日本郵船、商船三井、川崎汽船は、2026年8月4〜7日、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)決算を発表しました。ホルムズ海峡の封鎖に伴う輸送ルートの長距離化、原油・LPGなどの代替調達、円安が業績を押し上げ、3社は通期最終利益予想をそろって上方修正しました。
業績としては、日本郵船の売上高が前年同期比21.1%増の7276億円、最終利益が33.5%増の671億円となり、通期最終利益予想を2400億円へ引き上げました。
商船三井は売上高7309億円、最終利益610億円を計上し、通期最終利益予想を2400億円としました。
川崎汽船は売上高が17.1%増の2868億円、最終利益は21.9%減の233億円でしたが、通期予想を1350億円へ上方修正しました。
3社に共通するのは、北米などからのエネルギー調達が増え、輸送距離を示す「トンマイル」が拡大したことです。
ただし、中東情勢はタンカーやドライバルクには追い風となる一方、自動車船やコンテナ船では航路変更、燃料費上昇、船腹稼働率低下を招いており、船種によって影響は大きく異なります。
以下、会社別に深堀します。
日本郵船、タンカー・ドライバルクが利益を押し上げ
日本郵船の営業利益は前年同期比69.8%増の577億円、経常利益は27.3%増の712億円でした。第1四半期の平均為替は1ドル=159.89円と前年同期より14.57円の円安となり、経常利益を約77億円押し上げました。
エネルギー事業の経常利益は前年同期比118億円増の239億円でした。中東産原油やLPGの出荷減少を受けて北米産貨物への切り替えが進み、VLCCやVLGCの輸送距離が伸びたことで船腹需給が逼迫しました。ドライバルク事業も194億円と、前年同期の27億円の赤字から大幅に改善しました。
一方、自動車事業の経常利益は120億円減の168億円でした。輸送台数はおおむね前年並みでしたが、航路変更、燃料費上昇、港湾混雑が採算を圧迫しました。通期予想は売上高2兆8810億円、営業利益1850億円、経常利益2500億円、最終利益2400億円です。最終利益は従来予想から450億円引き上げ、前期比13.3%増を見込みます。
商船三井、長距離輸送が追い風も製品輸送は減益
商船三井の営業利益は385億円、経常利益は521億円、最終利益は610億円でした。同社はドライバルク、原油・LNG輸送、ケミカル物流、コンテナ船、自動車船に加え、ダイビルを中核とする不動産やクルーズも手掛けています。
ドライバルク事業は鉄鉱石やボーキサイトの堅調な荷動きに支えられ、経常利益が前年同期比141億円改善して107億円となりました。原油船やLPG船でも、米国などからの代替調達によるトンマイルの増加が市況を押し上げました。
一方、製品輸送事業の経常利益は237億円減の70億円でした。ペルシャ湾向け自動車船の配船停止や燃料費増加に加え、持分法適用会社OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)の減益が響きました。通期予想は売上高2兆2300億円、営業利益1350億円、経常利益2250億円、最終利益2400億円です。最終利益は従来予想を700億円上回り、前期比12.5%増を見込みます。
ただし、第1四半期には連結子会社の決算期統一に伴い、一部子会社の6カ月分の損益が含まれています。このため、前年同期との単純比較には注意が必要です。
川崎汽船、最終減益でもドライバルクとONEが下支え
川崎汽船の営業利益は前年同期比1.3%減の195億円、経常利益は10.9%増の240億円、最終利益は21.9%減の233億円でした。最終減益には、前年同期に計上した特別利益の反動も影響しました。
ドライバルク事業は鉄鉱石、ボーキサイト、石炭、穀物の荷動きと市況上昇を受け、経常利益が前年同期比93億円改善して90億円となりました。エネルギー資源事業もLPG船・タンカー市況の上昇により32億円を確保しました。
一方、製品物流事業の経常利益は134億円減の108億円でした。自動車船では中東情勢による船腹稼働率の低下や燃料費増加が響き、ONEも短期運賃の上昇をコスト増が相殺しました。通期予想は売上高1兆700億円、営業利益850億円、経常利益1350億円、最終利益1350億円です。最終利益は従来予想から400億円引き上げました。
液化水素は3社共同、アンモニアでは戦略に違い
足元の業績を支えるのは既存の原油、LNG、LPG、鉄鉱石、自動車、コンテナ輸送ですが、3社は次世代の成長領域として水素・アンモニアの国際輸送とサプライチェーン構築を進めています。
