【SAF供給義務】2030年度から。GHG5%相当目標と利用者負担を一体設計~第9回SAF官民協議会

経済産業省資源エネルギー庁と国土交通省航空局は、2026年7月23日、第9回「持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会」で、2030年度からの国産SAF本格導入に向けた制度設計の進捗を公表しました。

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今回の焦点は、SAFを航空会社の自主調達に委ねる段階から、ジェット燃料供給事業者を対象とする供給義務、航空会社への値差支援、利用者負担を組み合わせた制度へ移行する点です。2024年9月の脱炭素燃料政策小委員会、2026年1月の第8回SAF官民協議会、今回の第9回会合を通じて、供給側の規制と利用側の支援を一体で設計する方向が明確になってきました。

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2030~2034年度を対象に、GHG排出量5%相当以上を目標

制度の出発点となったのは、2024年9月30日の第16回「資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会」です。同会合では、エネルギー供給構造高度化法に基づくSAF供給目標量の案が議論されました。

第8回SAF官民協議会資料では、この案について、2030~2034年度の5年間を対象期間とし、「2019年度に日本国内で生産・供給されたジェット燃料のGHG排出量の5%相当以上」を供給目標量とする整理が示されています。これは、単純な混合率だけでなく、SAFの温室効果ガス削減効果を基準にする設計です。

SAFの定義については、国際標準であるASTM D7566、D1655の規格を満たす燃料とされます。対象事業者は、一定数量のジェット燃料を製造・供給する事業者で、資料上は年間10万kL以上のジェット燃料製造・供給事業者が対象とされています。個社ごとの目標量は、国内ジェット燃料生産量平均値の総和に対し、個社が占める生産量平均値の割合に応じて按分する考え方です。

航空会社への利用義務ではなく、供給側義務を軸に

制度設計上の重要な分岐点は、誰に義務を課すかです。第8回資料では、航空会社に対して国内空港で国産SAFの給油を義務付ける「利用義務化」は困難と整理されました。

理由として、航空法第6章は運航安全のために必要な燃料搭載量を規定するものであり、脱炭素化を目的に給油場所を指定する枠組みではないことが挙げられています。また、航空法第10章の脱炭素化規定は本邦航空運送事業者を対象としており、外国航空会社に同じ義務を課すことが難しい点も論点になりました。本邦航空会社だけに義務を課せば、国際競争上の不均衡が生じるおそれがあります。

このため、制度の軸は、ジェット燃料供給事業者に対するSAF供給義務へ移っています。エネルギー供給構造高度化法では、特定エネルギー供給事業者に対し、判断基準の策定・公表、目標達成計画の提出、指導・助言、勧告、命令などの枠組みがあります。命令違反や計画未提出、虚偽報告、立入検査拒否などには罰金も想定されており、単なる自主目標とは異なる規律を持ちます。

第8回では、FIDと利用者負担をめぐり意見が集中

2026年1月28日の第8回SAF官民協議会では、「更なるSAF導入促進に向けた基本方針」が示されました。この基本方針は、2025年7月に設置された「更なるSAF導入促進策検討タスクフォース」が7回の議論を経てまとめたものです。

同方針は、初期需要を創出するため、幅広いジェット燃料供給事業者を対象とした一定量のSAF供給義務などの規制的措置を検討するとしました。ただし、導入数量は小規模な水準から始め、段階的に拡大する方針です。あわせて、SAFの売買や環境価値の移転を透明性ある形で行う必要も示されました。

議事要旨では、構成員から、2026年度第1四半期までに規制内容や供給側・利用側双方への支援内容を明示すべきだとの意見が出ました。航空会社側からは、小規模から段階的に進めることが望ましいとの意見がありました。一方、石油元売り側の立場としては、目標値が小さすぎると最終投資決定(FID)に影響し、将来のSAF利用拡大につながらないとの懸念が示されました。

