経済産業省は、2026年8月3日、第2回AI時代におけるデジタルガバナンス検討会を開催し、AIを前提とする企業変革をデジタルガバナンス・コードへどう反映するかを審議しました。事務局は、現行の「(1)基本的事項」と「(2)望ましい方向性」という二段階の構造を残しながら、各社がAI活用を進めるステップを示す方向で内容を検討する案を提示しました。 (Ministry of Economy, Trade and Industry)
今回示されたのは、改訂の基本構造に関する提案です。改訂版の本文、DX認定の新たな審査基準、DX銘柄・DXセレクションの評価項目、適用開始時期を正式に決めたものではありません。
DX認定とDX銘柄を分ける二段階構造
デジタルガバナンス・コード3.0の「基本的事項」は、企業がDXを進めるために不可欠な要件を示す部分です。「柱となる考え方」と「認定基準」で構成され、情報処理促進法に基づく指針と経済産業省令を通じて、DX認定制度の審査基準へつながっています。
現行コードは、経営ビジョン・ビジネスモデル、DX戦略、組織・人材・ITシステムを含む戦略の推進、成果指標と戦略の見直し、ステークホルダーとの対話という5本の柱を設定しています。上場・非上場、大企業・中小企業、法人・個人事業主を問わず対象とし、「基本的事項」を満たすことがDX認定への入口になります。(DX SQUARE)
これに対し「望ましい方向性」は、DXをどのように実践し、企業価値や事業成果へ結び付けるかを示す上位の指針です。DX銘柄とDXセレクションの評価・選定基準や、DX推進指標の設問に反映され、優良事例の横展開と経営者の意識変革を担ってきました。(DX SQUARE)
事務局は、DX認定取得の効果として「自社のDX戦略の推進に役立った」とする回答が最も多い点も示しました。経済産業省の認定事業者アンケートでも、約7割がDX戦略の推進に効果があったと回答しており、事務局は既存の二段階構造が政策上の役割を果たしてきたと整理しました。(Ministry of Economy, Trade and Industry)
AI前提でも「基礎から実践へ」の順序を維持
事務局資料によると、第1回検討会では、AIを前提としながらも、企業が活用を進めるステップを示すことが重要だとの意見が出ました。第2回ではこれを受け、基本的事項と望ましい方向性が段階を示す現行構造を維持し、各段階の中身をAI時代に合わせて見直す考えを示しました。
この構造を維持すれば、すべての企業に求める最低限の経営基盤と、先進企業に期待する実践・成果を分けて示せます。制度上は、経営者の関与、AIを経営戦略に位置付ける方針、責任体制、データやIT基盤などを基礎的要件として扱い、その上で事業モデルの転換、生産性向上、新規収益、意思決定の高度化といった成果を上位段階で評価する整理も可能です。
現行コードの考え方からみれば、生成AIの利用件数や導入ツール数だけを競わせる設計では不十分です。経営ビジョンとDX戦略の連動、現在地と目標とのギャップの定量把握、企業文化への定着が重視されているため、AIを追加する場合も、技術導入ではなく、経営課題の解決や企業価値向上とのつながりをどの段階で求めるかが焦点になります。(DX SQUARE)
委員別の発言と正式な了承事項は未公表
事務局は、第1回に寄せられた意見として「AIを前提としながら活用のステップを示すこと」の重要性を紹介しました。し(Ministry of Economy, Trade and Industry)
DX認定申請ではAIと経営戦略の接続が焦点
今後、AIに関する項目が「基本的事項」へ入れば、DX認定を申請する企業は、AI利用方針だけでなく、経営ビジョン、ビジネスモデル、DX・AI戦略、推進組織、人材育成、IT・データ基盤、サイバーセキュリティー、成果指標を一貫した形で説明する必要が生じる可能性があります。
特に、AI導入を情報システム部門だけの施策として扱っている企業は、経営者のメッセージ、取締役会の監督、事業部門との責任分担、投資判断の基準を整理し直す必要が生じ得ます。AIの出力を誰が検証するか、利用データをどう管理するか、業務や顧客への影響をどの指標で測るかも、戦略とガバナンスをつなぐ実務上の検討項目になります。
政府の2026年版重点計画は、AIを前提として意思決定や業務を根底から見直す「AX」をDXと一体で推進し、DX銘柄・DXセレクションでAI利活用を含む優れた取組を選定する方針を掲げています。2026年度末までにDX認定を2,400件以上とする目標も設定しており、コード改訂は一部の先進企業だけでなく、幅広い認定申請企業に影響し得ます。(デジタル庁)
DX銘柄・DXセレクションは成果の立証が重要に
「望ましい方向性」がAI時代に合わせて改訂されれば、上場企業が対象となるDX銘柄や、中堅・中小企業などの優良事例を選ぶDXセレクションでは、AIを導入した事実よりも、どの経営課題を解決し、どの程度の成果を生んだかを示す資料が重要になる可能性があります。
応募企業にとっては、投資額や利用者数だけでなく、売上高、利益率、開発期間、顧客満足度、業務時間、品質、リスク発生件数など、戦略に対応したKPIの設定が重要になります。統合報告書、DX戦略、人的資本開示、サイバーセキュリティー方針などの記述を整合させ、AI活用が企業価値へ至る経路を説明する作業も増える可能性があります。
AI事業者や金融機関にも説明基準を形成
AIサービス事業者、SI事業者、コンサルティング会社には、単体ツールの導入提案ではなく、利用企業がどの段階にあり、次の段階へ進むために何が不足しているかを示す支援が求められる可能性があります。データ整備、業務設計、人材育成、リスク管理、成果測定までを含むロードマップの提示が、案件形成や契約範囲に影響します。
投資家や金融機関にとっては、コードに沿った開示が整えば、AI投資が単なるコスト削減なのか、事業モデルの転換や新規収益につながるのかを比較しやすくなります。一方、段階表示が形式的な格付けとして独り歩きしないよう、企業規模や業種、AI利用の必要性の違いを制度上どう扱うかを確認する必要があります。
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