家庭用DRへ広がるリソースアグリゲーション。参入する企業群をマッピングする

リソースアグリゲーションとは、各地に分散する蓄電池、自家発電設備、EV、給湯機、空調などを通信で束ね、あたかも一つの発電所のように制御する事業です。経済産業省は、法規制制度を整備し、民間企業の積極的な参入を後押ししています。

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リソースアグリゲーションは、工場や商業施設の自家発・生産設備、高圧・特別高圧で系統へ接続する大型蓄電池など、出力が大きく計測・契約関係を整理しやすいリソースで商用化が先行しました。

一方で、1台当たりの容量は小さいものの、台数と顧客接点で大きな潜在力を持つ家庭用蓄電池、エコキュート、EVへ競争領域が広がっています。

制度議論は「接続可能」から「市場で使える」へ

経済産業省のDRready勉強会は、メーカーが異なる家庭用機器を外部から安全に制御するため、通信接続、充放電・沸き上げ指令、計測データ、サイバーセキュリティ、本来用途との両立を検討してきました。

家庭用蓄電池やハイブリッド給湯機から、燃料電池、EV充放電へ対象が広がっていることは、DRreadyが単なる通信規格ではなく、市場参加に必要な最低限の機能と安全性を整える枠組みに移りつつあることを示します。(経済産業省)

分散型エネルギー推進戦略WGも、2025年12月に検討を開始し、2026年3月には導入見通しと課題を踏まえた施策の方向性、4月には具体的施策を議論しました。

論点は設備導入支援だけでなく、系統接続、制御・計測、セキュリティ、市場活用を一体で設計する方向へ進んでいます。多数の小口機器を実際の供給力・調整力として評価するには、指令値への追従性、通信欠損、需要家の快適性、ベースライン、逆潮流の扱いを共通化する必要があります。(経済産業省)

家庭用市場は三つの層で形成

家庭用DR市場に参入する企業は、主に3層で形成されています。

第一の層は、顧客を持つ電力・ガス小売会社です。各社、実証・積極的にサービス提供による顧客の獲得をはかっています。

東電EP――既設機器と顧客基盤が武器

東京電力エナジーパートナーは、蓄電池とエコキュートを対象に上げDRと下げDRを実施し、停電用の最低残量や湯切れを避けながら制御します。

蓄電池に加え、太陽光発電を設置した住宅のエコキュートをDR対象に追加しました。新設設備だけでなく既設機器も取り込めるため、首都圏の顧客基盤を短期間で大規模な制御資源へ転換できる点が強みです。

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東京ガス――住宅設備を容量市場へ

東京ガスは、家庭用蓄電池200台超を一括制御する容量市場向けテストを実施し、2027年4月からの供給力提供を目指します。住宅設備の販売、遠隔制御、容量市場収入を一つの事業にまとめるモデルで、都市ガス事業で培った家庭との接点を生かします。

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東急パワーサプライ――設備保有で制御権を確保

東急パワーサプライは、太陽光発電のない東京都内の戸建住宅にも13.0kWh蓄電池を無償貸与します。利用者所有の機器を集める方式と異なり、事業者が設備を保有することで、長期間の制御権を確保しやすい点が特徴です。

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au――通信サービスの販売力を電力へ

auエネルギー&ライフは、「auでんち」の初期費用、工事費、月額費用を無料とし、電気料金を月最大3,000円割り引きます。開始約1カ月で申込1,000件に達しており、通信、決済、電力を束ねて顧客を獲得する力が、電力会社にはない差別化要因です。

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第二の層は、機器・HEMSメーカーです。

パナソニックはENEOS Powerと、家庭100軒、法人20軒で蓄電池、給湯、空調、照明を制御する実証を進めています。

シャープは蓄電池とクラウドHEMS「COCORO ENERGY」を組み合わせ、太陽光発電量、料金プラン、生活パターンを踏まえたAI制御を提供します。メーカーにとっては、機器販売後も市場収益や電気代削減を生む継続サービスへ転換できるかが競争軸です。(Panasonic Newsroom Global)