液化水素については、3社が2023年にJSE Oceanへ資本参加しました。日本水素エネルギーが50.2%、海運3社が各16.6%を保有し、安全運航、荷役、船舶管理、採算性などを共同で検討しています。現在具体化しているのは4万立方メートル型液化水素運搬船です。川崎市扇島の「川崎LH2ターミナル」と組み合わせ、2030年度までに外洋輸送と荷役の実証を行う計画です。
液化水素では3社が共同で基盤をつくる構図ですが、アンモニアでは各社の特色が表れています。
日本郵船、アンモニアを運びながら燃料として使用
日本郵船の特徴は、貨物としてアンモニアを運ぶだけでなく、そのアンモニアを船自身の燃料にも使う点です。4万立方メートル型のアンモニア燃料アンモニア輸送船「AFMGC」を建造しており、2026年11月の竣工を予定しています。
主機のアンモニア混焼率は最大95%、補機は80%以上とし、船全体で80%以上の温室効果ガス削減を目標に掲げています。完成後はYara Clean Ammoniaに定期傭船される計画です。
さらにJERAとは、約8万7000立方メートル型の大型アンモニア輸送船2隻の定期傭船契約を締結しました。米ルイジアナ州で製造する低炭素アンモニアを、2029年度からJERA碧南火力発電所へ輸送します。横浜港ではアンモニア燃料タグボート「魁」を商業運航しており、輸送船、燃料供給船、販売、需要船を結ぶ市場形成を目指しています。
商船三井、海外製造から国内配送までを一体化
商船三井もJERAと約8万7000立方メートル型VLGC2隻の長期契約を締結しています。米ルイジアナ州の「Blue Point」で製造される低炭素アンモニアを、2029年ごろから碧南火力発電所へ輸送する計画です。
同社の特徴は、製造・貯蔵・外航輸送・内航輸送を一つの物流網として組み立てようとしていることです。インド・オディシャ州では、2030年までに年間約40万トンのグリーンアンモニア製造設備を整備する計画に参画し、インドから日本の一次基地、さらに国内二次基地への輸送を検討しています。
福島県相馬地区では海外アンモニアの輸入・貯蔵・広域供給拠点を調査しています。欧米7カ所、総容量約300万立方メートルのタンク設備を持つLBC Tank Terminalsも買収しており、「海外生産―海上輸送―港湾貯蔵―国内配送」を担う総合物流事業者への転換を進めています。
川崎汽船、ガス船の運航実績と安全管理を生かす
川崎汽船は2007年以降、アンモニア運搬船の保有・運航に携わり、貨物管理や荷役の実績を蓄積しています。2023年には、貨物タンク容量8万6919立方メートルの「AXIS RIVER」が竣工しました。同船はLPGと重油で航行しますが、LPGだけでなくアンモニアも積載できます。
同社は伊藤忠商事、日本シップヤード、三井E&S、NSユナイテッド海運などと、アンモニア燃料機関を搭載する載貨重量20万トン級大型ばら積み船を開発しています。川崎汽船は船員教育、船舶管理体制、実運航データの収集を担当します。
シンガポールでは、日本郵船、住友商事とアンモニア燃料供給船の基本設計や保有形態を検討しています。川崎汽船の強みは、新燃料を安全に取り扱うための運航管理、船員育成、船から船へ燃料を供給するSTS方式の作業手順を事業化につなげる点にあります。
海運3社の次の競争軸は「船」から「供給網」へ
アンモニアは常圧で約マイナス33度、液化水素は約マイナス253度での管理が必要です。既存LPG船の設計や港湾設備を応用しやすいアンモニアが先行していますが、燃焼時のNOx、未燃アンモニア、N₂Oへの対策や、製造時のCO₂回収率、上流工程のメタン排出量を含む環境価値の検証が欠かせません。
現時点では、日本郵船が「アンモニア燃料船と供給市場の先行実装」、商船三井が「生産・輸送・貯蔵を結ぶ大規模物流」、川崎汽船が「ガス船運航、安全管理、燃料供給インフラ」に強みを持ちます。中東情勢と円安による利益拡大を一過性の市況効果で終わらせず、次世代燃料の長期契約や物流網へ投資できるかが、3社の中長期的な競争力を左右しそうです。
出典
【ご注意】本記事の作成には生成AIを利用しており、公開情報および記事中に示した情報源を基に編集しています。生成AIの特性上、事実と異なる情報や不正確な記述が含まれる可能性があり、内容の正確性、完全性および最新性を保証するものではありません。重要な情報については、記事中のリンクから企業・官公庁等が公表する一次情報を必ずご確認ください。また、本記事は特定の金融商品、銘柄または投資行動を推奨・勧誘するものではありません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。