政府は、2026年1月16日、2025年度から2030年度までを対象とする「第3次交通政策基本計画」を閣議決定しました。交通政策基本法に基づく政府の基本計画で、人口減少を需要の縮小だけでなく、交通事業の連携、デジタル化、自動化を進める契機と捉え直しています。
策定作業は、2024年4月25日の交通政策審議会・社会資本整備審議会への諮問から始まりました。合同計画部会を7回、持続可能な社会の実現に向けた交通政策検討小委員会を4回開催し、2025年10月31日から11月21日までの意見公募では33の団体・個人から62件の意見が寄せられました。2026年1月8日の答申を経て、同月16日に閣議決定されています。
計画は、A「地域社会を支える、地域課題に適応した交通」、B「成長型経済を支える交通ネットワーク・システム」、C「持続可能で安全・安心な社会を支える強くしなやかな交通基盤」、D「デジタル・新技術を活かした交通サービスの進化」の4方針と11目標で構成されています。
首都圏空港は年間100万回、成田50万回へ
計画は、2030年の訪日外国人旅行者6000万人を見据え、首都圏空港の年間発着容量約100万回を目標に掲げました。成田国際空港ではB滑走路の延伸とC滑走路の新設により年間50万回の早期実現を図り、旅客・貨物施設と鉄道アクセスを強化します。
関西国際空港は新飛行経路の導入により年間30万回、関西3空港全体で50万回の容量確保を目指します。中部国際空港では大規模補修中も運用を継続し、完全24時間運用を可能にする代替滑走路事業を進めます。三大都市圏国際空港の国際線就航都市数は、2025年度の194都市から2030年度に212都市へ増やします。
地方空港の国際線就航都市数も110都市から134都市へ拡大します。ただし、滑走路やターミナルを整備するだけでは路線は定着しません。航空燃料の安定供給、グランドハンドリング、保安検査、二次交通、宿泊・観光需要を一体で整えることが条件です。
操縦士8000人、供給数440人を目標
航空需要の回復・拡大に対し、操縦士、整備士、グランドハンドリング、保安検査員の不足が供給制約になっています。計画は民間養成機関の供給能力を高め、主要航空会社の操縦士を2024年1月の7274人から2030年1月に8000人、年間新規供給数を2022~2023年度平均の400人から2030年度に440人へ増やします。
空港業務では、国、自治体、事業者が人材確保・育成と処遇改善を進め、事業者間で業務資格を相互承認します。特定技能外国人や退職自衛官も活用します。航空会社間では、持続可能な国内航空ネットワークに向けた連携・協働を促し、鉄道など他モードを含む広域交通ネットワークも検討します。
事業者にとっては、保有機材や発着枠があっても地上業務が不足すれば増便できません。投資家は搭乗率だけでなく、空港別の人員充足率、委託費、賃金上昇、燃料供給能力、運航可能時間を見る必要があります。
滑走路安全と航空管制DXを強化
2024年の羽田空港航空機衝突事故を踏まえ、管制交信のヒューマンエラー防止、滑走路誤進入の注意喚起システム、管制体制と滑走路安全の強化を進めます。滑走路上の航空機等の衝突事故は、2024年の1件から2025年以降毎年0件を目標とします。
航空管制システムを高度化し、気象や滑走路運用情報を空港関係者へリアルタイム共有して、定時性向上と災害後の早期再開を図ります。地方管理空港が被災した場合には、国が復旧工事やエプロン利用調整を代行できる制度も運用します。安全・防災投資はコストである一方、欠航・遅延を減らし、空港と航空会社の稼働率を支える基盤です。
SAFは燃料調達と価格転嫁が焦点
脱炭素では、持続可能な航空燃料(SAF)の導入、航空路・出発・到着を含む運航最適化、環境性能の高い機材・装備品、空港施設・車両の省エネ化、空港の再エネ拠点化を進めます。単位輸送量当たりCO2排出量は、2023年度の1.2411kg-CO2/トンキロから2030年度に1.1693へ低減します。
事業者・投資家にとっては、空港拡張、旅客・貨物施設、航空管制、地上支援機材、再エネ設備、SAF製造・貯蔵・供給に投資機会があります。一方、航空は燃料費と機材費の影響が大きく、SAFの調達価格、供給契約、運賃・貨物料金への転嫁、国際的なCORSIAとの整合が採算を左右します。
発着容量や就航都市数のKPIは需要を保証するものではありません。路線別需要、空港使用料、発着枠、地上人員、燃料、アクセス交通を一体で確認する必要があります。第3次計画は、空港整備と人材、デジタル、安全、脱炭素を束ね、航空ネットワークの供給能力そのものを引き上げる方向を示しています。