INPEX、上期最終益18%増。化石収益を元手に日本成長戦略「新アナログ・重工」領域を拡張

INPEXが8月7日に発表した2026年12月期中間決算は、売上収益が前年同期比4.6%減の1兆4億円、営業利益が0.3%増の6187億円、親会社の所有者に帰属する中間利益が17.7%増の2631億円でした。通期最終利益予想は5100億円へ引き上げています。

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原油数量減をイクシスと円安が吸収

原油販売量は22.8%減の5517万バレルとなり、原油売上収益も10.9%減の6949億円でした。一方、海外原油の平均単価は1バレル79.51ドルと8.2%上昇し、平均為替も1ドル158円台へ円安が進みました。天然ガス売上収益は8.2%増の2719億円です。豪州イクシスLNGの利益貢献は1390億円から1730億円へ増え、法人税負担の減少も最終増益を支えました。

通期は売上収益1兆9730億円、営業利益1兆2230億円、最終利益5100億円を見込みます。年間配当予想は112円、自己株式取得は1400億円です。もっとも、利益は原油・LNG価格、為替、イクシスの稼働率に大きく左右されます。決算説明会資料

地下を掘る技術をCCSと水素へ

INPEXは資源会社の外へ一気に領域を広げています。ADNOCとはルワイスLNGの長期調達契約を締結し、供給・販売機能を強化。千葉県九十九里沖ではCCSの試掘を開始し、新潟県柏崎では国産天然ガスからブルー水素を製造、発電した電力を公共施設などへ供給しています。

大阪ガスとは世界最大級のe-メタン試験設備を動かし栃木県では1.9MW/5.4MWhの系統用蓄電所を開発水力発電などにも進出しています。共通するのは、油ガス田で蓄積した地下評価、掘削、ガス処理、パイプライン、巨大設備の運転技術を横展開する発想です。

下流の電力と再エネを取り込みサプライチェーンを総取り

さらにINPEXは、下流の電力小売りまで取り込み、資源開発から需要家への販売までサプライチェーンの「総取り」を狙います

INPEX JAPANはミツウロコグリーンエネルギーと、INPEX側51%、ミツウロコ側49%の合弁会社を設立し、小売電気事業者として需要家への直接販売、都市ガス会社への卸供給、需給管理、市場取引を展開する計画です。将来は太陽光発電所や蓄電池などの電源開発も共同で進めます。電力分野における協業の基本合意 天然ガス・LNGという化石側の供給力を盤石にしながら、再エネ、蓄電池、非化石価値を組み合わせた脱炭素ポートフォリオを構築する戦略です。

燃料・発電ではJERA、小売りや顧客基盤では東京電力・中部電力グループと競合領域が重なります。石油、電力、都市ガスの大手が相互の領域へ進出し、再エネ・脱炭素市場で異業種競争が本格化する兆しといえます。

政策マネーが呼び込む異業種競争

こうしたINPEXの多角化の背景には、高市内閣が2026年7月にまとめた「日本成長戦略」があります。17の戦略分野、62の製品・技術に投資を集中し、「資源・エネルギー安全保障・GX」を成長分野に位置付けました。経済産業省もGX経済移行債による20兆円規模の先行支援を呼び水に、今後10年で150兆円超の官民GX投資を狙います。経済産業省のGX政策

この政策市場には、ENEOSなどの石油勢、JERAや電力大手、大阪ガス・東京ガスなどの都市ガス勢が入り、CCS、水素・アンモニア、e-メタン、蓄電池で技術開発から実証、商用化まで競っています

AIや半導体がデジタルの成長産業なら、地下を掘り、気体を圧縮・輸送し、化学反応を制御する領域は「新アナログ・重工」と呼べます。日本企業は欧米だけでなく、設備量産と政策支援で攻勢を強める中国・韓国とも競うことになります。

成長投資はまだ石油・LNGが中心

ただし、多角化は当然コアコンピテンスの希薄化と裏表の関係にあり、相応のリスクもあります。

しかし、2026年の成長投資6760億円のうち、石油・天然ガスが6660億円を占め、CCS・水素は10億円、再エネ・電力は90億円にとどまります

新分野はまだ実証段階が多く、採算は炭素価格、補助制度、需要家確保、建設費、技術成熟度に左右されます。

投資家が見るべきは、資源高と円安で得た巨額キャッシュを、単発の実証ではなく継続収益へ変えられるかです。

INPEXは「石油会社から脱却する会社」というより、石油・LNGの稼ぐ力を維持しながら、発電、需給管理、小売りまでを担う総合エネルギー事業者へ進めるかを試されている段階です。

成長余地は大きい一方、大型投資の回収長期化、政策依存、既存大手との競争激化というリスクも見据える必要があります。

出典

INPEX「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」

INPEX「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算説明会資料」

INPEX「ミツウロコグリーンエネルギーとの電力事業協業」

内閣官房「日本成長戦略」

経済産業省「GX政策」

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