パナソニック――蓄電池だけでなく住宅全体を制御

パナソニックはENEOS Powerと、家庭100軒、法人20拠点で蓄電池、ヒートポンプ給湯機、空調、照明を遠隔制御します。HEMS・BEMSと幅広い住宅設備を持ち、単一機器ではなく建物全体を最適化できることが強みです。

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シャープ――クラウドHEMSを小売会社に接続

シャープは「COCORO ENERGY」を東電EPのDRサービスに接続しました。平時のAIによる太陽光自家消費制御と、電力会社からのDR指令を同じ蓄電池で両立します。機器販売後も制御サービスで継続収入を得る構想です。

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第三の層は、異なる小売会社とメーカーを横断して束ねるプラットフォーム企業です。

Shizen Connectは複数メーカーの家庭用蓄電池を接続し、経済DR、容量市場、需給調整市場向けの制御を共通基盤で提供します。

この層の価値は、機器ごとの通信仕様や応答特性を吸収し、数千、数万台の実績値を予測して、市場への約束量に変換する点にあります。(自然電力株式会社)

Shizen Connect――企業を横断する共通基盤

Shizen Connectは関西電力との実証で、指令への追従率約65%を確認し、逆潮流を認めた場合の供出可能量を、需要削減だけの場合の約3倍と試算しました。小売会社や機器メーカーを横断して接続するプラットフォーム型であり、各社が個別に制御システムを開発する負担を減らします。

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エナリス―需給予測から実務支援

エナリスはDERMSを用い、需給予測からkW・kWh・ΔkW取引、計画提出までを一括支援します。両社の強みは、機器そのものではなく、複数市場をまたいで収益を積み上げる運用実務にあります。

デジタルグリッドレノバ――取引設計か、資産開発か

デジタルグリッドは電力取引基盤に金融工学とデータ分析を組み合わせます。

レノバは、市場取引、長期オフテイク、長期脱炭素電源オークションという複数モデルで蓄電所を開発します。

前者は取引と収益設計、後者は案件形成と資金調達に比較優位があります。

今後の見通し

高圧・系統用の運用技術が低圧へ下りる

高圧・系統用の運用技術が低圧と融合する可能性があります。

高圧・特別高圧側では、関西電力グループのE-Flowが卸電力市場、需給調整市場、容量市場を組み合わせ、入札、需給計画、充放電指示を代行しています。

エナリスはDERMSを用いてJEPX、需給調整市場、容量市場の運用を包括支援し、デジタルグリッドは金融出身のトレーダーとアルゴリズムを組み合わせて高圧・特別高圧案件を運用します。

レノバは蓄電所の開発・保有に加え、市場運用の内製化を進めています。

このレイヤーで蓄積される価格予測、劣化制約、複数市場への配分、計画提出の技術は、家庭用を含む低圧ポートフォリオにも転用される可能性があります。

高度な金融機能の適用

今後は、需要家構内のオンサイト蓄電池、住宅機器、EVと、系統へ直接接続するオフサイト蓄電所を、応答速度、継続時間、地域、劣化費用ごとに組み合わせる市場が形成されると考えられます。

制度上の契約・計量区分は残っても、運用上は一つのポートフォリオとして最適化される方向です。

その段階では、技術だけでなく金融機能が重要になります。

スポット価格、調整力価格、稼働率、電池劣化、制度変更のリスクを、収益下限付き契約、キャップ・フロア、トーリング契約、オプションなどで配分し、銀行、リース、証券、保険会社が資金供給とリスク移転を担う可能性があります。

すでに系統用蓄電池では、リース会社との共同事業、プロジェクトファイナンス、金融市場出身者による取引運用がみられます。(株式会社エナリス│ENERES)

競争力を決めるのは保有台数だけではありません。

機器制約を理解し、複数市場の収益を重ね、需要家保護と市場への履行責任を両立できる事業者が、家庭用と系統用、オンサイトとオフサイトを横断する次のアグリゲーション市場を主導するでしょう。

出典

制度資料:DRready勉強会分散型エネルギー推進戦略WG

家庭用DR:東電EP東京ガス東急パワーサプライauエネルギー&ライフパナソニックシャープShizen Connect

市場運用・蓄電所開発:E-Flowエナリスデジタルグリッドレノバ