東京電力パワーグリッドなど一般送配電事業者10社は、2026年7月22日、送配電設備の利用条件を定める「託送供給等約款」の変更について、経済産業大臣の認可を受けたと発表しました。
新しい約款は2026年10月1日から実施されます。主な変更点は、データセンターなど特別高圧の大規模需要に対する接続手続きの規律強化と、非FIT・非FIP電源を中心とする発電側の系統アクセス手続きの厳格化です。電力系統の容量を長期間確保したまま実際には使わない、いわゆる「空押さえ」を抑制し、真に接続確度の高い事業を優先しやすくする狙いがあります。
電気事業法18条に基づく認可、10月から供給条件に反映
託送供給等約款とは、小売電気事業者や発電事業者、需要家が一般送配電事業者の送配電設備を利用する際の料金や契約手続き、供給条件を定める基本ルールです。一般送配電事業者は、電気事業法第18条第1項に基づき、託送供給等約款を定める場合や変更する場合、経済産業大臣の認可を受ける必要があります。
今回の変更は、東京電力パワーグリッドが6月24日に変更認可申請を行い、7月22日に認可されたものです。他の一般送配電事業者も同様の趣旨で申請・認可を受けています。東京電力PGは、今回認可された内容について、6月24日の申請内容から変更はないとしています。
制度変更の背景には、電力需要と電源接続の双方で、系統利用の申込みが急増していることがあります。AIデータセンター、半導体工場、大規模物流施設などでは、特別高圧で大きな電力容量を確保する必要があります。一方、発電側では系統用蓄電池、太陽光、風力などの非FIT・非FIP案件が増え、接続検討や契約申込みが集中しています。
次世代電力系統WGで議論、データセンター需要の確度が焦点に
今回の規律強化は、経済産業省・資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」での議論を踏まえたものです。正式には、総合資源エネルギー調査会の下に置かれた、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会および次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会に関連する作業部会です。
需要側については、2025年9月24日の第4回会合と、2026年4月16日の第10回会合で、局地的な大規模需要に対する規律確保が議論されました。データセンターなどは、立地、テナント、最終需要規模、需要到達時期が流動的になりやすく、申込み時点の計画と実際の使用電力が乖離する可能性があります。
その結果、送配電事業者側では、実際に使用されるか不確実な容量を前提に、変電所や送電線の増強計画を検討しなければならなくなります。これは、他の需要家や発電事業者の接続機会を遅らせるだけでなく、社会全体として非効率な設備形成につながるおそれがあります。
工事費負担金は供給承諾から3カ月以内、計画変更にも制限
新ルールでは、特別高圧で供給する需要地点について、供給承諾から工事費負担金の入金までの期限を3カ月以内とします。期限を超過した場合、接続供給契約における当該地点の契約申込みは取り消されます。
また、供給承諾前であっても、需要家の都合により申込み内容の変更が生じ、供給対策工事や技術検討の結果に影響を及ぼす場合には、契約申込みを取り消す取扱いが新設されます。軽微な変更は対象外とされていますが、契約電力、供給開始時期、最終需要規模などに関わる変更は、系統側の検討結果に直接影響し得ます。
これは、大規模需要家にとって大きな影響があります。データセンター事業者や半導体工場の開発事業者は、系統接続の申込み前に、用地、資金調達、建設計画、需要見通し、テナント契約をこれまで以上に固める必要があります。工事費負担金の入金期限が明確化されることで、接続容量だけを先に確保して事業化を後から検討する手法は難しくなります。
発電側は土地使用権原の提出を要件化、非FIT・非FIP電源に影響
発電側では、2025年12月24日の第6回次世代電力系統ワーキンググループで、非FIT・非FIP電源の系統アクセス手続きに関する規律強化が議論されました。非FIT・非FIP電源とは、再生可能エネルギー特別措置法に基づくFIT認定またはFIP認定を受けていない電源を指します。
今回の変更では、発電量調整供給契約の申込みに関し、事業用地の使用権原を証する書類を、連系承諾から2カ月以内に提出することが要件となります。提出がない場合は、連系予約が取り消されます。使用権原を証する書類としては、土地の登記簿謄本、賃貸借契約書の写しなどが想定されています。
この変更は、系統用蓄電池や非FIT太陽光、非FIT風力などの開発事業者に直接影響します。これまでは、土地の確保や権利関係が十分に固まらない段階でも、系統接続の権利確保を先行させる動きがありました。今後は、用地交渉、地権者合意、賃貸借契約、SPC設立、資金調達を、より早い段階で整える必要があります。
事業者には資金力と開発確度、送配電側には透明な運用が問われる
今回の約款変更は、単なる手続き厳格化ではなく、電力系統という限られた公共インフラの利用順位を、より事業確度に基づいて整理する制度変更です。需要側では、AIデータセンターや半導体関連投資の拡大により、特定地域で系統容量の奪い合いが起きやすくなっています。発電側では、蓄電池を含む多数の案件が接続検討に流入し、一般送配電事業者の審査負荷も高まっています。
一方で、規律強化には副作用もあります。事業化の初期段階にある中小事業者や新規参入者にとっては、土地や資金を早期に確保する負担が重くなります。大規模需要家も、テナント需要が流動的なデータセンターでは、最終需要規模を申込み段階で精緻に固めることが難しい場合があります。ルールの厳格化が、実需のある事業まで過度に抑制しないよう、運用の透明性が重要になります。
業界全体としては、系統接続の「早い者勝ち」から、事業計画の確度や資金・土地の裏付けを重視する方向へ移行していくことになります。送配電設備の増強には長い時間と多額の費用がかかるため、限られた容量をどの案件に割り当てるかは、電力安定供給、再エネ導入、データセンター投資、地域産業政策のすべてに関わります。10月以降、申込み実務では、系統接続を単なる手続きではなく、事業開発の中核リスクとして管理する必要が高まります。
出典:東京電力パワーグリッド「託送供給等約款の認可について」、中国電力ネットワーク「託送供給等約款の認可について」、経済産業省「第10回 次世代電力系統ワーキンググループ」、電力広域的運営推進機関「系統用蓄電池の契約申込み時の保証金の増額」等について