トヨタ・ホンダ・日産四半期業績は概ね好調。テスラ・BYDとのEV世界競争の今後の行方を読む

トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車の2026年度第1四半期決算が出そろいました。円安やコスト削減を追い風に、ホンダは大幅増益、日産は黒字転換を達成しました。

一方、トヨタは最終利益こそ増えたものの営業減益です。米国の関税政策やEV戦略の見直しも重く、日本勢が全面回復したとは言い切れません。

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自動車業界への長期的な投資目線は、足元で需要が強いハイブリッド車(HV)から得る収益を引き続き確保しながら、電池、EV、ソフトウェアへどう拡張していけるかです。

BYDなどの中国勢が、タイをはじめとする新興国市場に加え、日本の軽自動車市場にも攻め込むなかで、競争が本格化する局面を迎えています。

トヨタ、HVが利益と投資余力を支える

トヨタの売上収益は前年同期比10.4%増の13兆5254億円、営業利益は8.8%減の1兆634億円、最終利益は75.6%増の1兆4770億円でした。通期営業利益は9.7%減の3兆4000億円を見込みます。

4~6月の電動車販売141万台のうち、HVが123.8万台、BEVは11.4万台でした。BEV販売も増えていますが、現在の収益基盤は圧倒的にHVです。

地域ごとにHV、PHEV、BEV、燃料電池を使い分けるマルチパスウェイ」は、EV移行が一様に進まない局面では合理性を持ちます。トヨタ決算資料

ホンダ、EV損失の反動で大幅増益

ホンダは売上収益が13.5%増の6兆615億円、営業利益は2.2倍の5308億円、最終利益は2.3倍の4509億円でした。前年同期に計上したEV関連損失の反動に加え、円安や四輪事業の改善、二輪・金融の利益が支えましたホンダ決算資料

ただし、2027年3月期にもEV戦略見直しに伴う損失5200億円を見込みます

ホンダは2030年3月期までに次世代HV15車種を投入し、EV一辺倒から需要に応じた配分へ転換しました。EV投資の失敗を処理しながら、HVで再び稼ぐ構造を作れるかが焦点です。ホンダ事業方針

日産、黒字化も再建はこれから

日産は売上高が9.5%増の2兆9642億円、営業利益は前年同期の791億円の赤字から779億円の黒字へ、最終利益も38億円の黒字へ転換しました。「Re:Nissan」による600億円のコスト改善が寄与しました。日産決算発表

ただし、世界販売台数は70.1万台と微減です。通期販売計画も330万台から315万台へ引き下げました。EVの先行技術を持ちながら、商品投入と収益化で出遅れた日産にとって、北米で投入するe-POWERがEVとガソリン車の間を埋める再成長の試金石になります。

テスラ・BYDも必ずしも順風ではない

テスラの2026年4~6月期は売上高282億ドル、納車48万台と増加した一方、営業利益は57%減の4億ドル、営業利益率は1.4%まで低下しました。

AI、ロボタクシー、電池への投資が膨らみ、フリーキャッシュフローは11億ドルの赤字です。株価は自動車利益より、ソフトウェアと自動運転の将来価値を強く織り込んでいます。テスラ決算資料

BYDも2026年1~3月期の売上高が11.8%減の1502億元、最終利益が55.4%減の40.8億元でした。

中国国内の価格競争は、成長企業にも利益率低下を迫っています

ただし、電池からBEV、PHEV、定置用蓄電池まで内製する垂直統合と開発速度は依然として盤石ですBYD第1四半期報告書

BYD軽EV、日本市場へ「199万円」の衝撃

BYDは7月、日本専用設計の軽EV「RACCO」を214万5000円から発売しました。補助金適用後は199万5000円となり、日本勢がほぼ独占してきた軽自動車市場へ低価格で切り込みます。BYDの発表

こうした安値攻勢は国を挙げての「ダンピング」とも映ります。ダンピングの定義にもよりますが制度上は、輸出価格が輸出国の正常価格を下回り、国内産業に損害を与えているかなどの認定が必要です。経済産業省の説明

欧州委員会は中国製BEVのバリューチェーンに不公正な補助があると認定しています。巨大な生産能力、政策金融、電池内製を背景に、車載・定置用蓄電池とEVを一体で輸出する中国官民勢に、日本がどう対抗するかは経済安全保障上の課題でもあります。

タイで顕在化した日本車の弱点

こうした中国の官民挙げての安値攻勢が奏功し、タイでは中国ブランドがEV販売の7割超を占め、日本勢が長年築いた販売・生産基盤を切り崩しています

IEAによれば、2025年には欧米以外で販売されたEVの55%を中国からの輸入車が占めましたIEA「Global EV Outlook 2026」

価格に敏感で、長期のブランド実績より装備、デザイン、デジタル機能を重視する市場では、中国勢の短い開発周期が強みになります。

日本勢は補助金や関税だけでなく、電池原価、ソフトウェア、商品投入速度そのものの改善などが課題となり得ます。

長期目線では、日本勢は引き続き強い

当社は、将来の自動車市場がEV一色になるわけではなく、一定のシェアを獲得した後、EVと非EVがバランシングすると予測しています。

例えば、都市部、短距離、充電環境が整い、数年で買い替える用途では、構造が単純でソフトを更新しやすいEVが優位です。モジュールを組み替え、短期間で改善する「軽薄短小・ベストエフォート型」では米中勢のデジタル力が生きます。ここでいうベストエフォートは、安全要件を緩めるという意味ではありません。

一方、長距離、寒冷・高温地域、牽引、商用車、電力網の弱い新興国、10年以上使用する市場では、HV、PHEV、ガソリン車が残る可能性が相当高いとみています。

熱、振動、耐久性、安全、整備性を総合的に作り込む「アナログ・すり合わせ」は日本勢の強みです。水素輸送設備や大型商用車のように、一度の故障が大きな社会的損失につながる領域でも同じ構図が考えられます。ただし、EVにも高度な熱管理と安全設計が必要であり、アナログ技術だけでデジタル化の遅れを補えるわけではありません。

まとめ

短期投資目線ではHVの販売台数と利益で圧倒的な優位性を確保しているトヨタが最も安定し、ホンダは戦略再構築、日産は再建の成否が焦点となるでしょう。

一方、長期投資目線では、EVセグメントでのシェア確保、AIも組み込んだソフト開発が遅れれば、日本勢は都市部と新興国でさらにシェアを失うリスクがあります。

一方で市場が用途別にセグメントすれば、「アナログすり合わせ技術の再評価」とともに多様な動力源を持つ日本勢の評価は変わり得ます。

ただし、市場はこのようなポジティブシナリオを十分に織り込んでいるとはいえず、日本3社の株価がテスラのような成長株評価を得ていません。目先ではEV転換費用と将来像の不確実性を重視していると思われます。

出典

トヨタ自動車「2026年度第1四半期決算資料」

本田技研工業「2026年度第1四半期決算資料」

本田技研工業「2026年度事業方針」

日産自動車「2026年度第1四半期決算発表」

Tesla「2026年第2四半期決算資料」

BYD「2026年第1四半期報告書」

BYD「軽EV RACCO発表」

経済産業省「不当廉売関税に関するFAQ」

IEA「Global EV Outlook 2026」

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