資源エネルギー庁は、2026年8月6日、第12回次世代電力系統ワーキンググループを開催し、データセンターなど局地的な大規模需要による系統容量の「空押さえ」対策を議論しました。
事務局は30MW以上の需要家を対象に、計画より低い需要や供給開始の延期が1年を超えた場合の容量解放と、最終契約電力が未達の場合の費用精算を提案しました。
委員から大きな反対はなく、費用算定の合理性などを詰めた上で対応を進める方向です。
データセンターはテナント獲得やサーバー増設に応じて需要が段階的に立ち上がるため、当初計画と実需の差が生じやすい事業です。
しかし一般送配電事業者が最終契約電力を前提に設備容量を確保し続けると、後続の需要家が接続できず、使われない設備費が託送料金の一般負担へ回る恐れがあります。そこで、事業計画の不確実性を認めつつ、長期間使われない容量と費用を需要家側へ一定程度戻す設計を検討しています。
30MWが1件も入らない系統を容量解放対象に
容量解放は、段階別契約で予定した供給開始が1年以上延期される、または契約電力を引き下げた状態が1年以上続く場合に発動する案です。対象需要家は30MW以上とし、対象エリアは新たな30MW需要を1件も接続できない系統に限定します。全国一律ではなく、接続申込が集中している系統で後続案件へ容量を回すことが目的です。
対象エリアは年2回見直します。需要家が事前検討を申し込んだ際、接続希望系統が容量解放の対象かどうかを一般送配電事業者が通知します。接続時点では対象外でも、その後の需要増で対象に変わり、供給開始延期や電力引き下げが1年超続けば容量解放の対象になり得ます。公開されているウェルカムゾーンマップだけで一律に判断できない系統もあるため、当面は個別回答が必要との整理です。
費用精算は全エリア、一般負担部分を対象
費用精算は容量解放と異なり、混雑の有無にかかわらず全エリアで適用する提案です。最終契約電力が計画に届かない状態が1年を超えた場合、上位系統と供給線の整備費のうち一般負担部分を対象にします。特定の需要家が直接負担済みの特定負担分を重ねて徴収せず、需要家の接続を契機に一般送配電事業者が将来需要を見込んで追加した設備など、当該需要家に帰属しない部分も除外します。
算定は、対象工事の総工事費を増強容量で割って1MW当たり単価を出し、計画と実績の未使用容量を掛ける考え方です。例えば需要家に必要な増強を超えて一般送配電事業者が大きな設備を整備した場合、その全額を需要家へ転嫁するのではなく、未使用分に対応する按分額に限定します。実際の設備規模や単価に特殊事情がある場合の合理性確認は、今後さらに詰めます。
段階別契約は最長6年、公共インフラは例外
段階別契約に期間制限がなければ、需要の立ち上げを長期に設定して費用精算を先送りできる方針です。このため、契約可能な期間を原則最長6年とする案が示されました。6年後に追加投資で需要を増やす場合は、既存契約を無期限に延ばすのではなく、新たに接続順位へ並び直し、次の段階別契約を結ぶ扱いです。
ただし、一般送配電事業者側の系統工事が6年以上かかる場合や、空港など大規模な公共インフラは例外とします。また、いったん最終契約電力へ達した後、1年未満で契約電力を引き下げて精算を逃れる行為も防ぐため、短期間での減少を現行約款上の精算に代えて今回の費用精算へ含める案が提示されました。
委員は制度逃れと工事費の透明性を指摘
宮川暁世委員(日本政策投資銀行産業調査部長)は、誠実な需要家が不利にならないよう、制度の穴を利用した費用逃れを継続的に監視し、運用後も必要に応じて見直すよう求めました。規律の目的はデータセンター投資を抑えることではなく、実現可能な需要計画と系統容量の割当てを一致させることにあります。
坂本織江委員(上智大学准教授)は、容量解放対象を事前にどこまで公開情報で判断できるか質問しました。事務局は、ウェルカムゾーンマップなどで近い情報は得られるものの、一般送配電事業者や系統によって公開粒度が異なり、正確な対象判定は個別回答になると説明しました。坂本委員はさらに、需要家に必要な150MWに対し300MWを増強した例などでは、工事規模の合理性を説明し、需要家に不当に高い精算額が生じないことを担保すべきだと指摘しました。事務局は、公平性に関わる重要論点として、例外的に1MW当たり工事費が高くなる事例と確認方法を検討します。
馬場旬平座長(東京大学教授)は、容量解放・費用精算の提案に特段の異論はなかったと総括しました。ただし、これは会合時点の制度案への方向性確認であり、法令・約款上の最終決定ではないことに留意が必要です。
対象エリアの判定と情報開示、費用算定の合理性、制度逃れ防止の細部は継続検討です。
データセンター開発者にとっては、テナント獲得の遅れや段階的な電力使用計画が、容量削減と精算負担に結び付く可能性があります。
用地取得、電源・通信設備、EPC工程、顧客契約を6年以内の需要立ち上げ計画と整合させ、金融機関との協議では未使用容量の費用リスクを織り込む必要があります。
一方、後続需要家には接続機会が広がり、一般需要家には遊休設備費の一般負担を抑える効果が期待されます。