エネ」への疑問と削減効果の追求
こうした背景から、従来の証書活用による手法が「本当に実際のCO2排出削減に直結しているのか」という疑問の声が、投資家やNGOなどの国際社会から上がるようになりました。
名目上の再エネ率を高めるだけでは、電力系統(グリッド)そのものの脱炭素化は進みません。カーボンフリーな社会を実現するためには、全ての時間帯で再エネ供給を増やす必要がありますが、年間マッチングという緩やかな枠組みの中では、夜間や悪天候時の供給不足を補うための技術革新や投資(蓄電池の導入や、変動の少ない地熱・バイオマス発電への投資など)が進みにくいという課題が浮き彫りになったのです。
GHGプロトコルの改訂とグローバルスタンダードの変化
こうした課題を解決するため、GHGプロトコルは現在、Scope 2(購入電力に伴う排出量)に関するガイダンスの改訂を検討しています。2026年にも予定されているこの改訂では、従来の「年間単位」から、より厳格な「時間・地域を一致させた算定(アワリーマッチング)」へと舵を切る可能性が議論されています。
もしアワリーマッチングが義務化、あるいは推奨されるようになれば、企業は「24時間365日、常にカーボンフリーな電力を使う(24/7 CFE)」という、より本質的な脱炭素化を求められることになります。
対応の必要性
GHGプロトコル改訂に向けた議論は、今後も続き、2027年に最終的に改訂がなされ、2030年からの適用開始が見込まれています。まだ先のことですが、実際に運用が開始されれば、電力需要家・発電者・小売電気事業者に大きな影響が予測されます。しかし、現在国際社会では賛成と反対の意見がぶつかり合っていて、議論の行く末はなかなか見えてきません。
当社では、最新の状況を分析しながら、負担の少ない現実的な導入を目指し、国際社会に働きかけています。