国産SAFはジェット燃料の数倍、値差支援が制度の焦点に

国交省が第9回で示した資料では、国産SAFは世界的な建設費・原料費の上昇により、GX移行債などの支援を措置しても、従来のジェット燃料より高価になる見通しです。資料では、国産SAF価格について「ジェット燃料価格の数倍」と整理し、直近2~3年の市場価格は240~480円/Lで変動していると説明しています。

このため、制度設計は供給義務だけでは完結しません。基本方針では、航空運送事業者へのインセンティブ、いわゆる値差支援を検討する方向が示されました財源については、利用者の理解を得られる範囲で、航空利用者全体に広く一定の負担を求める持続可能な仕組みを検討することになります。

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2026年4月には「持続可能な航空脱炭素化に関する有識者会議」が立ち上がり、同年7月23日時点で第4回まで開催されています。

検討対象には、旅客や貨物を含む利用者負担、対象空港、国際線・国内線、離島路線の扱い、既存の空港利用料との比較などが含まれます。東京―欧州の例では、燃油サーチャージ65,000円/人に対し、欧州航空会社のSAFサーチャージ例として1,464円/人、貨物では7.3円/kgという比較も示されました。

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ENEOS、出光、コスモ、太陽石油の投資判断に直結

供給側では、GX経済移行債などを活用し、ENEOS、コスモ石油、出光興産、太陽石油の4事業者が支援対象となっています。第9回資料では、ENEOSが和歌山県でHEFA方式により約40万kL/年、コスモ石油が香川県でATJ方式により15万kL/年、出光興産が山口県・千葉県でHEFAおよびATJにより25万kL/年と10万kL/年、太陽石油が沖縄県でATJ方式により20万kL/年の計画を進めていることが示されました。

2030年の国産SAF大規模供給に間に合わせるには、プラント建設に2年半から3年程度を要するため、2026年末ごろまでにFIDを行う必要があります。さらに、税額控除の適用には2026年度末までの計画認定が必要で、GX経済移行債を活用したCAPEX支援は2028年度、GI基金による技術開発支援は2029年度が適用終期と整理されています。

このため、石油元売りやSAF製造事業者にとっては、供給義務の水準、値差支援、長期売買契約の見通しが、FIDの前提条件になります。航空会社にとっては、燃料費負担、利用者負担への転嫁、Scope3環境価値証書、サーチャージ、選択式運賃などを組み合わせた調達戦略が必要になります。空港会社や貨物事業者、荷主企業にとっても、SAF調達が国際競争力、空港選択、サプライチェーン排出量に影響する可能性があります。

残る論点は価格変動、過度な負担、透明な環境価値移転

今回の制度設計では、結論が出た事項と継続審議の事項を分けて見る必要があります。供給目標量案、対象期間、供給側義務を軸にする方向は既に整理されています。一方、具体的な負担額、対象空港、旅客・貨物の配分、国際線と国内線の扱い、離島路線への配慮、柔軟性措置の細部は、引き続き制度設計の対象です。

第8回議事要旨では、SAF価格の変動に応じて調達量を調整する仕組みについて、航空会社側には負担額の予見性を高める利点がある一方、元売り側には生産後に需要家が引き取らないリスクが残るとの懸念が示されました。また、過度な旅客負担は航空需要に影響するとの指摘や、設備投資・原材料費が想定を上回った場合に柔軟に見直せる制度設計を求める意見もありました。

SAF義務化は、航空脱炭素政策であると同時に、燃料供給、製油所再編、廃食油・バイオ原料調達、空港競争力、航空運賃、貨物輸送コストを横断する制度です。2030年度開始に向け、今後は高度化法上の告示、利用者負担制度の詳細、航空会社への値差支援、環境価値の帰属と移転ルールが、投資判断と運賃設計を左右する実務論点になります。

出典

第9回 持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会

第9回 資料4 事務局(国土交通省)説明資料

第8回 持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会

第8回 議事要旨

第8回 資料3 事務局説明資料(タスクフォース関連)

第8回 資料5 更なるSAF導入促進に向けた基本方針

第16回 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会

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