資源エネルギー庁は、2026年8月6日、第12回次世代電力系統ワーキンググループを開催し、系統用蓄電池をはじめとする発電設備の迅速な系統連系策を議論しました。2026年3月時点で、系統用蓄電池の接続検討申込は全国で約192GW、契約申込は35GWに積み上がっています。事務局は、事業確度の高い案件を早く連系するため、接続検討料の引き上げ、土地所有者の同意、低圧蓄電池への規律、充電制限契約の見直しを検討課題として提示しました。
接続検討はかつて太陽光が中心でしたが、ここ2~3年で系統用蓄電池が急増し、直近では申込の大部分を占めます。エリア別では東北が特に多く、東京も高水準です。土地価格、オンライン手続きの可否、収益機会など複数の要因が立地選択に影響しているとみられます。一方、連系済み容量はまだ限定的で、接続検討・契約申込と実運転の間に大きな差があります。
検討料引き上げ、土地同意、低圧規律を提示
入口対策では、現行のコストを基礎とする接続検討料を引き上げ、事業化意思の低い申込を抑える案が示されました。引き上げ幅や適用条件は未決定です。土地については、契約申込後の段階で使用権原を提出する現行措置に加え、接続検討の申込時点で土地所有者との合意を確認する案を検討します。所有者が同意していない土地で申込が行われ、地権者とのトラブルになる事例があるためです。
低圧蓄電池は、2026年4月から複数設備を束ねて需給調整市場に参加できるようになり、接続案件が急増しています。現行では接続検討プロセスが不要ですが、事務局には一社で数百件規模の申込を行う例が寄せられました。このため、接続検討を新設するか、高圧以上で導入済みの契約申込規律を適用するか、太陽光と蓄電池を組み合わせた敷地分割をどう判定するかを実態調査します。
さらに、先着優先を電源種にかかわらず一律適用する現行原則について、充電した電気を放電する蓄電池と、一次エネルギーから発電する電源を同じ順位で扱うことが妥当かも論点に挙がりました。これは蓄電池を優遇すると決めたものではなく、公平性、系統増強費用、再エネ統合への貢献を踏まえて今後検討する段階です。
計画値制御まで充電制限契約を暫定活用
順潮流側、すなわち蓄電池が充電する方向のノンファーム型接続は、将来的に計画値制御へ移行する方針です。ただしシステム改修に時間がかかるため、暫定策として「早期連系追加対策」を広げる案を示しました。需要が大きい時間帯を事前に定め、蓄電事業者が充電制限に同意することで、リアルタイム指令を使わず運用容量以下に抑える仕組みです。
検討項目は、現行の特別高圧中心の対象を高圧へ広げること、充電側だけでなく放電側の扱いも整理すること、事業者の選択制を一律ルールへ変えるか、充電制限時間を四半期ごとの固定設定から季節別などに柔軟化するかです。蓄電事業者へのヒアリングでは柔軟化を歓迎する一方、事業者側の制御システム改修費を懸念する声も出ました。計画値制御が導入された時点では暫定措置を収れんさせる方針を、事務局が確認しました。
資金調達への遡及影響、低圧の過剰規制を警戒
山口順之委員(東京理科大学教授)は、大型蓄電池を小分けにして低圧で多数接続する「規制逃れ」が起きないか質問しました。事務局は、蓄電池同士や太陽光との組み合わせを含む類似案件が議論に上り始めているとして、一般送配電事業者と早急に実態を把握します。
宮川暁世委員(日本政策投資銀行産業調査部長)は、充電制限を一律ルール化すると、既存条件を前提に資金調達した案件の収益前提が事後的に崩れる恐れがあるため、適切な経過措置を求めました。原亮一委員(北海道大学准教授)は、暫定対策の案件も計画値制御の導入後に新方式へ移行することを確認しました。坂本織江委員(上智大学准教授)は、土地同意の追加が有効だとしつつ、系統側の業務増加やシステム変更によって接続回答が遅れないよう求めました。
岩船由美子委員(東京大学教授)は、高い検討料を設定し、契約申込や連系に進んだ案件へ返還するデポジット方式、土地・資金調達の進捗を事業者が報告するマイルストーン管理、季節別の標準的な充電制限パターンを提案しました。低圧案件は資本関係や同一アグリゲーターでグループ化し、一定規模を超えた場合に高圧相当の手続きを求める案も示しました。後藤美香委員(東京科学大学教授)は、検討料を審査のデジタル化・自動化に充て、低圧には規模とリスクに応じた簡素な手続きを設計すべきだと述べました。
児玉智オブザーバー(関西電力ソリューション本部副本部長)は、事業確度の高い案件を阻害せず、放電制限が事業運営へ与える影響を確認するよう要請しました。横関裕正オブザーバー(ENEOS Power VPP事業部長)は、新規規律の前に既存対策の効果検証を行い、低圧対策の優先度を定量データで判断すべきだと指摘しました。園田光寛オブザーバー(送配電網協議会電力技術部長)は、蓄電池が混雑を助長しない運転ルールは系統増強回避に重要だと述べました。
会合では追加対策の方向性に大きな反対はなく、事務局が詳細設計を進めます。ただし、検討料、土地同意、低圧規律、電源種別の扱い、充放電制限、既存案件の経過措置はいずれも継続審議です。蓄電事業者は、土地確保と資金調達を早め、制御条件を収益モデルとプロジェクトファイナンスに織り込む必要があります。EPC・機器メーカーにも、通信・制御機能や運転制約への対応が求められる可能性があります。