【経済】日米共同の円買い介入で可視化された「日米共倒れ」リスク

日本と米国による異例の協調介入が始まっています。ドル円相場は一時1ドル=163円台まで下落した後、一連の介入により8月3日14時5分時点では156.414円まで円高方向に戻っています。

一方で、日本国債10年物利回りは0.030ポイント上昇の2.826%、日本VIは30.53%高の38.35まで急騰しました。円は買われても、日本への信認が確保されたわけではないことを示しています。

米国のベッセント財務長官は、円が過小評価されているとの認識を示し、必要なら追加介入に応じる姿勢を鮮明にしました。こうした過去にまれにしかない異例の行動は、市場に少なからず動揺を与えていますが、実際に円安が継続的に是正されるかは予断を許しません。ベッセント長官と投機筋のにらみ合いが続いている様相です。

発端は「米国売り」、次に日本へ

今回の円売りには、日本の政府債務だけでなく、米国の財政不安から始まった「通貨価値の希薄化取引」、いわゆるデベースメント・トレードの側面があります。

CBOによると、米国の2026年度財政赤字は約1.9兆ドル、GDP比5.8%に達する見通しです。社会保障給付は約1.7兆ドル、防衛費も1兆ドル規模となり、金利負担も増加しています。一方、IMFが見込む日本の一般政府総債務はGDP比204.4%と、主要国で突出しています。

市場では、まず米国債とドルへの信認が意識され、その後「米国以上に債務比率の高い日本」が売りの対象になったとの見方があります。

ここで重要なのは、日本が本当に財政破綻するかの確からしさを議論することはあまり意味がないということです。

投機筋にとって取引しやすい物語が成立し、それを多数の市場参加者に信じさせることができるかどうか、例えていうと、美人かどうかは二の次で美人投票で多数を取れるかということです(筆者はルッキズムには与しません。あくまでも比喩です)。

債務国同士が支え合う構図

投機筋は、「債務を抱える弱い者同士が国債を増刷してお金を融通し合っている」と主張してくると思います(ただし実際にはユーロを売って円を買い、保有米国債を売却せずドル資金を調達できるFRBのFIMAレポ制度が活用されたとの見方もあります)。

その一方で、日米ともに為替介入と口先介入以外に、実行が伴っていないことも弱みを与えます。

日銀は7月会合で政策金利を1.0%に据え置きしました。GPIFによる円債比率引き上げも観測段階で、具体的な資産配分変更は確定していません。

さらに食品などへの消費税減税が国債増発につながれば、生活支援とは別に、財政規律を材料視する投機筋へ新たな売買テーマを与える恐れがあります。

米国FRBも3.50~3.75%を維持しました。年内に少なくとも1回の利上げが市場では織り込まれていますが、利上げはないとする大手金融の予測も流れ始めています。

そして気になることに米国のM2は2026年1~5月平均で前年同期比4.7%増えました。先週発表された6月も拡大基調は維持されています。

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M2とインフレの間に明確な因果関係はありませんが、タカ派的な言葉とは対照的に、流動性が増え続けていることは、ドルや国債の実質価値を疑う市場参加者の材料になります。

ベッセント氏は1992年のポンド危機で、ソロス・ファンド側の取引に関わった人物です。政府の通貨防衛を市場が崩す仕組みを熟知する同氏は、こんなストーリー展開は百も承知のはずです。それなのになぜ勝負をかけているのだろうかとマーケットは疑心暗鬼になっています。

ベッセントは何か秘策があって勝ちを確信しているという見る向きもある一方で、よほど追い込まれていて「負け戦」を承知で最後のギャンブルに打って出たとの主張もX界隈でみられます。

協調介入が流れを転換したのか、単なる時間稼ぎなのか。

電力・脱炭素投資にとっても、金利は設備投資コスト、為替は燃料・機器価格を左右します。今後とも、ドル円相場、日米長期金利には目が離せません。

出典:FRB「Monetary Policy Report」CBO「The Budget and Economic Outlook」IMF日本経済審査日本銀行・金融政策決定会合