【海運政策】船員生産性1万9210円へ、ゼロエミッション船・港湾DXを加速 第3次交通政策基本計画

政府は、2026年1月16日、2025年度から2030年度までを対象とする「第3次交通政策基本計画」を閣議決定しました。交通政策基本法に基づく政府の基本計画で、人口減少を需要の縮小だけでなく、交通事業の連携、デジタル化、自動化を進める契機と捉え直しています。

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策定作業は、2024年4月25日の交通政策審議会・社会資本整備審議会への諮問から始まりました。合同計画部会を7回、持続可能な社会の実現に向けた交通政策検討小委員会を4回開催し、2025年10月31日から11月21日までの意見公募では33の団体・個人から62件の意見が寄せられました。2026年1月8日の答申を経て、同月16日に閣議決定されています。

計画は、A「地域社会を支える、地域課題に適応した交通」、B「成長型経済を支える交通ネットワーク・システム」、C「持続可能で安全・安心な社会を支える強くしなやかな交通基盤」、D「デジタル・新技術を活かした交通サービスの進化」の4方針と11目標で構成されています。

内航海運は適正運賃と船員生産性を重視

内航海運では、船員不足、船舶の老朽化、燃料費・建造費の上昇が安定輸送を圧迫しています。計画は、内航海運業界と荷主業界の対話を進め、適正な運賃・用船料を収受できる取引環境を整えるとともに、デジタル技術による省力化、運航・経営の効率化、業務標準化を推進します。

船員1人・1時間当たりの付加価値は、2022年の1万6600円から2030年度に1万9210円へ高めます。船員養成機関のルートを社会人の転職者にも広げ、海技人材の確保を強化します。離島航路や地方の交通を支える老朽船については、内航海運のグリーン化に資する船舶や離島航路の維持・活性化に必要な代替建造を支援します。

物流面では、内航フェリー・RORO船の大型化に対応したターミナルを整備し、国内の海上貨物輸送コストを2023年度比で2030年度までに2%低減する目標です。トラックから海運へのモーダルシフトは、船会社だけでなく、荷主、港湾運送、倉庫、陸上輸送を含む一体的な輸送設計が前提になります。

外航海運と造船を経済安全保障の基盤へ

計画は、海運業と造船・舶用工業を「海事産業群」と位置付け、経済安全保障の観点から強化します。国際物流の途絶に備え、既存航路を代替・補完するBCPルートの実態調査と実証輸送を行い、平時にも利用できる複線的な国際物流網を整備します。

日本法人が実質保有する船舶の世界船腹量シェアは、2024年の10.38%から2028年も10%を維持する目標です。造船能力の抜本的な向上、船舶サプライチェーンの強靱化、国内造船需要の促進を進めます。海運会社の発注と国内造船所・舶用メーカーの供給を循環させる政策であり、船価、建造枠、機器の国産調達率が投資判断の焦点になります。

サイバーポートと次世代燃料に大型投資

港湾DXでは、サイバーポートの港湾物流分野へ接続可能な法人を2024年度の928社から2030年度までに5500社、港湾管理分野を利用する港湾管理者を54者から131者へ増やします。「ヒトを支援するAIターミナル」の導入も4ターミナルから15ターミナルへ拡大し、遠隔操作RTGやゲート高度化による生産性向上を図ります。

脱炭素では、大型アンモニア燃料船の2026年実証運航開始と2028年までの早期商業運航、水素燃料船の2027年実証運航開始と2030年以降早期の商業運航を目指します。水素・アンモニアの受入設備、バンカリング、陸上電力供給を含むカーボンニュートラルポートを整備し、港湾脱炭素化推進計画を作成済みの港湾を44港から100港へ増やします。

投資家は運賃転嫁と燃料インフラを確認

事業者・投資家にとっては、環境対応船、造船設備、舶用機器、港湾荷役自動化、サイバーポート、次世代燃料供給設備に継続的な需要が生じます。一方、船舶は投資額が大きく、回収期間も長いため、荷主との長期契約、運賃・用船料への転嫁、燃料の価格と供給量、公的支援、残存価値を個別に確認する必要があります。

特にアンモニア・水素船は、船体だけでは事業化できず、寄港地の燃料供給網と安全基準がそろって初めて稼働率を確保できます。計画のKPIは市場拡大の方向を示しますが、収益を保証するものではありません。内航の取引適正化、外航の経済安全保障、造船再生、港湾DX、脱炭素を一つの投資連鎖として実装できるかが海事産業の競争力を左右します。

出典

国土交通省「第3次交通政策基本計画」

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